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硬膜病変へのアプローチ

硬膜の解剖

硬膜は頭蓋骨とくも膜に接している髄膜で、頭蓋骨側の”periosteal layer”とくも膜側の”meningeal layer”の2層から構成されています。通常この2層は接していますが、静脈洞はこの2層の間に位置します。”periosteal layer”は頭蓋骨にとって内側の骨膜の役割を果たし、骨を栄養する血管が走行します。また硬膜にはBBB(blood brain barrier:血液脳関門)が存在しないため、体循環系に属します。

より硬膜の部分を細かく見ると下図になります(Nat. Rev. Neurol. 10, 570–578 (2014)参照)。硬膜は厳密にはmeningeal layerより内側に“dural border cell layer”が存在し、同部位の静脈が破綻することで硬膜下血腫が生じるとされています(このようにあくまで”dural border cell layer”内に出血をきたす病態のため、厳密には「硬膜下腔」ではないとする議論もあります)。同部位は細胞結合がほとんどない、細胞外腔が広い、細胞外マトリックスがないといった組織学的な特徴を有しています。

MRI所見

硬膜病変の描出・鑑別には造影MRI検査が必要です(単純でも硬膜は生理的に描出わかることもある)。

■正常な硬膜の描出

造影MRI検査で使用されるガドリニウムはBBBが破綻しているところで増強効果を持つため、そもそも生理的にBBB構造がない部位でも増強効果を持ちます。硬膜はBBBを持たないため生理的に増強効果を持ちます。また皮下脂肪骨も板間層は脂肪髄で生理的に造影されます。このため、通常は途中骨の外板、内板が無信号になるのをサンドイッチするような形で3本の造影効果を持つ線(外側:皮下脂肪、真ん中:板間層、内側:硬膜)がみえます(下図参照:以下の例は硬膜が肥厚している例であり注意)。

以下に肥厚性硬膜炎例を掲載します(画像はNeurologyのTeaching NeuroImages:Idiopathic hypertrophic pachymeningitisより引用)

■”Dura-arachnoid pattern” と”pia-arachnoid pattern”

また髄膜の増強効果において重要なのは、その造影効果のパターンが”dura-arachnoid pattern”か?”pia-arachnoid pattern”か?を区別することです(下図)。

一般的に硬膜病変は“dura-arachnoid pattern”を取ります。これは硬膜や硬膜が合わさってできるテント部などに増強効果を認めますが、脳溝に沿った造影効果は認めないものです。通常の腰椎穿刺でも髄圧減少をきたし硬膜増強効果を認める場合が5%以下程度あるとされており注意が必要です(AJNR Am J Neuroradio/15:633-638, Apr 1994)。

これに対して“pia-arachnoid pattern”は病変の主体がくも膜や軟膜である細菌性やがん性髄膜炎で認める画像パターンで、脳溝に沿う形で造影効果を認めます。

増強効果がどちらのパターンか?によって大まかな病変の首座(硬膜か?軟髄膜か?)を特定することが出来るためとても重要です。

■”dural tail enhancement”

“dural tail enhancement”は髄膜腫で有名な所見です。このtailの部分は当初は腫瘍の直接浸潤と考えられていましたが、近年は腫瘍に伴う反応性の変化であり、血管新生や間質浮腫により造影効果をきたしていることが指摘されています。

硬膜は普段から注目してみていないとなかなか微妙な異常所見に気が付きにくいため、まずは硬膜をMRIできちんと同定してapproachするようにしたいです。

硬膜肥厚 鑑別

硬膜が全体的に肥厚している病態の鑑別は、肥厚性硬膜炎・髄膜腫・頭蓋内圧減少症が挙げられます。

頭蓋内圧減少の鑑別にはその他の随伴所見を確認します。具体的には静脈拡張両側性硬膜下血腫・水腫saggital sagging(視交叉のbowing、脳室狭小化、橋前槽の狭小化(橋底部の斜台での)、脳梁の下垂、小脳扁桃の下垂)、下垂体拡張が挙げられ、これらを伴っている場合は頭蓋内圧減少を考慮します。

硬膜病変への基本的なアプローチ方法をまとめました。