はじめて英語論文を読む

ここでは主に「いままで全く英語論文を読んだことがないけど、読んでみたいな~」と思っている方を対象に私の思うおすすめの方法を紹介させていただきます。「ある程度もう英語論文は読んでるよ」という方にとっては全く参考にならない内容と思いますのでご容赦ください。

1:必要なのは英語力ではない

医学論文を読むにあたって正直「英語力はほぼ必要ない」といってよいと思います。求められているのは「論文での表現、医学英語・用語になれているかどうか?」です。なので、才能とか語学センスとかは一切必要ありません。例えば私は内科系の英語論文はある程度は読めますが、皮膚科系の論文は全く読めません。皮膚科疾患の英語・用語に全くなじみがないからです(eczema:湿疹など皮膚科の用語は本当に難しい・・・)。このようにほぼ慣れの問題だと言い切ってよいと思います。

逆に厳しい言い方をすれば、「元々英語が苦手だから英語論文を読まない」という言い訳は通用しません。何度も用語を辞書で調べながら読んでいると、時間はかかりますがだんだんとスムーズに読むことが出来るようになってくると思います。しんどいですが、頑張って戦っていきましょう。

2:まず読むなら”New England Journal of Medicine”の”reivew”がおすすめ!

研修医のうちからRCT(randomised controlled trial)やコホート研究をガシガシ読むことを私は正直あまりおすすめしません。RCTは通常頭からおしりまで全部読むという読み方はせず、必要な情報だけ抽出する読み方をします。このような高度な読み方が求められるため、初学者にはややハードルが高いと思います。研修医のうちは抄読会などでRCTを読む機会があるかもしれませんが、とりあえずはそれだけで十分なのではないかなと思います。

「ではまず何を読むべきか?」ですが、私は“Review”をおすすめします。そのなかでも取り敢えず何かを英語論文で勉強したい場合は、“the New England Journal of Medicine(以下NEJMと略します)”“review”がおすすめです。これはある疾患に関してその疾患のエキスパートが疾患の特徴、検査の解釈、治療の推奨などを5~8ページくらいでまとめてくれたもので、きれいなシェーマもついており大変勉強になります。NEJMは英語も比較的平易なので、読みやすい印象があります(Lancetでも”Seminar”というシリーズがあり同じ様に疾患をまとめていますが、英語が少し読みにくい印象が個人的にはあります・・・)。私のホームページの記事も多くはNEJMのreviewが参考文献に掲載されています。

ではここで試しに「”ARDS”の勉強をしてみようかなー」と思ったとします。

NEJMのホームページに行き” https://www.nejm.org/ “、そこの検索欄のところに”調べたい内容”+ “review”と入力します(下図)。すると検索結果から”review”を見つけることができます。

このPDFをダウンロードしてみると、下の様な感じです。

reviewにはだいたい分かりやすいまとめシェーマもついているのでこれも勉強になります(例えばARDSの場合は下図のようなシェーマ。綺麗なシェーマを見ただけで何となくその論文を読んだ気になってしまうのは私だけ?)。

多くの主要な疾患はNEJMのreviewに掲載されています。なのでこのようにとりあえず疾患の知識を知りたい場合には、まずNEJMのreviewを当たってみることをおすすめします(他の論文でもだいたいNEJMのreviewは引用されています)。決して簡単ではないですが、このreviewを1本読めばその疾患に関しては平均以上に詳しくなることが出来ると思います。その意味でも頑張って読む価値のある内容だと思います。

たぶんはじめのうちは1つのreviewを読むのに最低1週間は時間がかかると思います(reviewはRCTやコホート研究と違い最初から最後まで全部読む)。知らない単語を辞書でひきながら、辞書で単語を調べている間に肝心な内容を忘れてまた最初から読み返す・・・という「行きつ戻りつ」な読み方になるため相当時間がかかります。そうこうしているうちに、「この読み方ってもしかしてめっちゃ効率悪いんではないか・・・?」と疑心暗鬼になり「やっぱり読むの止めよかな・・・」という誘惑が襲ってきます。そして「やっぱり私って英語苦手だからな・・・」と自己嫌悪に陥って、きずいたら論文を枕に寝ている・・・ということを経験した方もいらっしゃるのではないでしょうか?(私もあります)。しかし、これは才能ではなく根気の問題です。ショートカットする楽な道は存在しません。RCTやコホート研究と違い、ここだけピックアップして読めばOKというものでもありません。地道に単語を辞書で調べながらくらいついていくしかありません!

