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ギランバレー症候群と味覚障害

先日診療したギランバレー症候群(疑い)の患者さんに味覚障害が出現し、自験例で一度も経験がなかったため文献を調べてみました(ギランバレー症候群の総論に関してはこちらをご参照ください)。ギランバレー症候群での味覚障害を認めるのは0.6-2%と比較的稀とされています(J Neurol Neurosurg Psychiatry 1988;51:605–612.)。顔面神経のほとんどは大径有髄繊維ですが、味覚を伝える鼓索神経は小径有髄繊維で同神経は脱髄による障害を受けにくいことが原因と考察されています。電気味覚検査を行えば客観的な評価が可能ですが、多くの場合味覚障害は自覚症状なので客観的判断が難しい場合も多いです。

■味覚障害が初発のギランバレー症候群 Neurology. 2002 May 14;58(9):1437-8. *日本からの報告

457例のギランバレー症候群で5例で味覚障害を認め、うち3例は味覚障害が初発症状。
その他のギランバレー症候群で味覚障害が初発の報告:Clin Neurol Neurosurg 1990;92:75–79. Neurology 1996;47:1604–1605.Letter.

■ギランバレー症候群での味覚障害/電気味覚検査での精査 Journal of the Peripheral Nervous System 16:270–271 (2011) *日本からの報告

■Miller Fisher症候群での報告 Neurol Sci (2015) 36:809–810 *日本からの報告

ギランバレー症候群よりMiller Fisher症候群の方がより味覚障害は稀とされています。その他の顔面神経麻痺を合併せずに味覚障害のみを伴う症例が報告されています。この文献で報告されている症例は味覚障害が初発症状となっています。

■MFS味覚障害の症例報告 Intern Med 51: 2977-2979, 2012 *日本からの報告

上図の2番目に報告されている症例報告です。これは味覚障害が初発ではなく、眼瞼下垂や深部腱反射消失と同時期に出現して改善している経過です(下図に経過図を本文より引用させていただきました)。

味覚障害があればギランバレー症候群らしい、らしくないというclinical judgementに役立つだけの力がある所見ではないかもしれないですがこれから注意して診察していこうと思います。