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2020年8月

Trousseau症候群による脳梗塞

病態 Trousseau症候群は腫瘍に伴う過凝固状態による塞栓症を表しますが、文献によってはこの表現は使用さえておらず、pub medでもhitする数は少ないです。腫瘍由来の過凝固状態には多段階の機序が作用しているとされており(下図はBlood. 2007;110:1723-1729より引用)、抗凝固療法もDOACやワーファリンでは不十分で多段的に作用する未分画ヘパリンが有用とされています(実際に […]

多発性硬化症 画像診断

1:脳病変 ■ovoid lesion 白質に楕円形の病変を認める。側脳室壁に対して垂直で、特に脳室に接していることが重要です。虚血でも認める所見のため、特異度は低い欠点があります。*McDonald基準2017年の空間的多発性の1つ(脳室周囲病変) ■脳梁病変 Septal-callosal interface lesion *FLAIR sagittal像が有用 脳室に対して垂直に脳梁内に認め […]

封入体筋炎 IBM: inclusion body myositis

病態 炎症と変性どちらがprimaryな病態なのか?難しく、病態はまだまだ解明されていません。50歳以上の炎症性筋疾患として重要で、男女比は2-3:1程度です。自己免疫疾患合併はありますが、悪性腫瘍併存に関しては指摘されていません。筋疾患一般へのアプローチに関してはこちらをご参照ください。 臨床像 ・50歳以降に発症し、発症様式/経過は緩徐進行性(症状発症から診断まで数年単位かかることも多い:車い […]

LDH上昇へのアプローチ

採血結果のうちLDH上昇は「どーせなんでもLDHは上昇するだろー」と高を括って、原因をアセスメントされずに放置されているケースをしばしば目撃します。しかし、LDH上昇が手掛かりとなり病態解明のヒントとなることもあり、一度LDHに助けられるとそのありがたみを痛感する検査項目でもあります。ここではLDH上昇へのアプローチを解説します。 まずroutineで確認するのは同時採血のHb、血小板、血液像、C […]

呼吸機能検査 フロー・ボリューム曲線

フロー・ボリューム曲線 フロー・ボリューム曲線は横軸:容量(ボリューム:左へいくほど多い、右へいくほど少ない)、縦軸:流速(上が呼気で下が吸気)を表現した曲線です。フロー・ボリューム曲線はそもそもどういうものなのか?その成り立ちを解説していきます。 「どの要素(パラメーター)を決めればグラフを描くことが出来るのか?」を把握することがフロー・ボリューム曲線の理解に重要です。以下4つのパラメーターを決 […]

ステロイド外用薬

分類 毛穴が多く、皮膚が降水部位は外用薬の吸収が良いことが知られています。このため、顔面、腋窩など外用薬の吸収が高い部位は”Very Strong”以上のステロイド外用薬は使用しません。逆に手掌、足底は吸収が低いため、”Strong”以上を使用するようにします。 以下部位とステロイド外用薬強度のおおまか対応関係を載せます。 ・顔面:”Me […]

平山病 Hirayama disease

病態 ・硬膜後方の前方移動により硬膜と椎体に脊髄が挟まれ、圧迫されることでC5~Th1髄節レベル(特にC7,8髄節レベル)の前核細胞障害をきたすことが原因とされます。循環障害をきたすことで最も脆弱な脊髄前角に限局した障害が起こるとされています。感覚神経は一般的に障害を免れます。若年性一側上肢筋萎縮症など様々な名称がありますが、何よりも日本の平山恵造先生が発見された疾患です。 ・頸部前屈が本疾患では […]

抗NMDA受容体脳炎

私は今まで同脳炎の患者さんを2例主治医として診させていただいた経験がありますが、毎回非常に悩み、印象に深く刻まれる経験をさせていただきました。Dalmau先生によって2007年に同脳炎12例の報告されてから(Ann Neurol 2007;61:25)、その特徴的な臨床像もあいまって現在は認知度がかなり上がっている脳炎です。Dalmau先生が発表された当初は「卵巣奇形腫に合併する脳炎」という認識で […]

GBS group B streptococcus/ Streptococcus agalactiae

1:病原体 GPC chain, Streptococcusの中でB群連鎖球菌に属します、Streptococcus agalactiaeと名前が付いています。Streptococcusは分類がややこしいのでまとめを載せます。 (以下は自験例のGBS菌血症の血液培養グラム染色画像です) 常在部位は以下の通りです。感染症は基本的にこれらから直接菌が波及、もしくは菌血症を経由することが発症します。・消 […]

高尿酸血症 hyperuricemia

1:尿酸の生理学 ヌクレオチドの産生経路は新規に作る経路(de novo経路)とプリン体を再利用する経路(サルベージ経路)の2種類があります。これらが代謝されると、キサンチンがキサンチンオキシダーゼにより最終的に尿酸となります。尿酸の産生は肝臓で行われており、1日約700mg/日産生されています。 このうち2/3は腎臓から排泄され、1/3は腸管で腸内細菌による分解されることで排泄されます(下図Ad […]