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妊娠と多発性硬化症

多発性硬化症は若い女性の患者さんも多く妊娠との関係が重要なテーマです。ガイドラインの内容をなぞることが多くて恐縮ですが、内容をまとめます。

妊娠・出産のMS病勢への影響

1:再発に関して
妊娠中は再発率は低下するが、出産後3か月は再発リスクが最も高くなる(下図引用:”The PRIMS Study” :254人/269回の妊娠に関してのフォローアップ:N Engl J Med 1998;339:285-91.)。出産後1年で妊娠前の年間再発率に戻る。

2:疾患進行に関して
・経産婦の方が未経産婦と比較して進行が抑制される(下図引用:J Neurol Neurosurg Psychiatry 2010;81:38–41.)

MSでの出産による子供への影響

・MS患者さんが流産が多くなることはなく、出産した子供の体重、先天性奇形などの確率は健常者と変わらない。

妊娠と薬剤選択に関して

グラチラマー酢酸塩(GA: glatiramer acetate):最も安全 日本の添付文書「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与」 *グラチラマー酢酸塩に関してはこちらをご参照ください。
ナタリズマブ:日本の添付文書「治療上の有益性が上回る場合にのみ投与」
IFNβ:妊娠判明後直ちに中止 *IFNβ製剤に関してはこちらをご参照ください。
フィンゴリモド禁忌・妊娠前2か月間の休薬が必要(授乳も避ける必要あり) *フィンゴリモドに関してはこちらをご参照ください。
フマル酸ジメチル: 日本の添付文章「治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合のみ投与(妊娠中の投与に関する安全性は確立していない)」 *フマル酸ジメチルに関してはこちらをご参照ください。

*下図:既報のまとめ(赤/青は管理人の追記 引用:Neurology ® 2012;79:1130–1135)

妊娠中の検査に関して

MRI自体の安全性に関して:器官形成期の妊娠第1三半期以内は行わない(これまでMRI検査での胎児への有害事象の報告はないが)
Gd造影剤に関して:Gd造影剤は胎児へ移行するため使用しないように推奨(Gd造影剤は妊婦と胎児に対する安全性は実証されていない・授乳はGd投与24時間は控える)


参考文献
・多発性硬化症・視神経脊髄炎 診療ガイドライン2017 日本神経学会