Jolt accentuationと髄膜炎

“Jolt accentuation”は「頭部を自動的あるいは他動的に動かす(1秒間に2-3回首を回旋させる)と頭痛が増悪する」ことを意味し、髄膜炎を疑った際に用いる身体所見です(細菌性髄膜炎の一般に関してはこちらをご参照ください)。内原俊記先生が1991年Headacheに発表されたことに端を発します(Headache 1991;31:167)。

元々Kernig徴候やBrudzinski徴候、項部硬直といった身体所見は髄膜刺激徴候として有名ですが、いずれも感度が低くこれらが陰性であるからといって髄膜炎は否定できないことが臨床現場での問題でした。現在”jolt accentuation”は救急の現場でも非常に有名となっていますが、間違った状況で使用されてしまっていたり、間違った解釈がされてしまっている場合もあるため、以下で”jolt accentuation”に関してまとめさせていただきます。

■髄液細胞数上昇とJolt accentuationに関して内原俊記先生最初の文献 Headache 1991;31:167

受診2週間以内の頭痛、37度以上の発熱を呈し、意識障害や神経学的所見巣症状を認めない患者54例を対象としたprospective studyで、髄液細胞数上昇における検査所見、身体所見(”Jolt accentutation”を含む)の感度、特異度を検討しています。

髄液細胞数上昇は34例(内訳:無菌性髄膜炎28例、細菌性髄膜炎1例、結核性髄膜炎1例、くも膜下出血2例、AMoL浸潤1例、シェーグレン症候群1例)に認め、髄液細胞数上昇がない症例は20例(内訳:上気道炎11例、感染性下痢症3例、Edentulous2例、緑内障1例、特定困難3例)認めています。

髄液細胞数上昇との関係は”jolt accentuation”が感度97.1%(33/34例:ここでjolt accentuationを呈さなかったのはシェーグレン症候群の患者)、特異度60%と報告されています。またその他のKernig’s signは感度8.8%、特異度100%、項部硬直は感度14.7%、特異度100%となっています。

この論文で指摘されている通り以下の点が特に注意が必要です(よく誤解されてしまっています)。
・「ここ最近2週間以内の頭痛+37度以上の発熱」患者さんに適応するものであり、「頭痛のみ」を呈し発熱がない患者には適応となりません。例えば片頭痛の患者さんでも”jolt accentuation”は陽性となってしまいますが、これは本研究では発熱がないため含まれていないという点に注意が必要です。
「意識障害や神経学的巣症状を認めない」患者さんが適応となっている点にも注意が必要です。意識障害の患者さんでは通常救急外来で腰椎穿刺、髄液検査を実施する場合が多いと思いますがこれらの患者さんはそもそも除外されています。その結果髄膜炎患者さんもその多くは無菌性髄膜炎(髄膜炎30例中28例)であり細菌性髄膜炎は1例のみとなっています。

これらの結果から特に「意識障害や神経症状を伴わず、頭痛と発熱を呈して感冒による頭痛か?それとも髄膜炎か?に悩む状況」で特に”jolt accentuation”が威力を発揮することがわかります。この論文の条件をきちんと踏まえた上で”jolt accentuation”を適応したいです。

■Jolt accentuationに関するreview “Does this adult patient with jolt accentuation of headache have acute meningitis?” Headache 2018;58:1503

ここではjolt accentuationに関する既報をまとめてその有用性に関して検討をしています。ここでも重要な点はやはり適応をきちんと守ればjolt accentuationは有用であるという点で、下図の網線(発熱>37度、最近の頭痛に該当し、神経学的所見・意識障害に該当しない部分)がJolt accnetuationの良い適応となることを示しています。つまり重要なことは、“jolt accentuation”は単独で髄膜炎かどうかを決める絶対的な指標となる訳ではなく、適応と検査前確率をきちんと考えた上ではじめて髄膜炎らしいかどうか判断する指標となるということです。

