CRBSI catheter-related blood stream infection カテーテル関連血流感染症

病態

院内感染症またデバイス感染の代表的な疾患のうちの1つです。重要なのはカテーテル関連血流感染症(CRBSI:catheter-related blood stream infection)は「血流感染症」であって、ただカテーテルの先に菌が定着している状態ではないということです。血流感染症なので、全身の臓器に血流を介して感染が波及する場合もあり、感染性心内膜炎や膿瘍形成などの合併症を起こしうるため注意が必要です。

感染経路は下図の通り色々ですが、実際には皮膚のカテーテル挿入に伴うバリア障害により菌が侵入する経路が多いです。

身体所見では意外にも局所所見はほとんど認めない(10%以下)とされており、局所所見がないからといって否定はできません。しかし、所見があれば診断を疑うためカテーテル刺入部を毎日回診で確認することが何よりも重要です(つまり局所所見は感度は低く、特異度は高い)。

原因菌

CNS(コアグラーゼ陰性ブドウ球菌)が原因菌として最多で、腸球菌、黄色ブドウ球菌も多いです。これは後での抗菌薬選択でも重要ですが、カンジダとグラム陰性桿菌(緑膿菌を含む)も多い点に注意が必要です。全体的には皮膚常在菌が多いです。

診断

「カテーテル先端培養」、「カテーテル逆流血培養」、「末梢血培養」の3点セットを培養として提出します。

1:カテーテル先培養検査

カテーテル関連血流感染症を疑う場合はカテーテル先を提出します(いわゆる「カテ先培養」です)。カテーテルを抜いた直後にカテーテルの先端を清潔なハサミで切り、滅菌スピッツに入れて培養検査に提出します。やってみると分かりますが1人では出来ないため2人で協力して培養を提出します(1人がカテーテルを抜去する係、もう1人片手にハサミを持ち、空いた手で滅菌スピッツを持つ。)。

カテーテル関連血流感染症を疑っていない場合はルーチンでカテ先培養を提出することは避けます(カテ先培養だけでは何の情報にもならない)。

2:カテーテル逆流血培養

カテーテルからの逆血を血液培養として提出します。シリンジと結合する部分をきちんとクロルヘキシジンなどで消毒します。

3:末梢血からの血液培養

カテーテル関連血流感染症を臨床上強く疑い、かつ上記のカテーテル逆流血培養を提出する場合は、末梢からの血液培養は1セットでよいされています(カテーテル逆流血培養を提出しない場合はもちろん2セット)。しかし、実際には院内発熱でカテーテル関連血流感染症以外の可能性も考慮する場合が多く、熱源不明の場合は通常通り末梢血2セットを提出します。

これらの培養3セットを集めた上で下記の通りに判断します。基本はカテ先培養と末梢血から同一の菌が培養されればカテーテル関連血流感染症の診断です。またカテーテル逆血培養と末梢血培養から同一菌が検出された場合は、カテーテル逆血培養の方が末梢血培養よりも菌量が多い、もしくは早く培養されればカテーテル関連血流感染症の診断となります。

治療

先にカテーテル関連血流感染症治療でのポイントをまとめます。
1:カテーテルは可能な限り抜去(感染源を除外)
2:血液培養をフォローし陰性化を確認した日が治療開始1日目
3:抗菌薬の基本はバンコマイシン→菌種が分かり次第de-escalation
4:リスクに応じてGNRカバー、カンジダカバーを追加するかどうか判断
5:合併症併発がないかどうか?(治療期間に影響がある)

以下に上記のポイントを1つずつ解説していきます。

1:カテーテルは可能な限り抜去(感染源を除外)

感染症治療の原則は感染源の除去で、カテーテルは基本抜去します(以下で解説する治療期間もカテーテルを抜去した場合の治療期間です)。

2:血液培養をフォローし陰性化を確認した日が治療開始1日目

CRBSIは必ず血液培養検査をフォローし陰性を確認しないといけない感染症です。そして血液培養陰性確認日は治療開始1日目となります。血液培養に関しての復習はこちらをどうぞ。

3:抗菌薬の基本はバンコマイシン→菌種が分かり次第de-escalation

抗菌薬は起炎菌のところでみたように、CNS, S.aureusが多いのでまずはバンコマイシンが第1選択です(リネゾリドは単独で使用するべきではありません)。

4:リスクに応じてGNRカバー、カンジダカバーを追加するかどうか判断

GNR鼠径部にカテーテルが入っている、全身状態不良、敗血症、好中球減少の場合などにカバーを考慮します。緑膿菌までカバーが必要なのでピペラシリン・タゾバクタムなどを選択します。

カンジダ中心静脈栄養、広域抗菌薬長期使用、血液悪性腫瘍、移植後患者、複数部位でカンジダが検出されている患者、鼠径にカテーテルが挿入されている場合はカンジダのカバーが必要です。基本的にはミカファンギンから治療を開始します(ミカファンギン100mg q24hr)。カンジダに関してはこちらに詳しくまとめておりますのでもしよければご参照ください。個人的には「なんでカンジダをきちんとカバーしないのかな?」というケースによく遭遇し、きちんとカンジダを臨床的に疑う視点が重要だと思います。

ざっくり言ってしますと鼠径のカテーテル関連血流感染症で重症の場合はGNR、カンジダ両方のカバーが必要です。もちろん培養結果が分かり次第抗菌薬をde-escalationしていきます。

5:合併症併発がないかどうか?(治療期間に影響がある)

カテーテル関連血流感染症は血流感染症なので他の部位に膿瘍を形成したり、感染性心内膜炎を合併したりする場合があります。このようなただの血流感染症ではなく合併症を伴うものを「複雑性」と表現しており、治療期間が異なるため注意が必要です(そうでないものを「非複雑性」と表現します)。以下に複雑性、非複雑性、また各菌種ごとの治療期間をまとめました。

まとめ

予防

カテーテル関連血流感染症の予防点をまとめます。

・不必要なカテーテルはすぐに抜去する(最も重要)
・挿入時はマキシムバリアープレコーション
・消毒は0.5%以上のクロルヘキシジンが推奨
・鼠径への挿入はなるべく避け内頸静脈、鎖骨下静脈を選択する
・感染予防目的のカテーテルのルーチン交換は必要なし

日々の回診で不必要なカテーテルを抜去することが重要です。私が初期研修医でICUローテートの時に上級医の先生から何度も「この患者さんなんでラインいるの?」と問いただされた経験を思い出します・・・。つい忘れてしまいがちなので日々デバイスのチェックをする習慣が必要です。

参考文献
・CID 2009;49:1-45 IDSAのガイドラインでほぼ全てここから参照しました
・武蔵野赤十字レクチャー

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