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2021年

進行性多巣性白質脳症 PML: progressive multifocal leukoencephalopathy

病態 ・JCVは多くの場合(日本は70%以上)既感染(腎臓・脾臓・骨髄)で、免疫低下に伴いウイルスが増殖すると脳へ血行性感染をきたし、中枢神経に脱髄をきたし、不可逆的な障害をきたす病態です(その他JCVによる中枢神経障害にはJCV髄膜炎、JCV 脳症、JCV小脳顆粒細胞障害がありますがここではPMLのみを取り上げます)。免疫抑制を扱うすべての科で重要なテーマです。 原因 ・HIV感染症による免疫不 […]

ギランバレー症候群と味覚障害

先日診療したギランバレー症候群(疑い)の患者さんに味覚障害が出現し、自験例で一度も経験がなかったため文献を調べてみました(ギランバレー症候群の総論に関してはこちらをご参照ください)。ギランバレー症候群での味覚障害を認めるのは0.6-2%と比較的稀とされています(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1988;51:605–612.)。顔面神経のほとんどは大径有髄繊維ですが、味 […]

フィンゴリモド fingolimod

薬剤/機序 商品名:ジレニア、イムセラ 製剤:0.5mg/カプセル投与量:0.5mg 1Cp1x 経口薬(経口薬のDMDとしての承認初)*基本的にこの投与方法(0.5mg/日)しか日本では認可がありません。 作用機序:S1P(スフィンゴシン-1-リン酸:sphingosine-1-phosphate)受容体に作用し、リンパ球遊走を阻害する作用があるとされています。S1Pはリンパ節でのT細胞のS1P […]

妊娠と多発性硬化症

多発性硬化症は若い女性の患者さんも多く妊娠との関係が重要なテーマです。ガイドラインの内容をなぞることが多くて恐縮ですが、内容をまとめます。 妊娠・出産のMS病勢への影響 1:再発に関して・妊娠中は再発率は低下するが、出産後3か月は再発リスクが最も高くなる(下図引用:”The PRIMS Study” :254人/269回の妊娠に関してのフォローアップ:N Engl J Me […]

本態性振戦 ET: essential tremor

本態性振戦は日常臨床でよく遭遇しますが、「原因のわからない振戦」のごみ箱診断名にならないように注意が必要です。正直初診時は他疾患かどうかわからない場合も多いためフォローでの経過がやはり一番重要なのかと思います(一度カルテに本態性振戦と診断名を記載してしまうとどうしても思考停止してしまうことがあり反省です)。振戦全般の鑑別に関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。 臨床像 ・左右対称性:片側 […]

薬剤性パーキンソニズム drug-induced parkinsonism

精神科の先生方と神経内科医がよく診療するのが薬剤性パーキンソニズムです。原因薬剤を中止してもすっと改善しない場合もあり、背景にパーキンソン病が合併しているのかどうか悩むことも多いですが近年はDAT scanの登場によりこの点に関して判断が少ししやすくなっています。過去の文献での臨床像は純粋な薬剤性パーキンソニズムと、パーキンソン病が背景にある薬剤性パーキンソニズムが混ざっているため解釈には少し注意 […]

薬剤性振戦 drug-induced tremors

日常遭遇することの多い(神経内科のコンサルテーションでも非常に多いです)薬剤性振戦に関してまとめます。振戦一般に関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。今回は Lancet Neurol 2005; 4: 866–76 の内容をまとめたものですが、古い文献が多く引用されておりダウンロードできなかった文献が多く、引用として引かれている文献名をそのまま掲載しているものも多いです。申し訳ございま […]

無菌性髄膜炎 aseptic meningitis

無菌性髄膜炎に関しては経験を積むにつれて一筋縄ではいかずに迷うことが多いです。勉強した内容と日常臨床で特に感じる点に関してまとめます。細菌性髄膜炎に関しては別にまとめておりますのでこちらをご参照ください。 ポイント 1:「無菌性髄膜炎」≠「ウイルス性髄膜炎」・無菌性髄膜炎はあくまで髄液に菌体が証明できない髄膜炎の「総称」であり、ウイルス性髄膜炎と同義ではない(その他薬剤性、自己免疫性など様々な原因 […]

wide QRS tachycardia

ポイント ・ABCを確認する。循環動態が安定していたとしてもすぐに電気的除細動が出来るような準備をしておく(当初は安定していても、急激に血行動態が不安定になる場合があるため)。12誘導心電図も除細動パッドを貼った状態で記録する。・無脈性心室頻拍(pulseless VT)の場合は心肺蘇生に準じて(こちらを参照)すぐに除細動と胸骨圧迫が必要。・原因は心室頻拍もしくは上室性頻拍(前者が圧倒的に多い)。 […]

急性冠症候群 ACS: acute coronary syndrome

病態/分類 ・ACS(acute coronary syndrome:急性冠症候群)は冠動脈のプラーク破綻とそれに伴う血栓形成により冠動脈内腔が急速に狭窄、閉塞し、心筋が虚血、壊死に陥る病態を示す症候群。閉塞・狭窄をきたすことで心筋虚血に陥る病態。・UAP, NSTEMI, STEMIに分類され、心電図変化の有無と心筋逸脱酵素上昇の有無から分類します。・徐々に冠動脈に狭窄をきたす労作性狭心症とは異 […]