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2020年8月

肺塞栓症による腹痛

先日後輩の先生から腹痛を主訴とした肺塞栓症の症例を教えていただきました。自分はまだ経験したことがないのですが、果たしてきちんと鑑別できるのか?全く自身がなく既報を調べてみました。 なぜ肺塞栓症で腹痛を呈するのか? 胸膜炎や肺炎が季肋部痛、上腹部痛を呈することはよく知られています。これらは胸膜の炎症が機序として考えられています。肺塞栓症の場合は様々な機序が考えられています。・肺塞栓症により右心負荷が […]

AICA梗塞

AICA(anterior inferior cerebellar artery:前下小脳動脈)は中小脳脚、橋外側部、小脳などを還流しています。AICA梗塞は脳血管障害で唯一難聴を呈する点で重要です。頻度はかなり稀ですが、「めまい」、「難聴」の救急で特に重要なためここでまとめます。 血管解剖 内耳を栄養する迷路動脈はAICAからの分枝になります(下図参照)。AICA梗塞の原因としてはAICA自体の […]

サルコイドーシスによる視神経症

サルコイドーシスによる眼障害としては前部ブドウ膜炎が有名で、脳神経障害としては顔面神経麻痺が有名ですが、ここでは視神経症を取り上げます。基本的には亜急性経過の視神経症の臨床像で52例のサルコイドーシスによる視神経症をまとめた報告の内容をまとめます(Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2016;3:e270)。 視神経症をきたす病態としては視神経自体の炎症、浸潤もしくは […]

肥厚性硬膜炎 hypertrophic pachymeningitis

病態・原因 髄膜は硬膜、くも膜、軟膜に分けられますが、ここではこのうち硬膜に主病変がある肥厚性硬膜炎を取り上げます。硬膜病変へのアプローチ一般に関してはこちらにまとめましたので、ご参照ください。 感染症は肥厚性硬膜炎の原因としては現代は比較的まれだとされています。 自己免疫関連ではGPA(多発血管炎性肉芽腫症)が原因として最も多いと報告されており、側頭動脈炎・サルコイドーシスも重要な原因となります […]

神経有棘赤血球症 Neuroacanthocytosis

病態 神経有棘赤血球症(Neuroacanthocytosis)は有棘赤血球(下図参照)を伴い、神経症状を呈する病態の総称です。この有棘赤血球自体が神経症状を引き起こすのか?別の問題なのか?に関しては不明な点も多いです。疾患頻度は極めてまれで、全世界で200例程度、うち日本から100例程度の報告があり日本で比較的報告が多い特徴があります。 分類 神経有棘赤血球症は舞踏運動といった不随意運動を呈する […]

中枢神経原発悪性リンパ腫(PCNSL)による視神経障害

PCNSLでは眼内病変を呈することが約20%程度あるとされ重要な所見です。PCNSLによる眼内病変は通常月単位の慢性経過であり、無症候性に指摘される場合もあるためPCNSLを疑う場合は眼内病変の検索をすることが重要とされています。 一方でPCNSLによる視神経障害は頻度が稀で、比較的早い進行性の経過をたどり予後が悪いことが指摘されています。ここでは7例のPCNSLによる視神経障害報告をまとめます( […]

硬膜病変へのアプローチ

硬膜の解剖 硬膜は頭蓋骨とくも膜に接している髄膜で、頭蓋骨側の”periosteal layer”とくも膜側の”meningeal layer”の2層から構成されています。通常この2層は接していますが、静脈洞はこの2層の間に位置します。”periosteal layer”は頭蓋骨にとって内側の骨膜の役割を果たし、骨を栄養する血 […]

IMNM: immune-mediated nectorizing myopathy 免疫介在性壊死性ミオパチー

病態 ・壊死性ミオパチーは「炎症細胞浸潤が乏しいのに比して、壊死再生が主体である」ことを意味する病理学的な分類です。その名の通り病理学的には筋症(myopathy)と名付けられており筋炎(myositis)ではありませんが、臨床的には筋炎の経過と区別は困難です。壊死性ミオパチーは原因は不明のものや腫瘍関連のものもありますが(seronegative IMNMは25-40%程度とされている)は、ここ […]

頭蓋内造影病変の鑑別

ここでは頭蓋内造影病変、特にガドリニウム造影MRI検査による頭蓋内造影病変に関してまとめます(すべての内容をRadioGraphics 2007; 27:525–551より参照・引用させていただきました)。 病態 造影効果は1:血管内造影効果(intravascular enhancement)と2:血管外/間質造影効果(extravascular/intestitial enhancement) […]

チオペンタール thiopental

神経集中治療でときおり使用することがあるのが最後の手段チオペンタールです。普段あまり使い慣れないところもあるためまとめます。 薬剤の特徴 作用機序:バルビツール酸・GABA受容体に作用商品名:ラボナール®作用発現時間:10~30秒 最大効果時間:~30秒 作用持続時間:20分 製剤1:0.3g/1A(粉製剤 薄黄色) +溶解液12ml付組成:ラボナール0.3g +溶解液 12ml →300mg/1 […]