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無菌性髄膜炎 aseptic meningitis

無菌性髄膜炎に関しては経験を積むにつれて一筋縄ではいかずに迷うことが多いです。勉強した内容と日常臨床で特に感じる点に関してまとめます。細菌性髄膜炎に関しては別にまとめておりますのでこちらをご参照ください。

ポイント

1:「無菌性髄膜炎」≠「ウイルス性髄膜炎」
・無菌性髄膜炎はあくまで髄液に菌体が証明できない髄膜炎の「総称」であり、ウイルス性髄膜炎と同義ではない(その他薬剤性、自己免疫性など様々な原因がある)。
ウイルスが原因と特定されていないにも関わらず「ウイルス性髄膜炎」と決めつけてしまうことは危険である。これが非常に多い間違いです。「ウイルス」と名付けてしまうとつい安心してしまうため注意です。
・細菌性髄膜炎は緊急性の高い疾患であるが起炎菌が同定されれば治療は自ずと決まる。一方で無菌性髄膜炎の原因は特定できない場合が多く、細菌性髄膜炎よりも管理が難しいとも言える。

2:結核性髄膜炎・HIV感染を必ず除外
・結核性髄膜炎は診断が極めて難しく、特に「単核球優位の細胞数上昇+髄液糖低下」では必ず結核性髄膜炎を考慮する。
・HIV感染を疑う契機は日和見感染症・無菌性髄膜炎・急性HIV感染症のいずれかが多い。このようにHIV感染症を疑う入口として無菌性髄膜炎は重要であり、無菌性髄膜炎では必ず一度HIVを検索する。

3:基本入院管理が望ましい
・ウイルス性や自己免疫性脳炎の初期は無菌性髄膜炎の病像と全く区別がつかない場合が多い。当初「無菌性髄膜炎」として頭痛、発熱だけであったのが急激に意識障害や痙攣をきたし、実は脳炎や悪性リンパ腫の初期像であったというケースを良く経験する。
・ウイルス性髄膜炎は確かにその多くで治療は対症療法であるが、初診時からウイルス性髄膜炎と確定診断できることはまずない。今後病像が変化していく可能性を想定に入れた上でのIC・また入院管理が望ましい。

原因

薬剤性の原因としてはNSAIDsこちらにまとめがあります)とガンマグロブリンが代表的。
感染性心内膜炎は髄液細胞数が上昇して一見無菌性髄膜炎のようにみえる場合があります(感染性心内膜炎に関してはこちらを参照ください)。この場合髄液培養から菌体は検出されない場合が多いです。おそらく微小の細菌性動脈瘤による炎症が波及したものを反映していると思われます。
結核性が何よりも除外では重要です(こちらにまとめがあるのでご参照ください)。
・ウイルス性の中ではHIVが特に重要。
・真菌性としてはクリプトコッカス髄膜炎が代表格です。
・厳密には髄膜炎ではないですが、硬膜外膿瘍もCSFへ炎症が波及して髄液細胞数上昇をきたします。

身体所見

■“jolt accentuation” 感度60%, 特異度97.1%
・方法:頭部を自動的あるいは他動的に動かす(1秒間に2-3回首を回旋させる)と頭痛が増悪する
・使う状況:「意識障害や神経症状を伴わず、頭痛と発熱を呈して感冒による頭痛か?それとも髄膜炎か?に悩む場合」
・元論文では「ここ最近2週間以内の頭痛+37度以上の発熱」が適応となっており「頭痛のみを呈し発熱がない患者」には適応とならない(片頭痛でも陽性になる)。また意識障害や神経学的巣症状を認める患者はそもそも除外されており、これらの患者に適応することは出来ない。適応を間違えている場合をよく目撃するため注意したい。
参考文献:Headache 1991;31:167
*jolt accentuationに関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。

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検査

・ウイルス性:各種DNA(HSV, VZV, Entero)・RNA検査 *HIV検査は全例提出する
・梅毒:髄液RPR, FTA-ABS(日本ではVDRL提出が出来ないため)*神経梅毒は梅毒どの病期でも呈しうるため注意
・結核性:髄液ADA・抗酸菌PCR・抗酸菌培養(感度が低く疑う場合は繰り返し提出する)
・真菌性:墨汁染色・髄液クリプトコッカス抗原・真菌培養検査
・腫瘍性:髄液細胞診(検体量多い方が感度高い。出来れば10mL提出・3回繰り返し提出)

*「髄液細胞数上昇」≠「髄膜炎」
・髄液細胞数上昇の原因は髄膜炎だけでなく硬膜外膿瘍、感染性心内膜炎など他の原因でも上昇する。特に硬膜外膿瘍、感染性心内膜炎では髄液細胞数上昇のみで髄液から菌体が検出されない場合も多い(自験例から)。

*結核性髄膜炎に関して髄液ADAカットオフ値ごとの検査特性
・1.0 U/L: 感度100%, 特異度6%
・8.0 U/L: 感度59%,特異度96%
・20.0 U/L: 感度16%, 特異度100%
参考:Scandinavian Journal of Infectious Diseases, 2010; 42: 198–207

*参考:髄液糖低下の鑑別