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脊髄疾患

椎骨動脈と脊髄梗塞

先日椎骨動脈閉塞からの脊髄梗塞の症例を経験しました。左椎骨動脈閉塞があり、左小脳梗塞+椎体高位C3からの脊髄灰白質に両側性T2強調像高信号病変を呈している症例でした。脊髄梗塞の全体像に関してはこちらにまとめているためご参照ください。 背景知識 ・脊髄梗塞の最も好発部位は胸髄領域・脊髄梗塞の原因の4-10%は椎骨動脈解離と報告されている(最も多い原因は大動脈手術)・脊髄の血管支配:①中心部(灰白質) […]

spinal dural AVF 脊髄硬膜動静脈瘻

spinal dural AVFの症例をとっても久しぶりに経験しました。非常に稀ですが誤診されやすく、見逃してはならない治療可能な脊髄疾患として重要です(神経内科医、整形外科医、Generalist全てにおいて)。調べた内容をまとめます。 病態・解剖 ・硬膜内の動脈(radiculomeningeal artery)と静脈の短絡による静脈圧上昇→動静脈圧の圧格差が減る→正常静脈のドレナージが減少し […]

転移性脊髄圧迫 metastatic spinal cord compression

腫瘍が椎体転移し硬膜外から脊髄を圧迫する病態で、神経救急の病態として非常に重要です。 背景知識 担癌患者の約5%に認めると報告されています(Neurology 1959;9:91-106.)。・原因腫瘍:前立腺癌・乳癌・肺癌(それぞれ15-20%を占める)>非ホジキンリンパ腫・腎細胞癌・多発性骨髄腫(それぞれ5-10%を占める)・腫瘍の初期症状となる場合が約20%ある:特に肺癌の場合は約30%が同 […]

脊髄くも膜下出血 spinal subarachnoid hemorrhage

脊髄くも膜下出血は全くも膜下出血のうち1%未満と非常にまれな病態ですが、今まさに悩んでいます。血性髄液で頭蓋内クモ膜下出血がどうしても見つけられない場合(動脈瘤含めて)、鑑別に挙がる病態かと思います。 臨床像・原因 突然発症の背部痛が最も多いです。また通常CSFは流れているため血液を洗い流す”wash out”ため生理的に血腫(凝血塊)が形成されにくく、血液がくも膜下腔を通 […]

後脊髄動脈梗塞

脊髄梗塞の中でも後脊髄動脈(PSA: posterior spinal artery)領域の梗塞は「かなりまれ」で報告も限られています(脊髄梗塞全般に関してはこちらをご参照ください)。画像上後脊髄動脈領域を描出することが難しいこともありますし、そもそも後脊髄動脈は血管が這うように分布しており虚血に陥りにくい点(下図参照)などが挙げられます。最近久しぶりに自験例があり(私は今まで2例確定診断例があり […]

Painful tonic spasm

ちょっとマニアックなテーマで恐縮ですが、脊髄疾患の診療でしばしば悩まされるのが”painful tonic spasm”(PTSとも略されます)です。私も医師3年目の時にNMOSD(抗AQP4抗体+)の患者さんで同症状を呈して管理にかなり難渋してしまい患者さんに辛い思いをさせてしまった苦い経験があります・・・。疼痛の恐怖のため外出をあまりしなくなってしまう方もいらっしゃり、 […]

HAM/TSP: HTLV-1 associated myelopathy/tropical spastic paraparesis HTLV-1関連脊髄症

HAM/TSPはヒトT細胞白血病ウイルス1型(Human T-cell leukemia virus type 1:HTLV-1)により起こる神経合併症で、特に地域性のある疾患として知られており、私は普段関東で勤務しているため遭遇頻度は極めて低いのですが勉強した内容をまとめます。 感染経路 1:母子感染(垂直感染・母乳感染) 原因として最多・母乳栄養を避けることが感染予防2:性行為感染(水平感染) […]

遺伝性痙性対麻痺 HSP: hereditary spastic paraplegia

病態・定義 遺伝性痙性対麻痺は臨床上は緩徐進行性の下肢痙縮と筋力低下を認め、病理学的には脊髄の錐体路、後索、脊髄小脳路の変性を認める神経変性疾患です。多くは常染色体優性遺伝で、一部常染色体劣性遺伝などが存在し、SPG〇〇と遺伝子に番号がふられています。細胞内輸送の障害(小胞体など)が病態の主体とされていますが、なぜそれが痙性対麻痺の臨床像を呈するのかはまだ解明されていません。 臨床的には痙性対麻痺 […]

Arachnoid web

先日”arachnoid web”術後(術中所見で証明済み)の患者さんを診療する機会がありました。名前だけ聞いたことがあったのですが、具体的な病態など全く知らないため調べた内容をまとめます。Spinal arachnoid webとも文献では記載されていますが、対応する日本語名はまだないように思います。 病態と症状 くも膜下(脊髄外、硬膜内)に膜状のバンドの様な構造物が形成 […]

平山病 Hirayama disease

病態 ・硬膜後方の前方移動により硬膜と椎体に脊髄が挟まれ、圧迫されることでC5~Th1髄節レベル(特にC7,8髄節レベル)の前核細胞障害をきたすことが原因とされます。循環障害をきたすことで最も脆弱な脊髄前角に限局した障害が起こるとされています。感覚神経は一般的に障害を免れます。若年性一側上肢筋萎縮症など様々な名称がありますが、何よりも日本の平山恵造先生が発見された疾患です。 ・頸部前屈が本疾患では […]