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村上春樹「夏帆」 川上未映子「わたしたちのドア」 新潮2024年6月号 創刊120周年記念特大号 特集 春のみみずく朗読会

先日村上春樹さんと川上未映子さんによる朗読会「春のみみずく朗読会」が早稲田大学大隈講堂で開催され、そこでお二方がそれぞれ新作の短編小説を朗読されました(その際の体験談はこちらに記載させていただきました)。そこで朗読された小説が今月号の新潮に収載されています。私は普段「新潮」のような文学誌は全く読まず・・・、純粋にお目当ての村上春樹、川上未映子の作品が収録されているため購入したのですが、今回は新潮120周年記念特大号ということで文学にうとい私でも知っている多くの方が書かれていらっしゃりとても豪華な内容です。

自分は今まで小説を本で読むよりも先に朗読で内容を知る経験がなかったので、今回新鮮な気持ちで作品を読むことができました。読んでいる最中、朗読されていた村上春樹さんと川上未映子さんの声や表情、仕草の記憶が蘇ってきて、「あっここではこういう読み方をされていたな」という細かいことも思い出しながら読み進めました。村上春樹さんは時折前を向いて原稿から目を離して話すことがあり、「あっ!そうだここで村上春樹さんは原稿から顔を上げて話していたな」と思いだすこともあり、朗読の音だけでなく視覚的な効果も感じました。

また朗読の方が本で読むときとよりも小説中の風景が「より立体的に彩られて目の前に立ち上がる」ということにも驚きました。これは川上未映子さん「ヘヴン」の朗読で特に強く感じました。「ヘブン」は元々本で読んでおり内容は知っていたのですが、「本で読んだ時はこんな風景を目にすることができなかったのに、なぜ朗読だとこのような新しい景色を見ることができるのだろう」と不思議に感じると同時に感動しました。

もしかしたら活字を目で追うスピードが心の中で小説中の情景を立ち上げていく作業(レンガをせっせと積み上げていくように)のスピードより速いため、作業が追いつかないためかもしれません。

その分朗読はしっかり時間をかけてレンガを積み上げていき情景を立ち上げていくので、より鮮やかで彩り豊かな風景が見えるのかもしれません。

今回耳で聞いた朗読の内容を改めて活字として眼で追いかけることによって朗読の新たな楽しみ方を知ることができました。村上春樹さん、川上未映子さんのファンとしては是非また朗読会を開催して頂きたい限りです。