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後頭神経痛 occipital neuralgia

田舎の病院で内科外来をしているときはよく遭遇しました。本日外来でそうなのかな?と微妙な症例があり改めて勉強しました。取り急ぎで、少しずつ追記していきます。

解剖・病態

大後頭神経(greater occipital nerve)が最も障害されやすい(>小後頭神経)
・疼痛分布の90%は大後頭神経に合致する
・大後頭神経はC2由来→半棘筋(semispinalis)、僧帽筋を貫通する(下図)
→同部位が解剖的に慢性的な絞扼を受ける可能性(→虚血)
・その他外傷、腫瘍などの指摘があるが→実臨床では原因がはっきりせず生じることが多い
*頸部回旋は軸椎、環椎を動かすため疼痛誘発する可能性、また頸部屈曲も大後頭神経を伸展させることで疼痛を誘発する可能性

臨床像

・明らかな誘因なく突然発症、性状としては鋭く刺すような疼痛発作性に後頭部~頭頂部にかけて放散
・持続時間は秒から分単位
・通常片側性 85% *左右は変化しない(片頭痛は左右変化する場合があるが)
・障害される頭皮上にアロディニアを認めることが多い(髪をとかす動作や触れることによって)
→持続性の疼痛で異常感覚やアロディニアを認めない場合はか頸椎疾患からの関連痛を考慮するべき
・障害される部位に圧痛を認めることがある(貫通部位にトリガーポイントを認める場合もある)
・解剖的に三叉神経頸神経複合体(trigeminocervical complex)による三叉神経とのconnectionがあるため、同側の三叉神経領域に放散痛を認める場合がある *歯痛も報告ある
・後頭神経ブロックは診断的検査として挙げられるが、片頭痛などその他の頭痛でも効果があるため解釈に注意(特異性は高くない

*文献:後頭神経痛69例の臨床像 Pain Med. 2021 Feb 23;22(2):396-401.
・男性20.6%, 女性79.4%
・発症年齢 56.15±16.6歳 発症から診断までの期間 27.78±56.1か月
・直近(発症1か月以内)の外傷歴 11.8%
・片側性 89.7%(左55.9%/右33.8%), 両側性 10.3% *左下にして寝ることが多いから??
感覚障害 100% 内訳:アロディニア 94.1%, 感覚鈍麻 5.9%
ベースラインの疼痛あり 91.1%
・ベースライン疼痛の性状:圧迫性 77.4%, 刺すような 9.7%, 焼けるような 9.7%, ずきずき throbbing 3.2%
・発作疼痛時の性状:刺すようなstabbing 64.3%、刺すようなlancinating 16.7%、圧迫性 9.5%、焼けるような 4.8%、ずきずき 4.8%

診断基準 ICHD-3

A:片側または両側性の疼痛で以下B-Eを満たす
B:後頭神経(大 or 小 or 第三)の分布に疼痛を認める
C:疼痛の性状 以下2つ以上を認める
・再発性発作性/持続時間は数秒~分単位
・強い疼痛
・刺すような、鋭い性状
D:疼痛は以下と関連する
1:異常感覚またはアロディニアを認める(頭皮や髪に触れることで刺激され)
2:以下のいずれかまたは両方を認める
 ・障害される神経上の圧痛
 ・トリガーポイント(大後頭神経の出る部位)
E:局所麻酔ブロックによる疼痛の改善
F:その他ICHD-3上の代替診断なし

鑑別診断

頸椎疾患からの関連痛
先天奇形(キアリ奇形):後頭神経痛に似た臨床像(後頭部の疼痛)を呈するので必ず注意(特にValsalva負荷で増悪する場合は注意) 小脳扁桃が下垂して頸髄神経根部を刺激する可能性
・一次性頭痛:緊張型頭痛、TACs 、片頭痛
・血管障害:椎骨動脈解離
・炎症性:巨細胞性動脈炎 後頭部痛として出現する場合もあるので注意
・C2 neuralgia:C2神経根障害
・cervicogenic headache

治療

1:非薬剤治療
・温める、冷やす、理学療法、マッサージなど
・針治療の効果が指摘ある BMC Complement Med Ther. 2020;20(1):171.

2:薬剤
・ガイドラインやsystematic reviewは存在しない(ケースレポートレベル)
・NSAIDs、アセトアミノフェン、筋弛緩薬(バクロフェン)、抗発作薬(カルバマゼピン、ガバペンチンなど)などが慣用的に使用される *オピオイドは推奨されない

3:局所注射
・麻酔薬、ボツリヌス毒素Aなど

4:手術など 詳細は割愛

自然経過は?

参考文献
・Current Pain and Headache Reports 2021; 25: 61 “occipital neuralgia”のreview article
・Current Neurology and Neuroscience Reports 2019; 19: 20. 同様にreview article