サルコイドーシスによる眼障害としては前部ブドウ膜炎が有名で、脳神経障害としては顔面神経麻痺が有名ですが、ここでは視神経症を取り上げます。基本的には亜急性経過の視神経症の臨床像で52例のサルコイドーシスによる視神経症をまとめた報告の内容をまとめます(Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2016;3:e270)。
視神経症をきたす病態としては視神経自体の炎症、浸潤もしくは圧迫、虚血、髄膜炎症からの視神経周囲炎などが考えられます。
先に特徴をまとめると、亜急性の視神経症の経過が多く、半数以上は視神経症からサルコイドーシスの診断となり(既に全身性サルコイドーシスをもっているのは半数以下)、約1/3の症例で眼内病変を伴っている(通常の視神経炎では認めない所見)、症状は通常の視神経症と大きな違いはなく、髄液所見は正常な場合が多く、ステロイド治療反応性は比較的良い点が特徴として重要と思います。診断の観点は、やはり視神経症からサルコイドーシスの診断に至る場合もあるため、きちんと視神経症の鑑別にサルコイドーシスを入れ原因がわからない視神経症できちんと全身検索もするべきと思います(視神経疾患全般に関してはこちらをご参照ください)。以下で細かい内容をまとめます。
疫学
年齢:42.5歳(20-71歳)、61%女性
33例は視神経症によりサルコイドーシスの診断にいたった(+1例は遅れてサルコイドーシスの診断)。残り18例はすでに全身性サルコイドーシスの診断がついている症例。
診断のための生検部位:28例呼吸器臓器、リンパ節生検3例、肝生検1例、眼生検3例、神経組織生検5例
症状
眼痛:27%
視力:片側障害の場合 0.05(0.0-1.0) 、両側障害の場合 0.13(0-1.0)
視野障害:多くは中心暗点だが、半側視野障害や水平性視野障害もあり
その他:視交叉障害1例、視神経周囲炎2例
眼内炎症所見の併存:36%
眼所見のまとめ
検査
ACE上昇:57% 中央値:111(18-205) U/L (正常範囲 8-50 U/L)
■髄液所見
蛋白上昇(>0.6 g/dL):21% 0.95g/dL (0.79-1.92)
細胞数上昇(>5/mme):15% 19(6-70)
OCB(+): 15%
正常髄液:25/33例
■MRI検査
正常:13例
異常所見が視神経、視神経鞘に限局:20例(うち14例で造影効果を伴う)
視力とMRI所見は相関関係にある。
治療
ステロイド使用(49例):IVMP→経口PSL 14例、当初より経口PSL 35例
免疫抑制剤併用(最初より12例、再発時より導入6例):AZP12例、MMF1例、MTX5例
一般にステロイドの治療反応性は良好で(浸潤性や進行性のものは治療反応性に乏しい)、無治療期間が数週間持続した後でも改善を認めている場合がある。
25%ステロイド漸減中の再発
■視神経炎との違い
視神経症から発症したサルコイドーシスの症例があり、ここにまとめさせていただきました。
参考文献:Neurol Neuroimmunol Neuroinflamm 2016;3:e270