ETと脳梗塞合併例が1週間で2例あり急いで勉強しないといけず、まとめていきます。過去にもあったのですが、その時勉強した内容はすっかり忘れてしまっていました(ブログを始める前で後悔・・・)。
病態
遺伝子異常
・JAK2 mutation 50%:血栓症のリスクが最も高い遺伝子変異
・MPL mutation 5-10%
・CALR(Calreticulin) mutation 20%
JAK-STAT系の問題
・骨髄:巨核球増加(末梢血での血小板の存在時間が長くなることが問題ではない)
・末梢血:その他の血球増加もありうる
・血中TPO:正常~上昇→骨髄での問題を示唆している
・血小板の数のみで炎症性の変化か本態性血小板増多症かを区別することは出来ない
・Plt 100万/μL以上の場合は後天性von Willebrand Syndromeの合併がないか?を検索する
臨床像
・患者の半数は無症状にて検出される
①vasomotor manifestations:頭痛、胸痛、livedo reticularis、erythromelalgia、transient visual disturbanceなど これらの症状に対して低用量アスピリン効果あり
②血栓症(約20%):動脈血栓症>静脈血栓症(リスク因子後述)
③出血:acquired von Willebrand syndromeによる
文献:脳梗塞の画像上の特徴 Journal of the Neurological Sciences 2019; 398: 135–137.
・26例のET脳梗塞患者を検討(年齢66±17歳)
・ETのみ群 12例(ETがprimaryな原因と判断)
・ET+別の脳梗塞機序がある群 14例:アテローム血栓性 7例、ラクナ梗塞 5例、心原性 2例
・複数血管支配領域にまたがる病変がETのみ群で多い結果
血栓症のリスク評価
IPSET-thrombosis model
・年齢:60才以上 1点 HR=1.5
・動脈硬化リスク因子:高血圧、糖尿病、喫煙いづれかあり 1点 HR=1.6
・血栓症の既往歴 2点 HR=1.9
・JAK2 V617F mutation 2点 HR=2.0
・low(0-1点):1%/year 11%/15year
・intermediate(2点):2.4%/year
・high(3点以上):3.6%/year, 50%/15year
参考:Blood. 2012; 120(120): 5128–252.
revised-IPSET-thrombosis model
リスク因子 | 治療 | ||||
血栓症既往 | 年齢>60歳 | JAK2遺伝子変異 | アスピリン | Cytoreductive therapy | |
High-risk | + | + | + | ||
– | + | + | |||
Intermediate-risk | – | + | – | + | ± |
Low-risk | – | – | + | + | aVWS+ |
Very-low risk | – | – | – | ± | – |
参考:Blood Cancer Journal (2015) 5 , e369; doi:10.1038/bcj.2015.94
文献:ET891例の動脈血栓症,静脈血栓症のリスク因子(WHO診断基準後) Blood. 2011;117(22):5857-5859
・合併頻度:動脈血栓症1.2%/人-年(内訳 AMI 0.26%/人-年, 脳梗塞TIA 0.73%/人-年, 末梢動脈疾患 0.23/人-年), 静脈血栓症 0.6%/人-年(いずれも非致死的)
*6.2年間のフォローアップで全体の12%が動脈または静脈血栓症を経験
・動脈血栓症:年齢>60歳 HR 1.7,血栓症既往 HR 2.1, 心血管リスク因子(喫煙歴,高血圧症,糖尿病) HR 1.9, 白血球増多>1,1000 HR 1.7,JAK2遺伝子変異 HR 2.6
*血小板数>100万/μLは血栓リスク低下 HR 0.4
・静脈血栓症:男性のみ
治療
Harrison内科学の記載:”the physician’s first obligation is to do no harm”
→血小板数を正常化することが治療の目的ではない(それにより血栓症を抑制できるわけではなし)
→塞栓症のリスク評価に基づいて治療適応を判断する
血栓症の既往がある場合
・動脈系:低用量アスピリン+cytoreductive therapy
・静脈系:抗凝固療法+cytoreductive therapy *ここに低用量アスピリンを追加するDrもいる
intermediate-risk
低用量アスピリン±cytoreductive therapy
low-risk(≦60歳+JAK2 V617F遺伝子変異+血栓既往なし)
低用量アスピリン>cytoreductive therapy
参考:脳梗塞の管理
急性期管理:通常の脳梗塞診療と違いなし(純粋にデータに乏しいのもあるが)
慢性期管理:血栓症ありのhigh-riskの管理に準じる
*脳梗塞だから何か管理が特殊になる訳ではない
低用量アスピリンに関して
・アスピリン100mg/日投与でOK
・アスピリンの使用に関しては元々PVでの有用性からETに派生している
・アスピリンのprimary preventionに関して効果あり(治療なし経過観察と比較して血栓症減少効果あり) Blood. 2010;116(8):1205.
・acquited von Willebrand Syndromeの場合は出血リスクが高い点に注意(Plt>100万/μLの場合は注意)
・1日2回投与の方がCOX1を阻害するため1日1回投与よりも優れているとする報告があるがエビデンスには乏しい
*その他の抗血小板薬に関してはエビデンスに乏しい
cytoreductive therapy
HU(hydroxyurea) 商品名:ハイドレア®
・若年女性や妊娠では避ける必要がある
参考文献
・Up to date “Essential thrombocythemia: Treatment and prognosis”
・Med Princ Pract 2021;30:412–421 脳梗塞とETに関するまとめとして優れている