注目キーワード

中心静脈カテーテル留置

この記事では中心静脈カテーテル留置方法(右内頸静脈)に関してまとめます。

0:物品の準備

・モニター(心電図、SpO2)
・エコー(リニア)、エコーカバー、エコーゼリー
・CVカテーテルキット(穿刺針・ガイドワイヤー・ダイレーター・皮膚切開用のメス・カテーテルなど含まれている)*予めカテーテルのルーメン数(シングル・ダブル・トリプル)を決定しておく。
・コネクター、三方活栓など
・局所麻酔薬、23G針、シリンジ(逆血確認用は2mlのシリンジ)
・ヘパロック多数
・ガーゼ
・ドレープ(穴あき+穴なしの大きいもの)
・固定用の糸(ナイロン2-0,3-0など)、18Gピンク針もしくは針
・Maximum barrier precaution(ガウン・清潔手袋・帽子)

1:穿刺部位の決定

右内頸静脈が穿刺のしやすさ、安全性など含めて第1選択となります。以下では右内静脈穿刺を原則として話をすすめます。
・胸鎖乳突筋の鎖骨頭、胸骨頭、鎖骨の3辺で形成される小鎖骨上窩が内頸静脈穿刺の位置に適しています(下図参照)。穿刺位置ができるだけ頭側の方が胸腔から遠ざかり気胸合併のリスクが下がるためできるだけ頭側を刺入点とします(動脈と静脈が重ならない位置で)。
・患者さんは頸部を反対側へ30度ほど回旋してもらいます。回旋しすぎると動脈と静脈が重なりやすくなってしまうため注意が必要です(思いっきり回旋させれば良い訳ではない)。
・また可能であればベッドを10度程度傾斜させたTrendelenburg位(頭低位)にする。
・消毒の前にこの状態で一度エコー検査で穿刺部位のあたりをつけておきます(マーキングをしておく)。この際必ず内頸静脈の深さが何cmか?を確認しておく。

2:消毒と準備

・患者さんにもキャップをかぶってもいます。
マキシマムバリアプリコーションで行います。
消毒範囲は広めに(頭側:顎~尾側:乳頭~外側:鎖骨遠位端~内側:正中を超える)行います。
・穴開きドレープで穿刺部を覆い、ドレープで全身を覆います。ここでオリエンテーションを見失いやすいため注意が必要です。
エコーの準備:検者はエコーカバーを手で開く様に持ち、介助者にエコーゼリーを入れてもらい、エコープローベを受け取ります。エコーカバーを介助者に渡して輪ゴムで固定します。エコーの置き場は右利きの場合患者の左の方がプローベのコードが邪魔になりにくい利点があります(下図参照)。
物品の準備:カテーテル、ガイドワイヤー、穿刺針などにヘパリンを予め通しておきます。ガイドワイヤーの先端が格納するところから飛び出している場合はしまっておきます。また物品を穿刺位置のすぐ近くに予め置いておくことが重要です(特にガイドワイヤー)。

3:穿刺

・エコーで穿刺部位の確認を行い(針についているプラスチックのキャップで皮膚を押して血管の正中を確認するとやりやすいです)。局所麻酔を行い(この際にそのまま内頸静脈を穿刺し逆血を確認することもあります)、エコーガイド下で穿刺を行います。
穿刺は皮膚と45度程度角度をつけて行います。事前に確認しておいた深さと同じ距離手前から45度の角度で刺入していきます(下図のX cmに該当します)。
*穿刺角が浅すぎる(皮膚と平行に近い):気胸のリスクが上昇するため必ず避ける必要がある。ガイドワイヤーなどはスムーズに進みやすい。
*穿刺角が急だと(皮膚と直角に近い):内頸静脈の後壁も貫くリスクが高い点とガイドワイヤーがスムーズに入りにくいリスクはあるが、気胸リスクは低くなる。


・内筒に逆血が確認されたら、少しだけ穿刺針全体を進めて内筒を抜去します。この際に外筒を左手でしっかりと把持し位置がずれないように注意します(左手の一部:特に小指を患者の体に置くことで安定させることが重要) 。外筒から十分な逆血があることを確認します。
左手での外筒固定が不安定であることに起因する外筒位置のずれによって、ガイドワイヤーがスムーズに挿入されないミスが非常に多いです。


*内頸静脈の後壁を一緒に貫いてしまうと逆血がみられない場合があります。前壁を貫くときに「じーっ」と針を押し込むと前壁が「ぐーっ」と後壁に押し込まれてしまい、後壁にと一緒に貫通してしまうリスクが上がります。前壁を貫くときはある程度一気に貫くようにします(もちろん加減が重要であるが)。逆に後壁を意図的に貫くセルジンガー法もあり、この場合はシリンジで陰圧をかけながら少しずつ全体を引いていき逆血を認める部位でガイドワイヤーを挿入します。
*教科書的には空気が吸い込まれないように外筒の穴を指で覆った方が良いとされていますが、押さえるタイミングで外筒がずれてしまう場合があるため注意が必要です。ずっと逆血が出ている場合はあえて外筒に一切触れずにその後ガイドワイヤーを挿入する方法もあります。