■救急領域でのJolt accentuationに関するsystematic revirew CD012824

福島県立医科大学井口先生がまとめられたCochrane Libraryのsystematic reviewが今年2020年発表されておりますますので簡単に紹介させていただきます。ここでは1161例(髄膜炎444例)9研究が紹介されており、まとめたものでは救急現場で髄膜炎が疑われた状況でjolt accentuationの感度65.3%、特異度70.4%、この中から意識障害患者を除外すると921例あり感度75.2%、特異度60.8%と報告されています。 

この結論としては急性の髄膜炎除外するのには十分な感度はないということになっています。Author’s conclusionは以下の通りです。”Jolt accentuation for headache may exclude diagnoses of meningitis in emergency settings, but high‐quality evidence to support use of this test is lacking. Even where jolt accentuation of headache is negative, there is still the possibility of acute meningitis. This review identified the possibility of heterogeneity. However, factors that contribute to heterogeneity are incompletely understood, and should be considered in future research.”

このように全てをまとめて解析すると感度、特異度十分ではない結果となりますが、髄膜炎はその原因、臨床像を含めて非常にheterogeneousな疾患なので、今後「どのような患者さんにjolt accentuationを適応すればよいか?」が検討されていく必要があると思います。

参考文献

・疾患に応じた神経診察「風邪のなかにひそむ髄膜炎を見抜くために 髄膜刺激徴候とjolt accentuationの限界と応用」 内科122(6): 1173~1176, 2018 著:内原俊記先生

・「Jolt accentuation再考 髄膜炎のより適切な診断のために」 週刊医学界新聞第3086号 著:内原俊記先生

“Jolt accentuationと髄膜炎” への4件の返信

  1. いつも勉強させて頂いています。
    Jolt accentuationは軽症の髄膜炎向きの徴候の印象ですよね。意識障害を呈する患者には向いていない気がします。他は軽症の髄膜炎では、羞明やeyeball tendernessの評価が重要でしょうか。
    改めて知識の確認となりました、有難うございました。

    1. いつも記事を読んで頂きコメント頂き大変有り難うございます!
      ご指摘の通りやはり意識障害のない患者さん(もとのHeadache1991年文献通り)で感冒による頭痛か?髄膜炎か?で悩む場合に有用と思います。意外と「頭痛」単独に対して”jolt accentuation”を実施してしまっている方が多い印象があり(救急外来などで)、頭痛だけは元々includeされていないため注意と思っております。
      羞明、eyeball tendernessもご指摘ありがとうございます。病歴にはなってしまいますが「歩行時に頭にひびく」、「車ががたんと揺れるタイミングで頭痛が悪化する」なども有用な病歴でしょうか?
      こちらこそいつも大変有り難うございます。またお気づきの点ございましたらご指摘いただけますと幸いです。

  2. 素晴らしいまとめをどうもありがとうございます。
    AJEM 2013 と Headache 2018 の著者です。
    わけあって、半年くらいぶりに “jolt accentuation” を検索していましたら、たどり着きました。

    個人的には、基幹医療機関では「迷ったら LP する」という方針が良いと思っているのですが、どこの医療機関でも LP できるわけではないのが課題だなと考えております。
    自分は精神科単科病院の勤務が長くなってきたので、以前にましてそう思うようになってきました。

    井口先生が Cochrane にまとめてくださったので、臨床研究はひと区切りになるかもしれないと思うのですが、ご指摘の通り「どのような患者さんにjolt accentuationを適応すればよいか?」を、日本で再考して世界に発信していければよいなと考えております。

    1. 田宗先生、記事を読んで頂き大変有り難うございます。また素晴らしい論文の著者の先生からコメントを頂くことができて光栄です。
      小生のつたないまとめで大変恐縮でございます。
      なるほど「迷ったらLPする」というpracticeはご指摘の通り施設毎に閾値がかわってくるかもしれないですね・・・。
      jolt accentuationは田宗先生、内原先生、井口先生といった日本の先生方から世界へ発信された内容でいらっしゃり、同じ日本人の医師として尊敬しかございません。
      もしもまたお気づきの点などございましたらコメントいただけますと幸いです。大変有り難うございます。

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