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G群連鎖球菌 GGS: Group G Streptococcus

先日救急外来で熱源不明で入院となった患者さんの血液培養が4/4本からG群連鎖球菌(以下GGSと略記します)が検出されました。GGSは血液培養からたびたび検出されることがある菌ですが、きちんと調べられていなかったので調べた内容をまとめさせていただきます。

分類

溶血性は「β溶血性」、Lancefield分類ではGに分類され、一般的にはG群連鎖球菌(Group G Streptococcus)と表現されます。GGSは皮膚、鼻咽腔、膣などの常在菌とされています。連鎖球菌は分類がややこしいため下図のまとめをご参照ください。

*SDSE = Streptococcus dysgalactiae subsp. equisimilis

臨床像

以下の内容は主にマンデルの教科書より引用させていただきました。

咽頭炎
・GASでの咽頭炎が有名なように、GCS、GGSによる咽頭炎もあります。咽頭でGGSのasymptomatic carrierが23%いるとも報告されています。臨床像はGASによる咽頭炎と区別がつかないとされています。

皮膚軟部組織感染症
・蜂窩織炎の原因としてGGSの方がGASよりも多いという報告もあります(Clin Infect Dis. 2008;46:855-861.)。
・また後述の菌血症のエントリーとなりうる点でも重要です。

化膿性関節炎
・非淋菌性の化膿性関節炎のうちβ溶血性連鎖球菌は11-28%を占めるとされており、GASが最も多く次にGGSが原因菌として多いとされています(Rev Infect Dis 1990;12:829)。

菌血症
・GGSはβ溶血性溶連菌による菌血症原因の8-11%を占め、また背景に悪性腫瘍を21-65%で認めると報告されています。
・Mayo clinicからの報告ではGGS菌血症は全菌血症の0.3%を占め、またβ溶血性連鎖球菌による菌血症のうち10.8%を占めると報告されています(Rev Infect Dis 1983;5:196)。
・菌のエントリーとしては皮膚の常在菌でもあることから皮膚が多いです。

■GGS菌血症患者84例retrospectiveまとめ Emerg Infect Dis. 2004;10:1455

患者背景は年齢中央値62歳(2-92歳)、背景疾患は糖尿病35.1%、悪性腫瘍35.1%と報告されています。感染臓器としては蜂窩織炎59.6%、原発性の菌血症19.1%、皮膚軟部組織感染4.3%、骨感染症4.3%、感染性心内膜炎3.1%、呼吸器感染3.1%と報告されており、やはり皮膚軟部組織感染(特に蜂窩織炎)、sourceが特定できない菌血症が多く、感染性心内膜炎もある点に注意が必要と思います。

また繰り返すGGS菌血症6例はいずれも”chronic regional lymphatic abnormalities”が背景にあったと報告されています。

感染性心内膜炎
・GCS/GGSは感染性心内膜炎起炎菌の1%未満を占め、8.4%はβ溶血性連鎖球菌によるとされています。4705例の感染性心内膜炎の検討ではβ溶血性連鎖球菌が起炎菌が3.5%(166人)あり、そのうちGCSが8例、GGSが14例であったと報告されています。
・GGSによる感染性心内膜炎は高齢者の基礎疾患が複数ある人に起こりやすく、発症が急激で、弁破壊・弁周囲感染・播種性病変をよく認めるとされています。

*参考:Streptococcus属による感染性心内膜炎の頻度 Circulation. 2020;142:720–730.

髄膜炎
・いくつか髄膜炎の症例が報告されており、特に感染性心内膜炎と関連が大きいとされています。

肺炎
・GGSによる肺炎はまれとされています。

治療

抗菌薬はその他の連鎖球菌と同様ペニシリンGが第1選択薬です。

参考文献:マンデルの教科書より