PCNSLでは眼内病変を呈することが約20%程度あるとされ重要な所見です。PCNSLによる眼内病変は通常月単位の慢性経過であり、無症候性に指摘される場合もあるためPCNSLを疑う場合は眼内病変の検索をすることが重要とされています。
一方でPCNSLによる視神経障害は頻度が稀で、比較的早い進行性の経過をたどり予後が悪いことが指摘されています。ここでは7例のPCNSLによる視神経障害報告をまとめます(JAMA Neurol. 2017;74(11):1368-1373.参照)。
■疫学
・年齢:65歳(49-78歳)
・女性5例、男性2例
・全例で眼内悪性リンパ腫の所見はなし
・視神経障害がPCNSLの初発症状2例、残りは再発時などに指摘
■臨床像
・経過:発症から視力障害が最も強くなるまでの期間 14日(10-21日)
・片側性5例、両側性2例
・赤い目1例、眼痛2例、頭痛3例、その他の脳神経障害合併1例、がん性髄膜炎2例
・発症から治療開始までの期間:28日(10-140日)
・当初の誤診された疾患名:巨細胞性動脈炎、器質的なものではない、視神経炎、眼内リンパ腫(それぞれ1例ずつ)
・視力予後:部分的な改善2例、1/10以下5例
■検査
髄液所見:癌性髄膜炎2例、microRNA3例
■MRI所見
・片側性5例、両側性2例
・病変部位:視交叉3例、脳槽内(視交叉前)4例、視神経管内4例、眼窩内5例
・造影効果:全例あり(部位:視神経4例、視神経鞘3例)
・視神経腫大:3例
・頭部MRI所見:正常範囲内もしくは新規所見なし3例、造影病変3例、新規の非造影T2WI病変1例
■予後
■まとめ
PCNSLによる視神経障害の特徴は、以下が挙げられます。
・急速進行性である(日単位での進行) *眼内リンパ腫は緩徐な進行であるのと対称的
・髄液検査で癌性髄膜炎の所見やmiRNAなどのリンパ腫所見を認める場合がある
・頭部MRI検査で造影効果を全例伴う
「PCNSLの初発症状が視神経障害の場合」は診断が非常に難しいです(この7例中2例が該当し、いずれも当初は別の疾患が想起されていた)。多くの場合は視神経症・視神経炎の鑑別から入り、PCNSL以外のcommonな鑑別が多数あるため(MS、NMOSD、虚血性などなど)容易にPCNSLは鑑別から漏れてしまうため、稀ですがきちんと鑑別に入れる点が重要と思います。その他の視神経炎や視神経症と際立って違う点はまだわかりません。
「PCNSL患者が視力低下を呈した場合」は通常眼内リンパ腫病変を想起しますが、「経過が急性」であり「眼内病変を診察上認めない」場合は積極的にPCNSLによる視神経障害を疑うことが重要と思います。
視神経障害でサルコイドーシスと悪性リンパ腫が鑑別となった症例があったため簡単にまとめさせていただきました。