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チオペンタール thiopental

神経集中治療でときおり使用することがあるのが最後の手段チオペンタールです。普段あまり使い慣れないところもあるためまとめます。

薬剤の特徴

作用機序:バルビツール酸・GABA受容体に作用
商品名:ラボナール®
作用発現時間:10~30秒 最大効果時間:~30秒 作用持続時間:20分

製剤1:0.3g/1A(粉製剤 薄黄色) +溶解液12ml付
組成:ラボナール0.3g +溶解液 12ml →300mg/12mL= 25 mg/mL
(シリンジポンプで投与できるようによくラボナール4A + 生理食塩水48mlで使用する場合が多い)

製剤2:0.5g/1A +溶解液20mL付
組成:ラボナール0.5g + 溶解液20mL →500mg/20mL= 25 mg/mL

投与量:てんかん重積管理・頭蓋内圧亢進コントロールの場合
bolus投与:3~5mg/kg 持続投与:3~5mg/kg/hr
*上記組成で体重50kgの場合 3mg/kg/hr =6mL/hr, 5mg/kg/hr =10mL/hr
*他の鎮静薬併用・高齢者では減量する

*薬剤が強アルカリ性(pH=11)のため、末梢から漏れると危険なので投与ルートが確実であることが必要(通常は中心静脈管理となる)

副作用

■呼吸抑制
■副交感神経刺激・交感神経抑制作用
血圧低下:末梢静脈拡張による静脈灌流量減少
喘息既往禁忌(ヒスタミン遊離作用があるため)

■電解質K異常 Intensive Care Med 2011;37:1285–1289.
・頭蓋内圧上昇患者でチオペンタール投与を受けた患者47例の後ろ向き検討
・89.4%が導入後低K血症 投与11(6-23)時間後にK低下、投与25(15-41)時間後にnadirに達する
・34%がチオペンタールのweaning中に高K血症 中止後31(28-56)時間後にnadir
→チオペンタール導入または中止時にはK値の変動に注意(モニターをきちんとするべき)・特に中止は突然終了するのではなく漸減が望ましい
*チオペンタールに限った議論か?それともバルビツール全般における議論かは分からない

免疫抑制
チオペンタールは免疫状態を低下させ易感染性になるという報告が多くあります(古い文献が多いですが)。私がたまたまチオペンタール関連の論文を読んでいた時「チオペンタールで免疫抑制が起こるので」とintroductionにさらっと書かれており、「えっ!!そうなの!?」と思い調べてみました。日本の添付文書にもやはり記載は見つけられず意外と知られていないのではないかと思われます(かく言う私も知らなかったのですが・・・)。
・頭部外傷患者で人工呼吸管理開始後、チオペンタール非投与群、チオペンタール低容量投与群、チオペンタール高容量投与群で7日間の肺炎合併率を比較した研究では、非投与vs 低容量 vs 高容量:7.7% vs 21.4% vs 43.8%の合併率で有意にチオペンタール投与群で肺炎合併が多く、また投与量が多いほど合併が多いことが指摘されました(Infection 1992; 20:12 下図)。

・なぜチオペンタールで免疫抑制状態になるか?に関してはチオペンタールが好中球機能を阻害する(Anesth Analg 1998;86:159-6)、NFκBを阻害する作用を持つ(Anesthesiology 2002; 96:1202)ことなどが基礎的な背景として考察されています。またチオペンタールが骨髄抑制(ここでは無顆粒球症)と関係していたとする報告もあります(Eur J Clin Pharmacol (1998) 54: 529–534)。