4:ガイドワイヤー挿入

・ここでガイドワイヤーを探してモタモタしていると外筒の位置がずれてしまうので、先程述べたようにガイドワイヤーがすぐ手元に準備してあることが重要です。
・繰り返しになるが外筒の位置がずれてしまったり、角度を左手で無意識に変えてしまうととガイドワイヤーがスムーズに入りません。ガイドワイヤーの原則は「ありとあらゆる状況でガイドワイヤー挿入時に抵抗がある場合に無理に押し込まないようにすること」です(血管外に迷入したり、血管外に入ってしまっている可能性がある)。血管内に留置されていれば絶対に抵抗はないはずです。
・ガイドワイヤーをエコーで短軸、長軸ともに静脈内に留置されていることを確認します。
・ガイドワイヤー挿入後は15-20cm程度すすめます。深すぎると右房にあたり期外収縮が心電図モニター上拾われる場合があります。

5:ダイレーター

・刺入部に尖刀で皮膚切開を入れます(ダイレーターを入れやすくするために)。この際にブレードは上を向くようにして切開し、ガイドワイヤーを間違っても切ってしまわないように注意します(ガイドワイヤーを切ってしまい体内に留置されてしまうと手術で抜去しないといけない)。


・ダイレーターを皮膚に緊張をかけながら挿入します(下図)。
・ダイレーターの目的はカテーテルが皮下をスムーズに通過できるための通路を作ることであるため、皮下の通過距離が短ければダイレーターを完全に根元まで押し込む必要はありません。
・この際にもガイドワイヤーがどこかに行ってしまわないように後端をきちんと把持(もしくは濡らしたガーゼを置くことで動かないようにする)しておきます。
・ダイレーターを抜いた後は同部位から出血しやすいため、ガーゼで刺入部をしっかりと圧迫します。

6:カテーテル留置

・ガイドワイヤーに沿ってカテーテルを留置します。カテーテルをクランプしているとガイドワイヤーが逃げる場所がなくなってしまうため注意が必要です。この際もガイドワイヤーの後端を必ず確認して、間違っても体内に引き込まれてしまわないように注意します。
・身長にもよるが一般的に右内頸静脈の場合約16cmの長さ留置します。身長/10 cm(もしくは身長/10 – 1cm)と推測する方法もある。
留置後、各ルーメンからの逆血を良好であることを確認して、シュアプラグなどを接続し、ヘパリンを流しておきます。
・後は皮膚と固定を行います。縫合は2-0, 3-0ナイロンなどで行うことが多いですが、皮膚をきつく結びすぎてしまうと皮膚が壊死してしまい逆に固定が取れてしまうためゆとりをもってかけます。

7:位置確認・レントゲン

・胸部レントゲンでカテーテル先端位置を必ず確認します。一般的には気管分支部は上大静脈の心拍翻転部より頭側に位置しています。気管分支部より頭側にカテーテル先端を位置させるようにするとされていますが(下図のZone B: 左右無名静脈の合流部+上大静脈上部)、気管分支部よりも尾側に位置した方が良い(下図のZone A:上大静脈下部~右房上部)とする報告もあります(引用:British Journal of Anaesthesia 96 (3): 335–40 (2006))。

以上中心静脈カテーテル留置の手順に関して解説しました。以下で中心静脈カテーテル抜去の手順を解説します。

中心静脈カテーテル抜去

・中心静脈カテーテル抜去での注意するべき合併症は「空気塞栓症」「血腫形成」です。これらを起こさないためのポイントは以下の3点です。

1:体位は仰臥位(もしくはTrendenburg位)にする*座位では行わない
2:最大吸気で息止めをしてもらい抜去する(胸腔内圧が高い状態を維持し、空気が吸い込まれないようにする)
3:すぐに圧迫止血(最低5分)

感染予防に関して

・既に記載しているがマキシマムバリアプリコーションでCV挿入は実施する
・皮膚の消毒:0.5%クロルヘキシジン+アルコール製剤を使用する
・ルーチンでのCV入れ替えは必要か?→感染を疑わない限りルーチンでのCV入れ替えは推奨されない
・CRBSIでガイドワイヤーを挿入してCVを入れ替えて良いか?→ガイドワイヤー下での入れ替えは推奨されていない、可能であれば別の部位から挿入する

*カテーテル関連血流感染症(CRBSI: catheter related blood stream infection)に関してはこちらをご参照ください。