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Painful tonic spasm

ちょっとマニアックなテーマで恐縮ですが、脊髄疾患の診療でしばしば悩まされるのが”painful tonic spasm”(PTSとも略されます)です。私も医師3年目の時にNMOSD(抗AQP4抗体+)の患者さんで同症状を呈して管理にかなり難渋してしまい患者さんに辛い思いをさせてしまった苦い経験があります・・・。疼痛の恐怖のため外出をあまりしなくなってしまう方もいらっしゃり、QOLに大きな影響を与えるため適切な重要です。

定義は”a paroxysmal episode of intense pain that accompanied tonic postures of the limbs with or without being precipitated by abrupt movement or sensory stimulation”と記載されている通り、激烈な疼痛が瞬間的にずきっときて患者さんもその瞬間に表情がもだえるようになることがあります。特にNMOSDやMSでは「えっこれって再発?」と医療者に思わせるくらい激烈な症状を呈しますが、画像も髄液も全然再発ではない場合が多々あります。このように必ずしも病勢とパラレルではない印象もあり、調べた内容をまとめます。

■NMOSDでのpaniful tonic spasmに関して(韓国からの報告) Arch Neurol. 2012;69(8):1026-1031.

・NMOSD 25%、MS 2.9%、特発性の横断性脊髄炎 2.4%にPTSを認めたと報告されています。
・脊髄炎の発症から平均48.13日後に認めることがあり、その他の脊髄症状と随伴していなかったとされます。このことから急性期の症状というよりも回復期に認めることが多いことがわかります(この論文ではdiscussionで機序は再髄鞘化が関係しているのでは?と考察しています)。

・治療に関してはカルバマゼピンやフェニトインが効果あるとした報告が多く、ガバペンチンは効果に乏しい例が多かったとされています。

■NMOSDでのPTSに関してまとめ Multiple Sclerosis and Related Disorders 17 (2017) 99–102

・NMOSD患者 22.61%(52/230例)にPTSを認めた。
・部位に関しては下図の通り。

・脊髄炎発症から平均33.78日後にPTS発症
・PTS有り群と無し群の比較:発症年齢が高い、ARR高いなどがリスク因子。脊髄炎の部位や病変の長さはPTS発症と関係なし(discussionで「横断面でのephaptic transmissionが機序」として考察されています)。
薬剤への反応性:カルバマゼピンが良い ガバペンチン、プレガバリン、バクロフェンは反応性悪い
*この論文ではカルバマゼピンは副作用の問題もあることから、オキサカルバマゼピンを第1選択薬として推奨

やはりNa遮断薬が効果があるようです。副作用の少なさなどからは”Lacosamide”が効果あるかどうかも気になるところです。