脂質異常症 薬剤治療適応

ここでは脂質異常症に対しての介入方法をまとめます。海外のガイドラインは日に日にややこしさを増していて、また日本との相違点もあるため解釈が難しいところもあるので、細かいことにとらわれすぎず大枠をとらえることが重要と思い解説します。

薬剤治療の適応は?

脂質異常症の薬剤治療は「スタチン」が鍵の薬剤になります。スタチンの治療で理解しておくべき重要な点は背景の心血管合併リスクによりスタチンによる心血管合併症抑制効果が異なるという点です。下図は今まで行われてきた脂質異常症に関しての大規模臨床試験に関して、スタチン介入群とコントロール群のLDL値、心血管合併症の発症率(5年間)をそれぞれ横軸、縦軸にプロットしたものになります。オレンジ色が2次予防の試験結果で、濃い青色が1次予防の試験結果です。

こうしてみると分かるように、同じLDL値であってとしても1次予防目的と2次予防目的では心血管合併症の起こるリスクが全く異なることが分かります。つまり、2次予防の方が同じLDL値であったとしても1次予防と比べて心血管合併症の起こるリスクが高い状態にあります。

またグラフの傾きが1次予防と比べて2次予防の方が大きいので、1次予防と2次予防で同じだけLDL値を下げたとしても2次予防の方がより心血管合併症を抑制できることが分かります。

この結果を踏まえた上で、脂質異常症に対するスタチン介入は1次予防は基本生活指導中心で薬物治療は基本行わない(高リスク患者で介入する)2次予防は薬物治療(スタチン)というのが原則になります。

日本人のデータはどうなのか?

これまでは海外での大規模臨床試験の結果をまとめたものでした。日本人での大規模研究は1次予防に関しては「MEGA」(Circulation. 2008; 117: 494-502.)、2次予防では「REAL-CAD」(Circulation. 2018; 137: 1997-2009.)の2つがあります(きちんと臨床的なアウトカムを設定しているもの・REAL-CADはスタチン高容量と低用量の比較)。その結果を先ほどのグラフに入れると下図の様になります。

日本人での臨床試験の結果は海外での臨床試験と比較して全体的に心血管合併症の頻度が低いことが分かります。

1次予防

1次予防の原則は薬剤治療ではなく、生活指導ですが、リスクが高い場合は薬剤治療の介入を検討します。このリスク評価がガイドラインをとにかくややこしくしている印象があります。ACC/AHA2018年のガイドラインでは、1次予防に関しては下記のようになっています。

ぞっとするくらいややこしいですよね・・・。結局は1次予防でも高リスクではスタチン導入を検討しようということです。ただ、このリスク評価も海外でのデータなので心筋梗塞が海外と比べて比較的少ない日本人へ同様へ適応してよいかどうか?という問題があります。

日本でのリスク評価は、“NIPPON DATA 80”というもので評価することができます。ここで高リスクといえるのは、糖尿病慢性腎臓病(非透析)高血圧かつ喫煙の高齢男性などが挙げられます。これらの患者に対しては1次予防でもスタチン導入を検討します。

2次予防

2次予防は全例スタチンの導入が必要です。これは元のLDL値にかかわらず導入します。ここで重要なのは「とりあえずスタチンを入れればOKでLDL値の目標値は設定しない」といういわゆる”Fire and Forget”戦略にするのか?、「きちんとLDL目標値を決めて治療介入する」という戦略にするのか?を決めることです。2013年のACC/AHAのガイドラインでは前者の”Fire and Forget”戦略でしたが、2018年からは“Lower the better”(LDL値を下げれば下げるほど良い)の戦略が取られています。

このため基本的にはLDL値を50%以上下げることを目標(かつ70mg/dL以下を目標)に、まずはスタチンを増量し、それでも達成できない場合はエゼチミブを追加、更にPCSK9阻害薬追加を検討するという流れになります。フローチャートは下図の通りまたもや極めてややこしいですが、重要なのは上記の概念を理解しておくことだと思います。

これも日本人にそもまま適応することは難しく、日本人での2次予防のLDL目標値は定まっておりません。日本のガイドライン(動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017)ではLDL 100mg/dL以下と記載がありますが、”LDL=100 mg/dL”という数字に明確な根拠がある訳ではありません。ではどうすればよいのか?ということですが、私は現状2次予防で最低 LDL 100mg/dL以下に、出来れば70mg/L以下を目標にコントロールとしています。答えがない領域ですが、ご意見いただけますと幸いです。

まとめ

参考文献

・Grundy SM et al. AHA/ACC/AACVPR/AAPA/ABC/ACPM/ADA/AGS/APhA/ASPC/NLA/PCNA guideline on the management of blood cholesterol: A report of the American College of Cardiology/American Heart Association Task Force on Clinical Practice Guidelines. J Am Coll Cardiol 2018 Nov 10; [e-pub]. :2018年の脂質異常症に対するACC/AHA最新のガイドライン

“脂質異常症 薬剤治療適応” への2件の返信

  1. 個人的な意見で恐縮ですが、私も2次予防はできるだけLDL-C<70を目指しています。ACSでも発症早期のLDL-C低下が治療に重要ですし、同じ血管障害である脳梗塞患者も同様かと思います。近年は脳梗塞急性期からスタチンを積極的に使用する流れになっていますよね。

    1. コメントありがとうございます!
      はい、ご指摘の通り近年脳梗塞領域も急性期にLDL<70目標になってきております。
      「脳梗塞での脂質管理」という記事にもstudy結果をまとめまさせていただきましたので、もしよろしければご参照いただければと思います(^^)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。