注目キーワード

フィンゴリモド fingolimod

薬剤/機序

商品名:ジレニア、イムセラ 製剤:0.5mg/カプセル
投与量:0.5mg 1Cp1x 経口薬(経口薬のDMDとしての承認初)
*基本的にこの投与方法(0.5mg/日)しか日本では認可がありません。

作用機序:S1P(スフィンゴシン-1-リン酸:sphingosine-1-phosphate)受容体に作用し、リンパ球遊走を阻害する作用があるとされています。S1Pはリンパ節でのT細胞のS1P受容体に働きかけてT細胞を活性化/分化させる作用がありますが、フィンゴリモドはT細胞のS1P受容体をdown regulateすることでT細胞の遊走を減少させると考えられています(下図引用元:N Engl J Med 2012;366:339-47.)。

特徴/適応

RRMS:第2選択薬(1st-lineではない)→疾患活動性が高い場合は他剤に優先して使用する場合もある
 *再発抑制(約50%)、身体障害進行抑制(約30%)、脳萎縮抑制、画像活動度抑制(約80%)いずれも効果あり(IFNβよりも効果高い)
 *中止時のリバウンドは懸念としてあり
JCV合併例の報告あり(IFNβ, GAでは報告なし)
抗AQP4抗体陽性例:投与不可(増悪が報告されている)
・脊髄長大病変を有する患者は国内の臨床試験では除外されていたため有用性・安全性は確立していない
・PPMSに対しては有用性確率していない
・妊婦:安全性確立していないため禁忌(妊娠と多発性硬化症に関してはこちらを参照)・妊娠を計画する場合は妊娠2か月前までに薬剤中止する

副作用

徐脈性不整脈(1-3%):心拍数低下の可能性あり、初回投与後6時間は心電図モニター管理が必要(基本は入院で導入)→徐脈が検出される場合は中止する *Ⅰ・Ⅲ群抗不整脈薬は併用禁忌
肝逸脱酵素上昇:安定した後も3か月おきに採血フォロー必要
黄斑浮腫:眼科コンサルト→投与開始3か月後、その後6か月おき *眼科医と連携が十分にとれることが施設要件となっている
・悪性腫瘍合併リスク:皮膚がん、乳がんのリスク?

投与開始前のチェック項目

・抗AQP4抗体
・採血検査:リンパ球数・肝逸脱酵素
帯状疱疹ウイルス(VZV)抗体価:もしも抗体陰性の場合は導入1か月前にワクチン接種
・心電図:QT延長は慎重投与項目
・内服薬剤:徐脈になる薬剤(β遮断薬, CCB)は慎重投与 *併用禁忌:抗不整脈薬classⅠ、Ⅲ・生ワクチン
眼科受診(糖尿病・ぶどう膜炎の既往がある場合は事前に必要):黄斑浮腫の有無 OCTでの確認が必要
・妊娠の有無

投与開始後のチェック項目

・採血検査:リンパ球(<200/μLは中止基準)・肝逸脱酵素などをフォロー 安定後は3か月おき
・眼科受診:投与開始3-4か月後
*糖尿病、ぶどう膜炎既往の場合は1,3,6か月後(その後は6か月おき)の眼科受診が必要
・血圧測定:安定後は3か月おき

■投与中止基準
リンパ球<200/μL以下:薬剤を継続したまま約2週間後再度採血検査を行い2回連続でリンパ球<200/μLの場合は薬剤投与を中止(リンパ球数>600/μLまで回復することを確認して再開するかどうか検討)
感染症:投与禁忌に該当
妊娠:投与禁忌に該当

他剤へ/からの切り替えと休薬期間

1:他剤→フィンゴリモドへ切り替える場合
ナタリツマブ、免疫抑制剤使用後:3か月以内のフィンゴリモド投与は避ける(MTX, cyclophosphamideなど免疫抑制の程度が強いばあいはそれらの薬剤使用後6か月の休薬が必要)
グラチラマー酢酸塩、IFN-β使用後:フィンゴリモド開始までの休薬必要なし

2:フィンゴリモド→他剤へ切り替える場合
・フィンゴリモドを2か月休薬後に開始するべき

フィンゴリモドの臨床試験

■FREEDOMS試験 N Engl J Med 2010;362:387-401.

・海外第Ⅲ相試験 プラセボ対照・無作為化・二重盲検比較試験 24か月
・inclusion criteria:RRMS(McDonald基準を満たす)、18-55歳、直近1年以内に1回もしくは直近2年以内に2回以上の再発、EDSS=0-5.5
・ジレニア0.5mg :425例 ・ジレニア1.25mg :429 例 ・プラセボ:418例
・患者背景(平均):年齢38歳、発症から割り付けまで8年、直近の再発 1.5/1年、2.1/2年、EDSS:2.4前後
・結果

■TRANSFORMS試験  N Engl J Med 2010;362:402-15.

・ 海外第Ⅲ相試験  実薬対照・無作為化・二重盲検比較試験 12か月
・inclusion criteria:RRMS(McDonald基準を満たす)、18-55歳、直近1年以内に1回もしくは直近2年以内に2回以上の再発、EDSS=0-5.5 *過去にIFNβ、GAを使用したことは除外基準ではなし
・ジレニア0.5mg :429 例 ・ジレニア1.25mg ※ :420 例 ・IFNβ-1a 30μg 筋注:431例
・患者背景(平均):36歳、発症から割り付けまでの期間7.4年、直近の再発1.5/1年、2.3/2年、EDSS:2.1前後
・結果

参考文献
・ジレニア適正使用ガイド:ノバルティスファーマ株式会社