手術・処置における抗凝固薬の休薬

ここでは手術・処置の前にあたって「抗凝固薬をそもそも中止する必要があるのか?」また中止する場合は「いつから中止する必要があるのか?」、「いつから薬を再開するべきか?」に関してまとめさせていただきます。抗血小板薬の休薬に関してはまた別に記載させていただければと思います。

■DOACに関して”European heart rhythm association”の2018年guideline European Heart Journal (2018) 39, 1330–1393

このガイドラインの良いところは具体的に「どの処置の出血リスクが少ないか?高いか?」を明確にし、それによるDOACの具体的な休薬方法を提示してくれている点にあります。ACCのガイドでは非常に長い巻物の様な各処置の出血リスク層別化をしているのですが(PDF fileで27ページあります・・・)、これは実臨床では極めて使いにくい印象があります。その点EHRAのガイドラインは実臨床で応用しやすいと思います。

以下が処置ごとの出血リスクで、minor risk, low risk, high riskの3つに分類されます。

この出血リスク(minor, low, high)に応じて以下の様な休薬プランを具体的に提示しています(図がきれいでわかりやすいです)。minor bleeding riskでは休薬は必要なく、low bleeding riskでは基本24時間休薬、high bleeding riskでは基本48時間の休薬とし(実際には腎機能により半減期が変化するため休薬期間は異なります)、ヘパリンブリッジはいずれの場合も必要ないとされています。

抗凝固薬の再開に関しては通常術後6-8時間で再開可能とされていますが、出血リスクが高い手術・処置の場合は48-72時間あけてからの再開をする場合もあります。この点に関しては絶対に何時間あけるというevidenceが存在するわけではなく、各施設ごとにある程度基準やプロトコールを設定しコンセンサスを得ておくことが管理の上でとても重要と思います。

予定の処置や手術は上記の流れで問題ありませんが、緊急での手術や処置が必要となる場合はどうすればよいでしょうか?現実的にはその手術・処置が遅らせることが可能かどうか?そうでない場合は拮抗が可能かどうか?がポイントとなります。

■AHAのscientific statement “Management of Patients on Non–Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants in the Acute Care and Periprocedural Setting” Circulation. 2017;135:e604–e633

ここでは処置・手術による出血リスクをlow, moderate, highの3段階に分類しており(下図参照)、DOACの継続に関してlow risk groupではDOAC休薬は必要なしと判断しています。

以下の様な流れになっています。

■ACC(American college of cardiology)のexpert consensus 2017年 J Am Coll Cardiol 2017;69:871–98.

こちらはACC版になります。上記のEHRAは手術・処置の出血リスクを3つ(minor, low, high)に分類していますが、ACC版では出血リスクを4つ(no, low, uncertain, intermediate/high)に分類した上で抗凝固薬の継続可否を検討しています。

ワーファリンの場合

処置、手術の5-7日前にPT-INRを確認し、この値が治療域以上の場合はすぐにワーファリン中止、治療域内の場合は5日前にワーファリン中止、治療域以下の場合は3-4日前にワーファリンを中止するとされています。

DOACの場合

“no clinically important risk”に該当する場合はDOACの休薬は必要なく、それ以外は”low risk”か?”uncertainもしくはintermediate or highか?”という出血リスクの点とDOACの種類、腎機能によって休薬期間を分けています。ヘパリンブリッジはDOACの場合必要なしとされています。

各DOACと腎機能ごとの休薬期間に関してのまとめ図を掲載します。腎機能が悪化すると半減期も伸びるためより長期の休薬期間が必要となります。

以上処置・手術時における抗凝固薬の休薬・再開に関してまとめました。実際には各施設ごとにこれらを参考にしてプロトコールを作成してコンセンサスを得ることが重要だと思います。

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