3:”UpTo Date”を読んでみる

NEJMのreviewと並んでおすすめなのは“UpTo Date”です。多くの研修病院はたぶん登録しているので、無料で見ることが出来るのではないかと思います。これは本当に詳しくまとめられていてただただ素晴らしいの一言なのですが、医学英語初学者にとっては「えっ・・・記事めっちゃ長くない・・・?」と感じる方が多いと思います。

そこで、まずは左のバーにある“Summary and Recommendations”をクリックして、「要約」だけを読むことをおすすめします。ここの英語量はかなり少ないので、読み切ることができると思います。

“Summary and Recommendation”の中で気になった部分だけ、きちんと本文で読んでみることをおすすめします。”UpTo Date”も英語は非常に平易に書かれており他の論文と比較すると読みやすいです。知らない内容をちらちら”UpTo Date”で調べられるようになると上級医の先生を焦らせることができるので、是非挑戦してみていただければと思います。

また何か論文で調べたいと思った場合に、いきなり”Pub Med”で一から論文を検索して探すことには抵抗が大きいと思います。そのような場合は、まず”UpTo Date”で該当する疾患を調べて、その引用文献を当たるという方法をおすすめします。広大な論文の海に1人で飛び込んで良い論文を探すよりも、まずは”UpTo Date”が選んでくれた参考になる論文を当たったほうが圧倒的に効率が良いです(”UpTo Date”がとても良い論文を取りこぼしていることはかなり少ない印象があります)。

左の”reference”から探す方法と、

読んでいて気になった場合はそこから直接引用文献に飛ぶ方法があります。

“UpTo Date”も使い慣れておいて損はないです。気になったことを全て”UpTo Date”で調べるのは無理ですが、どうしてもつっこんで知りたい場合にはまずみてみることをおすすめします。

4:上級編 “Key 論文”を探せ

ここはちょっと上級編なので、読み飛ばしていただいて大丈夫です。あるテーマについて調べているとき、「あー何かこうバシッとまとめてくれている論文ないかなー?」と感じる事があると思います。このバシッとまとめてくれた”Key 論文”に出会う方法を考えます。「ポケモンゴー Pokemon Go」に例えると「重要なポケモンがよく出没する場所にとりあえず行ってみる」(”Key論文”が掲載される”Journal”からまず当たる)方法と、「とりあえず手あたり次第ポケモンに出会う」(とりあえず何か論文を読んで、引用文献から攻める)方法の2つがあります。PubMedとにらめっこしていてもなかなか良い論文を探すことが出来ない場合があるため、上記いづれかの方法をおすすめします。

前者の方法ではまず重要なJounalを知ることから始めます。例えば内科全般でしたら”NEJM”, “JAMA”, “BMJ”, “Lancet”、循環器だったら”JACC”、呼吸器だったら”Chest”など主要journalは大方決まっています。まずここに良い論文がないかどうか探すと”Key論文”に出会う可能性が高まります。先ほどのNEJMのreviewや”UpTo Date!といった二次資料から当たることもおすすめです。

有名な疾患(例えばARDS)はこの方法で基本問題ありません。しかし、稀な疾患(例えば腹直筋鞘血腫)ではこの方法は使えません(だいたい載っていない・・・)。その場合は後者のとりあえずどれでもよいから論文にあたる戦法が良いです。とりあえず何かてきとーに”Case report”を数本読みます(Case reportは短いのですらすら読めます)。すると「毎回この論文が引用されているなー」という論文が目に付くようになります。その毎回引用されている論文が”Key論文”である可能性が高いです。1からPubMedで検索するのが大変な場合は、このようにとりあえず短いもので良いからてきとーに論文を読んで、その引用から探す方法もおすすめです。PubMed初心者にとっては、PubMedで良い論文をヒットさせるための検索wordで四苦八苦するより、こちらの方が早い場合があります。

5:読んだら必ず内容をまとめる

さてこんなに頑張って読んだ論文ですが、読んでおしまいだと確実に内容を忘れます。繰り返しますが、絶対に忘れます。「こんなに頑張って読んだし絶対忘れないだろう」とその時は思いますが、忘れます。私はもうだめだめなので、もはやその論文を読んだことすら忘れています(ごはんを食べたことを忘れているレベル・・・?)。たまに論文を読み終わって「ふーっ」としたらパソコンから全く同じ内容の論文が出てきて(しかも、ちゃっかりアンダーラインとか引いてある・・・・)、「えっ俺前にも同じ論文読んでいたの・・・」と愕然とする場合があります。

