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2020年9月

FAP: familial amyloid polyneuropathy 家族性アミロイドポリニューロパチー

病態 FAP(familial amyloid polyneuropathy):家族性アミロイドポリニューロパチーはアミロイドが末梢神経を含む全身の臓器に沈着する遺伝性の疾患です。 アミロイドの前駆蛋白により分類され、transthyretin(TTR)、apolipoprotein A-1、gelsolinが挙げられます。この中で最も頻度が多いのはFAP ATTR Val30Metで、アミノ酸配 […]

Sjogren症候群と末梢神経障害

Sjogren症候群に伴う末梢神経障害は神経内科医にとって治療に難渋することも多く、長くつきあっていく疾患でもあります。ここでは末梢神経障害のみをまとめます。 病型 具体的な取りうる末梢神経障害のパターンに関して、92例のシェーグレン症候群による末梢神経障害をまとめた論文(Brain 2005;128:2518)から引用させていただきます。 ■疫学・76例女性、16例男性 平均59.7才・93%は […]

異常蛋白血症に伴う末梢神経障害 Paraproteinemic neuropathy

異常蛋白血症(paraproteinemia)とは? まず基本的なおさらいですが、形質細胞由来の免疫グロブリンはHeavy chain(H鎖)とLight chain(L鎖)の2つから構成されています。H鎖はIgG,IgA, IgM, IgD, IgEの5種類があり、L鎖はκとλの2種類があります。これらが組み合わさることで免疫グロブリンを構成しています。そして、このうちある一種類の免疫グロブリン […]

CANVAS: Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexia syndrome

病態 Cerebellar ataxia with neuropathy and vestibular areflexiasyndrome(CANVAS)は両側の前庭機能障害,小脳失調、感覚神経障害の3徴とする症候群で報告されたものです。2011年に疾患概念が提唱されまだ歴史の浅い疾患です(Neurology 2011;76:1903-1910.)。 遺伝子としては4p14に存在するRFC1(re […]

POEMS症候群

病態 POEMS症候群(Polyneuropathy, Organomegaly, Endocrinopathy, M protein, Skin changes)は形質細胞腫を背景とした多臓器疾患で、VEGF(vascular endothelial growth factor)血管内皮増殖因子の過剰産生が関与しています(Crow-深瀬症候群)。VEGFは骨髄の形質細胞由来であることが指摘されて […]

胸髄病変の神経診察

頚髄領域、腰髄領域はそれぞれ手、足があるので運動障害によるレベルの同定がやりやすいですが、胸髄領域は運動からのレベルの同定が難しいです。ここでは胸髄病変によるレベルの同定に役立つ神経診察を紹介します。 Beevor徴候 Beevor 徴候とは,「仰臥位になった患者の頭部を挙上させると臍が上方へ移動する現象」を表します。正常では頭部を挙上させようとしても臍の位置は変わりません。これは上部腹直筋と下部 […]

ベーカー嚢胞 Baker’s cyst

病態 ベーカー嚢胞は膝窩に位置する半膜様筋と腓腹筋の滑液包が拡大したものです(このように厳密には滑液包なので嚢胞という名称は正確ではありません)。半腱様筋と腓腹筋の間から滑液包が拡大して後方に広がることで臨床的には膝窩の嚢胞として認識します。この滑液包は通常膝関節の関節腔と連続しています。下図にイラストをまとめました。 以下に自験例のベーカー嚢胞の画像を掲載します(膝後面を写したものです)。 疫学 […]

PLS: primary lateral sclerosis 原発性側索硬化症

恥ずかしながら私はまだPLSを診断したことがありません。最近本疾患を外来で疑うことがあったため勉強した内容をまとめます。ほとんどの内容をPract Neurol 2020;20:262–269より引用させていただきました。 病態 PLS(primary lateral sclerosis)は孤発性、緩徐進行性の純粋な上位運動ニューロン兆候を主体とした変性疾患です。MND(motor neuron […]

胆嚢炎

私は消化器内科医や外科医ではないため、そこまで多くの胆嚢炎症例を経験しているわけではないですが救急外来などでよく出会いますし、また入院中の腹痛の鑑別として重要なためここでまとめさせていただきます。 病態と臨床症状 胆石の影響などで胆嚢内に胆汁がうっ滞し、そこに腸内細菌が2次的に感染をきたすことが胆嚢炎の機序になります。おおまかには虫垂炎と同じような機序なので、閉塞による内蔵痛(限局しない腹痛・ただ […]