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2020年7月

左心耳の世界

解剖・形態 左心耳(LAA: left atrial appendage)は1909年に同部位に血栓ができることで脳梗塞になることが指摘されてから脚光(?)を浴びるようになった解剖構造です。左心房と比較して左心耳は非常にcomplianceが高いため、圧が上昇した際のリザーバーとしての機能・役割があるのではないかと指摘されていますが、脳梗塞領域においては非常にやっかいな構造物です・・・。 左心耳は […]

脂質異常症 薬剤治療適応

ここでは脂質異常症に対しての介入方法をまとめます。海外のガイドラインは日に日にややこしさを増していて、また日本との相違点もあるため解釈が難しいところもあるので、細かいことにとらわれすぎず大枠をとらえることが重要と思い解説します。 薬剤治療の適応は? 脂質異常症の薬剤治療は「スタチン」が鍵の薬剤になります。スタチンの治療で理解しておくべき重要な点は背景の心血管合併リスクによりスタチンによる心血管合併 […]

AG開大性代謝性アシドーシス

血液ガスではたとえ一見酸塩基平衡がなさそうに見えても、必ずアニオンギャップ(以下AG)を計算する必要があります。そして、AGが開大していれば必ずAG開大性代謝性アシドーシスが存在します(physiological approachのStep4に該当します。血液ガスの詳しい解析法はこちらをご覧ください)。 AG開大性代謝性アシドーシスの原因は大きく4つでケトン・乳酸・中毒・CKDです。これは「暗記」 […]

急性大動脈解離をどう除外できるか?

大動脈解離ほど非典型例な症状で受診し、初診時に診断が難しい疾患はないと思います(誤診率は14~39%)。これも学生の時は簡単に診断できると思っていたけれどそうではない疾患の代表です(くも膜下出血やACSと同様)。かといって全員造影CTを撮影する訳にはいかないので、造影CT前にどこまで急性大動脈解離を除外できるか?どういうときに造影CTへ行くべきか?の判断が重要になります。以下のADD-RSとD-d […]

幻視 visual hallucinations

1:幻覚と錯覚の違い 幻覚(hallucination)は実在しないものを認知してしまう現象で、どの知覚で認知するかによって「幻視:視覚で認知」(Visual hallucination)、「幻聴:聴覚で認知」(Auditory hallucination)、「幻臭:嗅覚で認知」(Olfactory hallucination)、「幻触:触覚で認知」(Tactile hallucination)と […]

抗mGluR1抗体陽性小脳失調症

代謝型グルタミン酸受容体(mGluR1)は小脳プルキンエ細胞に発現しており運動学習において重要な役割を担っています。抗mGluR1抗体は細胞膜表現抗原に対する抗体で、患者の血清をpassive tranferが成立することが示されているためこれが直接の病原性を持つと考えられています。元々腫瘍が背景にある患者から発見されており(NEJM 2000;342:21 ホジキンリンパ腫患者2例での報告)、傍 […]

Young-Onset Multiple System Atrophy

多系統萎縮症(MSA: multiple system atrophy)は通常50~60歳代に発症することが多いですが、40歳未満の発症を”young-onset MSA”(YOMSA)と表現します。MSA全体でYOMSAが占める割合は0.9~4.1%,4.5%と報告されています(J Neurol Sci 2012;319:168,Mov Disord 2018;33:19 […]

グルテン失調症 Gluten Ataxia

GRD(グルテン関連疾患:gluten related disorders)は小麦などに含まれるグルテンを摂取することをトリガーとして様々な症状を引き起こす疾患の総称で、腸管症状だけでなく腸管外症状を呈する場合もあります。自己免疫性疾患としてはセリアック病、グルテン失調症、疱疹状皮膚炎があり、それぞれ自己抗体はセリアック病はTG2(transglutaminase)、グルテン失調症はTG6、疱疹状 […]

腎梗塞 renal infarction

昨年度勤めていた病院の研修医の先生方から腎梗塞の症例をシェアしていただきました。私自身は1例しか経験がなく、それも自分で腎梗塞をねらって診断したわけではなく造影CT検査で偶発的に指摘され診断にいたった症例でした・・・。有名な疾患ですが、尿管結石、腎盂腎炎と誤診される場合も多いです。勉強した内容をここでまとめさせていただきます。 1:原因 原因を1:心原性、2:腎血管性、3:凝固障害、4:特発性と4 […]

脳梗塞急性期での血糖管理

ここでは脳梗塞急性期での血糖管理をどの程度するべきなのか?に関してその背景となった研究などをまとめます。ガイドラインでは脳梗塞急性期での血糖管理は140~180mg/dLを目標とするようになっています。結論から申しあげると下記の通りです。 脳梗塞急性期の高血糖は予後不良因子 脳梗塞急性期の高血糖が予後不良因子であることはかつてから指摘されていました。(以下NEUROLOGY 2002;59:67– […]