このように読んで放置していると確実に忘れるので、読んだら「すぐ」に読んだ内容をまとめておくべきです。「すぐに」もポイントで、「ふー今日は頑張って読んだ明日まとめよう」と思って、まとめられた論文君はいません。明日になったら論文はもうどこかに消えています・・・。なのでこのひと手間がとっても重要です。”out put”して残して置いた方が記憶に刻まれ、また私のように論文が忘却の彼方になってしまってもまたすぐ記憶を呼び起こすことが出来るので是非残しておきましょう。

私は”Evernote”に自分で内容をメモしてまとめています(ご自身のやりやすい方法で問題ないと思います)。例えば昔読んだNEJMの自己免疫性脳炎のreviewは、2018/9/23にまとめてありますが、下のような感じです。

以下続き。

私はこのようにまとめています。こうしてまとめておくと頭に残りやすいですし、後で見返したときも「あーこんな感じだったな」と思いだしやすくなります。

みなさまそれぞれやりやすい方法があると思いますので、好きな方法でまとめられるのが良いと思いますが、個人的には紙媒体はあまりお勧めしません。めちゃ管理能力が高い人でない限り紙の論文は確実にどっかに消えるからです。Wordファイルもパソコンが急に壊れたら大変なので、”Evernote”, “One Note”, “Good note”などのonline媒体で情報をまとめるのが良いと思います。

さらにさらにおすすめなのは、読んだ内容を友達に話したりブログやSNSで読んだ内容を共有することです。こうすると自分の知識が正しいか?というプレッシャーがかかりより読み込む際にも熱が入ります(間違った内容を伝えないようにしようとプレッシャーがかかります)。もしよかったら是非学んだ知識をout putしてみてください。

以上英語論文をはじめて読む人へむけたおすすめ内容をまとめました。かなり個人の偏った意見なので、あくまで参考にしてください(もっと良い方法ありましたら是非コメントで教えてください!)。上級者の先生には邪道だと思われる内容も多かったかもしれません。目から鱗が落ちるような内容も一切なくすみません・・・。

今回は昨年度まで一緒に働いていたHくんとSさんからほぼ同時期にラインでご相談いただいていた内容を掲載させていただきました。Hくん、Sさんご相談大変ありがとうございます!また記事にして欲しい内容ございましたらコメントいただけますと幸いです。

“はじめて英語論文を読む” への2件の返信

  1. 素晴らしい記事で全ての先生に読んでもらいたいですね。
    このような分かりやすい記事は特に初期研修医〜後期研修医の先生にとってはとても有難いことかと思います。
    私自身も勉強になることが多くありました。ぜひ後輩にも読んでもらうよう指導したいと思います。

    優れた臨床医ほどkeyとなる論文をすぐ見つけることができるように思います。情報が溢れている現代こそ、文献検索力が非常に重要になっていると思います。またこの領域でも先生が感じられていることを記事にしていただけると有難いです。

    ちなみに先生は神経内科領域で定期的に目を通す雑誌、journalはありますでしょうか。もしご教授頂ければ参考にさせていただきたいですm(_ _)m。他は「英語論文を書く」という記事もあるととても面白いと思いました。

    今後もこのサイトで勉強させて頂き、先生から刺激を受けたいと思います。どうぞ宜しくお願いいたします。

    1. 大変励みになるコメントをありがとうございます!
      この記事は去年一緒に働いた研修医の先生からの要望があり書かせていただいたもので、先生の様な臨床の達人の先生にも読んでいただけて恐縮です。
      御指摘の通り文献を探す能力の重要性は臨床医にとって日に日に増しているのが現状だと思います。私は主に記事にも書かせていただいた”key論文”を探すところから初めて、そこの引用を数珠つなぎのようにたどる方法を良くとっています。

      神経内科領域で実は恥ずかしながら定期的には私はjounalを読んでおりません・・・。その都度臨床上で疑問に思ったテーマを調べているような感じです。
      逆に神経内科領域以外に関しては”NEJM journal watch”というものを購読させていただいております。これは幅広いテーマに関して様々なjournalから各分野のエキスパートの先生が重要な論文をピックアップしてまとめてくれるもので(NEJM以外の論文からもです)、神経内科以外の領域のup dateに非常に役立っています(ちなみに有料です)。各分野のexpertからのコメントもついているので非常に参考になります(「有意差はあるけど臨床的意義に関しては慎重になるべきだ!」などbiasに流されない非常にためになることが書かれています)。おすすめです!
      英語論文を書くに関しては私はまだだめだめなのでしばらく書けそうになく申し訳ございません・・・・。

      毎回励みになるコメントを頂けて本当にありがたいです。今後ともよろしくお願いいたします。

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