末梢神経障害を起こす原因をまとめます。過去にまとめた記事も多いのでそれはリンクとして掲載されていただきます。末梢神経障害一般に関してはこちらもご参照ください。
自己免疫機序
GBS
こちらをご参照ください
CIDP
こちらをご参照ください
MMN
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血管炎性ニューロパチー
こちらをご参照ください
シェーグレン症候群
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遺伝性
CMT Charcot-Marie-Tooth病
病態:遺伝性ニューロパチー・脱髄型の典型例 HMSN(hereditary motor and sensory neuropathy)
臨床像:遠位優位(length-dependent)の障害・慢性緩徐進行性の経過 *pes cavus(high arch), hammer toe(下図参照) *患者はある動作が出来なくなると亜急性の経過で病歴を話す場合があるが、それ以前の慢性経過が日常生活に影響を与えていないと話していないだけの可能性があり注意
軸索 or 脱髄型の分類:正中神経MCV38m/secが基準
遺伝形式による分類 *家族歴ない場合あり
AD:CMT1, CMT-DI, CMT2
*CMT1A(最多): PMP22(peripheral myelin protein 22)重複による(外注検査FISH法保険適応)
*CMT1B:遺伝子MPZ(myelin protein zero)
AR: CMT4, CMT-RI,
X:CMTX 遺伝子: GJB1 Connexin32(Schwann細胞だけでなくオリゴデンドロサイトにも発現している) 画像:半卵円中心・脱髄所見を呈する場合あり
神経伝導検査:どこもMCV低下が均一な分布となる(金太郎飴)
*CIDPでは部位により速度がばらばらになる点・伝導ブロックを認める点と対照的
*特に刺激閾値が上昇するためきちんと最大上刺激を得ることが重要(脱髄では閾値がずるずる上昇する場合があり注意が必要)下図引用元:CONTINUUM (MINNEAP MINN)2020;26(5, PERIPHERAL NERVE AND MOTOR NEURON DISORDERS): 1224 – 1256.
HNPP: hereditary neuropathy with liability to pressure palsy 遺伝性圧脆弱性ニューロパチー
遺伝形式:AD
遺伝子:PMP22の欠失または点変異による *病理のときほぐし標本ではtomacula(ソーセージ様の髄鞘の肥厚)が特徴的な所見
PMP22 4回膜貫通型膜蛋白:Schwann細胞の髄鞘蛋白を構成する重要なたんぱく質
臨床像:common compression siteでの繰り返す発作性の脱髄性ニューロパチー(絞扼性)
初回は10歳代に多い・数か月以内に改善する場合が多い
治療:保存的
下図引用元:CONTINUUM (MINNEAP MINN)2020;26(5, PERIPHERAL NERVE AND MOTOR NEURON DISORDERS): 1224 – 1256.
Paraprotein関連
POEMS症候群
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MAG抗体関連ニューロパチー
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代謝
糖尿病性ニューロパチー
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ビタミンB12欠乏
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ポルフィリン症
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アルコール性ニューロパチー
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*中毒性ではアルコール性と化学療法が原因として最多
中毒
ヒ素中毒 Arsenic poisoning
・原因:自殺他殺目的・殺虫剤(基本的には使用されない)・地下水の汚染(特にバングラデシュ)など
・経路:消化管(90%以上)・吸入・慢性では皮膚からの吸収もある
*歴史的には暗殺手段として使用されていたことがある(白色無味無臭であるため毒薬と分かりづらい)
*日本での事件例:和歌山毒物カレー事件、森永ヒ素ミルク中毒事件
・急性ヒ素中毒:消化管(嘔気、嘔吐、腹痛、下痢)→脱水・QT延長・心機能障害
・慢性ヒ素中毒:末梢神経障害(polyneuropathy(・皮膚障害(発癌性・爪のMees lines)
*Mees line:爪甲を横断する1本の白線(爪の成長障害)→爪の成長と伴に末梢へ移動し消える 原因多数あり
有機水銀(メチル水銀化合物)
・原因:海産物(河川による汚染)
・Hunter-Russell症候群:末梢神経障害、小脳性運動失調、難聴、振戦、求心性視野狭窄
無機鉛(Pb)中毒 lead poisoning
・原因:工場(印刷・蓄電池・加工塗料)・はんだ付け作業
*かつては白粉(おしろい)に使用されていた時代もあるそうです
*1995年から水道管への鉛使用は全面的に禁止 自動車用のガソリンも鉛含有は禁止(全て無鉛ガソリン)
・臨床像:運動神経優位の末梢神経障害(橈骨神経麻痺によるdrop handが教科書的には有名)・消化管では腹痛(鉛疝痛)・ヘモグロビン合成阻害(有核赤血球・好塩基性斑点)
*おばやの手が垂れているのは鉛中毒といううわさがあります・・・・。
薬剤性
化学療法
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その他
・ビタミンB6(ピリドキシン)過剰:サプリメントなどによる(通常の食事で欠乏することはまれ) 推奨量~2mg/日
・アミオダロン:振戦・小脳失調・視神経症・末梢神経障害 開始から週~月単位後に発症 遠位・運動感覚神経いずれも障害される
・ダプソン・Nitrofurantoin・Disulfiram(禁酒):運動障害起こりやすい
・抗HIV治療薬:HIV患者の10-35%にpolyneuropathy発症する
・イソニアジド:ビタミンB6欠乏による(予防可能)
・リネゾリド
・メトロニダゾール:burning pain(疼痛性)・長期間(≧4週間)投与で発症しやすい メトロニダゾールに関してはこちら
・TNF阻害薬
・IFNα:CIDP様の報告あり
浸潤・炎症
アミロイドーシス
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サルコイドーシス
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参考文献
Smyth D, Kramarz C, Carr AS, et al. Pract Neurol 2023;23:120–130. “toxic neuropathy”に関する素晴らしいreview article