胆嚢炎

私は消化器内科医や外科医ではないため、そこまで多くの胆嚢炎症例を経験しているわけではないですが救急外来などでよく出会いますし、また入院中の腹痛の鑑別として重要なためここでまとめさせていただきます。

病態と臨床症状

胆石の影響などで胆嚢内に胆汁がうっ滞し、そこに腸内細菌が2次的に感染をきたすことが胆嚢炎の機序になります。おおまかには虫垂炎と同じような機序なので、閉塞による内蔵痛(限局しない腹痛・ただ間欠的ではない)→嘔気(げーげー嘔吐することは臨床的にはそこまで多くない印象)→右上腹部・季肋部痛(ここで典型的な右季肋部の体性痛に)という経過をたどることが一般的です。下図にまとめます。

研修医の先生を救急外来で指導していて、よくあるのは初期の胆嚢炎で「上腹部痛で右季肋部を痛がっていないので胆嚢炎は否定的と思います」というプレゼンテーションを受けることです。これは初期には内蔵痛で局在のはっきりしない腹部正中に疼痛を認めることがよくあるので間違いです。

姿勢と疼痛の関係では胆嚢炎は前傾姿勢で悪化する場合があります。

胆石発作との鑑別も難しいですが、胆嚢炎になるためには胆石がはまり込んでから3時間は経過しないといけないと私は習いました(耳学問で裏を文献的にとれておらず申し訳ございません)。

嘔気に関しては嘔気はありますが、嘔吐が主体になることは基本的に少ないです(自験例でも嘔吐が主訴になったことは少ない印象です)。これは胆管炎では嘔吐が主体となりうることと対照的と思います。

また右背部痛関連痛としてよく認めます。先日も右背部痛の胆嚢炎を経験しましたが、肩甲骨下あたりに比較的狭い範囲で認め、圧痛はなく、深吸気時痛はなく、介達痛などもありませんでした。やはり放散痛らしい所見であることから疑うことが重要と思います。背部痛は自覚していないけれどclosed questionで聞くと聞き出せる場合も時々あります。

胆嚢炎は救急外来での腹痛鑑別として重要ですが、入院中患者の「発熱」、「腹痛」の鑑別としても非常に重要です。私は入院患者の食後発熱の鑑別に「誤嚥性肺炎」だけでなく、必ず「胆嚢炎」を入れるようにと習いました(“7D”の”Debris”に該当します 入院中患者さんの発熱に関してはこちらをご参照ください)。確かに高齢者で疼痛の訴えがはっきりしない場合に、発熱だけが目立ちよく診察すると右季肋部で圧痛がある症例もあります。入院中患者さんは絶食になっていることが多く胆汁がうっ滞しやすい環境にあり、また臥位も胆嚢炎発症のリスクとなるためリスクが多いことがわかります。

検査結果

よく「胆嚢炎でAST、ALT、Bilなどが上昇する」と思っている先生が多いですが、それは間違いで「胆嚢炎では通常AST、ALT、Bilなどは上昇しません」。胆嚢炎で胆嚢に炎症が限局している限りは肝臓から総胆管の胆汁の流れに支障は出ないため、Bilは上昇しません(下図参照)。胆管炎では確かにAST、ALT、Bilなどが上昇しますが、これは胆管の問題だからです。この点をごちゃ混ぜにしないようにしましょう(つまり採血検査が胆嚢炎の診断に寄与することはありません)。

胆嚢炎でBilが上昇するのは1:Mirizzi症候群併発、2:敗血症、3:胆嚢炎の穿孔(胆汁が漏れ出して再吸収されるため)の3パターンです。Bilが上昇している方がおかしいという視点で胆嚢炎へアプローチします。

画像検査

胆嚢炎の診断で一番重要なのは「エコー検査」です(私は研修医のときに放射線の先生にいつも「胆嚢炎はエコーで診断する疾患だから」と何度も教わっておりました)。コレステロール結石は胆汁と同じCT値(胆汁のCT値:0-25HU)なのでCT検査ではうまく映りませんが、エコー検査では”acoustic shadow”を呈するのできちんと描出することが出来ます。もちろん胆石がただ存在しているだけでは胆嚢炎ではなく、やはり頸部に嵌頓している所見があると胆嚢炎らしいとなります(が私のような素人にはなかなか描出が難しい場合も多いです・・・)。

胆嚢壁の肥厚4-5mm以上で胆嚢炎を示唆する所見です。胆嚢腫大や胆嚢のくびれが消失しえていることも参考所見として重要です。

研修医の先生を指導していてよくあるのは「季肋部からのアプローチ」でよく胆嚢が見えない場合に早めにあきらめてしまうことです。季肋部から見えづらいことはよくあり、「肋間アプローチ」を積極的に行うことが重要です(以下自験例のエコー所見と造影CT検査所見)。

実際には処置をしてくださる先生方の間で胆嚢の形状や部位の共有のために造影CT検査を撮像することも多いですが、できればまずはエコーで診断したいです。

とはいっても、実際「これは胆嚢炎なのか?」と悩む症例は多々あります。実際に消化器科の先生がPTGBDをしてくださって、胆汁の性状から判断してくださるケースもあります。

治療

抗菌薬外科的ドレナージもしくは胆嚢摘出が治療の基本となります。

抗菌薬は通常嫌気性菌カバーも含めてセフメタゾールやアンピシリン・スルバクタムなどを使用する場合が多いと思います。

PTGBDでまず対応するか?すぐ手術するか?、また消化器科がまず診療するか?腹部外科が診療するか?は病院によってかなり異なります(私自身もどちらのパターンの病院で勤務したことがあります)。治療の細かい点に関しては私も専門外ではありますので省略させていただきます。

最近神経内科関連のテーマばかりで申し訳ございません・・・。

参考文献:ブラッシュアップ急性腹症 著:窪田忠夫先生 素晴らしすぎる名著です。

“胆嚢炎” への2件の返信

  1. ありがとうございます。以下の疾患の理解ができていないので、もし紹介して頂く機会があればお願いします!
    原発性胆汁性胆管炎
    自己免疫性肝炎
    原発性硬化性胆管炎

    1. コメント頂き大変有り難うございます。
      私も先生にご指摘頂いた疾患の臨床的な特徴の理解が浅いので勉強させていただきます。
      ご依頼大変有り難うございます!

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