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2020年11月

RIS: radiologically isolated syndrome

RIS(radiologically isolated syndrome)は多発性硬化症らしい白質病変を認めますが、明らかな神経学的な所見や病歴を認めず、またその他のetiologyも特定できない状態をさす表現です。頭痛やめまいの精査目的に頭部MRI検査を実施し偶発的に指摘される機会も増えてきていると思います。2009年にRISという言葉が導入されてからの変遷をまとめます。 定義 ■RISの提唱( […]

G群連鎖球菌 GGS: Group G Streptococcus

先日救急外来で熱源不明で入院となった患者さんの血液培養が4/4本からG群連鎖球菌(以下GGSと略記します)が検出されました。GGSは血液培養からたびたび検出されることがある菌ですが、きちんと調べられていなかったので調べた内容をまとめさせていただきます。 分類 溶血性は「β溶血性」、Lancefield分類ではGに分類され、一般的にはG群連鎖球菌(Group G Streptococcus)と表現さ […]

巨細胞性動脈炎と脳血管障害

巨細胞性動脈炎(GCA: giant cell arteritis)は主にlarge size vesselを障害する血管炎です。先日巨細胞性動脈炎が背景にある患者さんが脳梗塞で入院となり、今まで経験がなかったため既報を調べてみました。 機序 頭蓋内の血管と頭蓋外の血管の違いとして、病理的に頭蓋内の血管は頭蓋外の血管と比較して中膜、外膜の弾性繊維に乏しく、栄養血管であるvasa vasorumを欠 […]

肺炎 Pneumonia

「肺炎」は実臨床でよく遭遇しますが、なんでもかんでも「肺炎」とくくってしまうと適切な診断や治療に結びつかない場合も多々あります。ここであらためて「肺炎」へのアプローチを考えてみます。以下では主に「細菌性」の肺炎を扱います。 病歴 ・まず問診上重要なことは「上気道症状」と「下気道症状」をきちんと分けて問診することです。上気道症状が主体であればもちろん上気道炎らしさが上がるし、下気道症状が主体であれば […]

免疫不全と感染症

免疫不全の分類 免疫不全をただ漠然と「免疫不全」とくくってしまうのではなく、具体的に免疫機序のどの部分が障害されているか?により大きく「好中球減少」・「細胞性免疫不全」・「液性免疫不全」の3通りに分類するとアプローチがしやすくなると思います。以下に免疫不全と対応する病原体の関係をまとめた図を掲載します。 好中球減少 ・好中球減少をきたす原因の代表は白血病、またその治療である骨髄移植です。・原因病原 […]

発熱性好中球減少 FN: febrile neutropenia

悪性腫瘍を扱っていない医師でも救急外来で対応しなければいけないのが発熱性好中球減少です。私自身も経験が多い訳ではないため、この記事ではIDSAのガイドラインに沿ってそのまままとめさせていただきます(参考文献:”Clinical Practice Guideline for the Use of Antimicrobial Agents in Neutropenic Patients w […]

Dandy walker奇形 / Blake’s pouch cyst

病態 Dandy walker奇形は「小脳発生過程での菱脳蓋の先天奇形」が病態です。Dandy walker奇形だけではなく、Blake’s pouch cystも菱脳蓋の先天奇形に該当し、Dandy walker奇形は小脳虫部の形成不全を伴うとされますが、Blake’s pouchでも形成不全を伴う場合があります。これらは完全に区別できるものではなく同一病態のspectrumに属して […]

Fabry病

Fabry病はαガラクトシダーゼA(α-Gal A)の酵素活性低下・欠損によるグロボトリアオシルセラミド(GL-3)のライソゾームへの進行性の蓄積が病態で、全身の細胞にこれらが蓄積することで臓器障害を引きおこいます。αガラクトシダーゼ遺伝子(GLA)はX染色体上に存在するため、X連鎖性劣性遺伝形式をとります(ヘミ接合体)。しかし、実際には女性でも症候性の場合もあります(症候性ヘテロ接合体)。 以下 […]

手術・処置における抗凝固薬の休薬

ここでは手術・処置の前にあたって「抗凝固薬をそもそも中止する必要があるのか?」また中止する場合は「いつから中止する必要があるのか?」、「いつから薬を再開するべきか?」に関してまとめさせていただきます。抗血小板薬の休薬に関してはまた別に記載させていただければと思います。 ■DOACに関して”European heart rhythm association”の2018年gui […]

発汗障害 無汗症・発汗低下

生理と解剖 汗腺の構造 発汗機能を担う構造は汗腺(sweat gland)です。汗腺はエクリン腺(eccrine gland)とアポクリン腺(apocrine gland)の大きく2種類が存在します。前者のエクリン腺は全身に分布し、体温調節を主に担います。後者のアポクリン腺は腋窩など比較的限局した部位に存在し、情動に伴う発汗に関与します。 発汗の機能は1:体温調節のための発汗と2:情動に伴う発汗の […]