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2020年7月

人獣共通感染症による髄膜炎

髄膜炎の鑑別で話題に挙がったテーマでありまとめます。以下はすべてNeurology® 2016;87:1171–1179によるものです(おそらく最も人獣共通感染症の髄膜炎をまとめたreview)。図・Figure/Tableが素晴らしいため、ほぼ張り付けただけで申し訳ございません。 細菌性髄膜炎のうち人獣共通感染を起こす菌が原因となることは1%未満、Streptococcus suisとLepto […]

結核性髄膜炎 tuberculous meningitis

病態 結核性髄膜炎は全結核の約1%を占め、全年齢に起こりますが特に小児やHIV未治療の患者さんに多いとされています。結核性髄膜炎ではCSF内の菌量は100~1000コロニー/mLを超えることはまれで、菌量ではなく宿主の免疫反応が組織障害の程度を規定するとされています。 結核性髄膜炎がどのように引き起こされるか?その機序はいまだ完全には解明されていません。結核菌は血液からBBBを超えて、ミクログリア […]

脊椎硬膜外膿瘍 SEA: spinal epidural abscess

病態 硬膜外脂肪識へ細菌感染をきたす病態です。以下に簡単に脊椎領域の硬膜外腔の解剖を示します。 部位 血行性に膿瘍を形成する場合、膿瘍部位は硬膜外の後方が多いとされています。理由は後方の方が前方と比べて”infection prone fat”(つまり感染する脂肪が多い)とされ、胸腰髄領域が硬膜外腔が広く、静脈叢が低圧であることから感染をきたしやすいとされています。化膿性脊 […]

Flail arm syndrome

Flail arm syndromeは様々な表現をされますが(たるに人が閉じ込められた様にみえることからman-in-the-barrrel syndromeという表現など)、運動ニューロン疾患の亜型として有名な症候群です。上肢の近位筋優位・左右対称性に進行性の筋力低下・筋萎縮をきたし、下肢筋力低下や球症状をほとんど伴わないことが特徴とされています(錐体路徴候も認めない場合が多いです。以下の写真は […]

IVL intravascular lymphoma 血管内リンパ腫

病態 血管内リンパ腫はほとんどが腫瘍細胞がB細胞起源です。毛細血管内腔にリンパ腫細胞が浸潤、増殖し、大血管を侵襲することは通常ありません。血管外の腫瘤形成や末梢血でのリンパ腫細胞が検出されないため非常に診断が難しいことが特徴です。毛細血管を閉塞することで臓器虚血を引き起こし、障害される臓器としては中枢神経と皮膚が代表ですがどの臓器も浸潤しうるとされています。中枢神経に病変を呈する場合が多いため血液 […]

LEMS Lambert-Eaton筋無力症候群

病態 VGCC P/Q-type 抗体(電位依存性カルシウムチャネル)が関与しており、傍腫瘍性の自己免疫疾患とされています(必ずしも腫瘍を合併しない場合もあります)。神経終末のVGCCに対する抗体によってdown regulationし、Caイオンが流入せず、神経終末からのAch放出が低下→筋無力症状が出現します。(下図Ann. N.Y. Acad. Sci. ISSN 0077-8923より参照 […]

NSAIDsによる無菌性髄膜炎

教科書で無菌性髄膜炎と調べると必ず、薬剤性:NSAIDsと記載があります。認知はされているけれど、「NSAIDs髄膜炎の特徴は何か?」と質問されると答えに窮するため調べた内容をまとめます。 以下の内容はイブプロフェンによる無菌性髄膜炎36人の71エピソードをまとめたもので、Medicine 2006;85:214より参照しました。NSAIDs髄膜炎の報告はそのほとんどが、イブプロフェンによるもので […]

入院患者のDVT予防

入院患者さんのDVT予防に関してまとめます。 薬剤による予防 抗凝固薬の未分画ヘパリン、低分子ヘパリン、もしくはフォンダパリヌクスによる予防が用いられます。 未分画ヘパリンを1日2回 or 3回投与 or 低分子ヘパリンで予防効果、出血合併症の頻度を比べたmeta-analysisでは、いずれにおいてもDVT予防、PE予防、死亡、出血合併症に関して有意差は検出されませんでした(Chest  […]

スタチン Statin

脂質異常症の治療薬として確固たる地位を築いたスタチンに関してまとめます。ここではスタチンの薬理作用、特徴に関してまとめるため、脂質異常症での薬剤治療適応に関してはこちらをご参照ください。 作用機序 HMG-CoA還元酵素を阻害することで体内でのコレステロール合成を抑制することが作用機序になります。 強度 スタチンがどの程度LDL濃度を低下させるか?をスタチンの「強度」と表現します。強度はスタンダー […]

多発脳神経麻痺

多発脳神経麻痺は神経内科医にとって重要なテーマでコンサルテーションでも多いものです。ここで調べた内容をまとめます。 原因 色を付けさせていただいたのは個人的に大事と思っている疾患のまとめです。腫瘍、癌性髄膜炎、腫瘍の頭蓋底転移が原因といて非常に多く、また脳幹部の脳血管障害や感染症もそれに次いで多い印象が個人的にはあります。 実際の疫学としては、Keane先生がご自身の経験された多発脳神経麻痺979 […]