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wide QRS tachycardia

  • 2021年8月14日
  • 2024年11月4日
  • 循環器

narrow QRS tachycardiaについてはこちらを参照。

ポイント

・ABCを確認する。循環動態が安定していたとしてもすぐに電気的除細動が出来るような準備をしておく(当初は安定していても、急激に血行動態が不安定になる場合があるため)。12誘導心電図も除細動パッドを貼った状態で記録する。
・無脈性心室頻拍(pulseless VT)の場合は心肺蘇生に準じて(こちらを参照)すぐに除細動と胸骨圧迫が必要。
・原因は心室頻拍もしくは上室性頻拍(前者が圧倒的に多い)。両者の鑑別は一見難しい場合も多く、最初は「心室頻拍」として対応し、循環器医と相談する。

原因

1.上室性頻拍
・脚ブロック(心室内変行伝導を含む)
・副伝導路を介した上室性頻拍

2.心室頻拍→原因として多く、わからなければまず心室性頻拍として対応する

■上室性頻拍と心室性頻拍の鑑別方法
Brugadaアルゴリズム(Circulation 1991;83:1649)が鑑別方法として有名であるが、現実的には緊急での対応が求められるため上記を緊急に循環器非専門医が解読することは難しい。繰り返しになるがわからない場合は心室頻拍として対応し、治療に関して循環器医と相談する。
*参考:Brugadaアルゴリズム (Circulation 1991;83:1649)
Step 1:前胸部誘導でRSパターンがない→心室頻拍
Step 2:前胸部誘導でRSパターン>100msec→幅が広い場合心室頻拍
Step 3:房室解離→ある場合心室頻拍
Step 4:V1,2とV6誘導で形態学的基準*→満たす場合心室頻拍
Step 5:いずれも満たさない→上室性頻拍
・ATP投与により房室伝導をブロックすることで、上室性頻拍と心室頻拍を鑑別する方法もある。(副伝導路を介した上室性頻拍では禁忌となるため注意が必要)。

Wide QRS tachycardiaへのアプローチ

1:ABC・循環動態の確認+ルート確保+除細動器準備→不安定な場合はすぐ電気的除細動
・虚血、心不全、意識障害などの臨床症状に注意
・循環器医と相談
2:検査 *必ず除細動器をつけた上で行う
①採血+血液ガス(血算・生化学・凝固・電解質(K, Mg, Ca)、心筋逸脱酵素・甲状腺機能)
②12誘導心電図 *以前の心電図確認(脚ブロックが以前からあれば上室性頻拍の可能性もある)
③薬剤歴:QT延長を起こす薬剤の確認
④胸部レントゲン
⑤心エコー検査
*原因として急性冠症候群QT延長症候群が重要
3:治療
・電気的除細動
・薬物治療(アミオダロン)

入院患者で初回のNSVT(non-sustained VT)を認めた場合のアプローチ

1:無症候性は緊急対応不要
2:原因精査(ここが重要!!) 急性冠症候群とQT延長(入院患者は特に薬剤性)に注意
 ①12誘導心電図:ST変化とQTチェック(前と比較)
 ②採血電解質(K, Mg)+トロポニン+NT-proBNP+TSH/FT4 *採血どこまで提出するかは決まりない
 ③薬剤チェック:特にQT延長(こちら) *入院中の場合は新規開始の抗精神病薬、抗菌薬など
 ④心エコー:夜間の場合余力があれば実施する、厳しい場合翌日に実施する
 (⑤心不全疑えば胸部レントゲン)

ESC Scientific Document Group. 2022 ESC Guidelines for the management of patients with ventricular arrhythmias and the prevention of sudden cardiac death. Eur Heart J. 2022 Oct 21;43(40):3997-4126.

5.2. Diagnostic evaluation at first presentation with ventricular arrhythmia in patients without known cardiac disease
5.2.1. Scenario 1: Incidental finding of a non-sustained ventricular tachycardia

偶発的に指摘のあるNSVTへの対応
・①持続時間や波形の形態評価、②薬剤歴や既往歴心疾患リスク、③家族歴(突然死など)、④採血(電解質, NT-proBNP, TSH/FT4)
12誘導心電図(Class1)、エコー(Class1)、ホルター心電図(Class2a)

“Algorithm for the evaluation of patients presenting with an incidental finding of non-sustained ventricular tachycardia.”

SHD, structural heart disease CAD, coronary artery disease, Y: yesの意味

*管理人の雑感:非常によくある病棟からのCallです。よくある間違いは「NSVTは緊急対応が不要だから様子見」というものです。確かに緊急対応は不要ですが、「初回のNSVTは原因の精査が必要」です!そもそもNSVTはVTの一歩手前なので脳梗塞におけるTIAのようなもので、原因がわかれば治療による恩恵を受けます。くどく繰り返しますが確かにNSVTにいきなり除細動やアミオダロンは必要ない訳ですが、原因は精査必要です。上記の検査リストは管理人が行う検査ですが、心エコー検査は夜間余裕があればやり厳しい場合は翌日にまわすなどあります。ただ①12誘導心電図、②採血で特に電解質チェック、③薬剤チェックは必須です。

ICD(植込み型除細動器)

運転に関して

道路交通法
・運転の許可および自動車運転免許の維持には、「ICD/CRT合同研修セミナー」を履修した医師による診断書を、各都道府県の公安委員会・警察署へ提出する必要がある。
・運転可能と判断された場合でも6ヶ月毎の再審査の診断書提出が必要
・運転可能なのは、普通自動車免許で運転可能な自動車に限られ、職業運転は認められていない


処置
自動車運転免許制限期間
新規植え込み(一次予防)7日
新規植え込み(二次予防)6ヶ月
ICD適切作動3ヶ月
ICD不適切作動意識障害を伴わない場合制限なし
ICD本体交換7日
リード交換7日