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尿検査所見

1:尿比重・尿浸透圧

尿比重(正常値)1.002~1.035
尿浸透圧(正常値 ):50~1200mOsm/kg

体液量の評価で尿浸透圧の代用として使用します。前提条件を満たした場合(尿糖・造影剤・マンニトールいずれもなし)に尿比重は尿浸透圧と相関関係にあり、尿比重が”0.010″増えるごとに尿浸透圧が”350mOsm/kg”上昇すると覚えます(下図参照)。尿浸透圧は別に詳しくまとめましたので、こちらもご参照ください。
前提条件:尿糖・造影剤使用・マンニトール いずれもない場合に尿浸透圧に代用

2:尿pH

尿pH正常値:4.5~8.0(通常はやや酸性 5.5-6.5)
通常は血中pHを反映しています。以下の要素で影響を受けます。

1:食事(postprandial alkaline tide)、薬剤、CO2、体液喪失など酸・アルカリの負荷・喪失 
2:腎臓の酸性化障害(尿細管障害)
3:膀胱内、検体採取後の細菌による変化 ウレアーゼ産生菌

食事の影響などもあり、尿pHは尿細管の酸塩基調整能を正確に評価することには適していません。正確に尿酸性化障害を評価する場合は、尿AG(アニオンギャップ)を使用します(特にAG非開大代謝性アシドーシスでの尿細管性アシドーシスの鑑別において)。

尿pHを臨床的に使用する場面は以下の2点が挙げられます。
・代謝性アシドーシスがあるのにpH>6.0:尿の酸性化障害を疑う(尿細管性アシドーシスの存在を疑う→尿AGを評価)
・pH=8.0 ウレアーゼ産生菌(Proteusなど)による尿路感染症(尿素が分解されアンモニアが産生される)

3:尿蛋白

糸球体を通過する低分子蛋白はそのほとんどが尿細管で再吸収されるため、通常尿中に排泄される蛋白は尿細管から分泌されるTamm-Horsfall蛋白が中心で量は40~80mg/日程度です。

タンパク尿の種類は4種類挙げられます。
1:糸球体の透過性亢進:アルブミン *糸球体疾患はアルブミン尿を認める
2:尿細管障害による再吸収低下:β2ミクログロブリン
3:血中異常蛋白増加:BJP(Bence-Jone protein)
4:膀胱炎、腫瘍などの下部尿路疾患での血液の尿への混入:IgG

3.1:尿定性(試験紙法)

これらのタンパク質のうち尿定性(試験紙法)で検出するのは、尿中アルブミンだけです。免疫グロブリンやBJPは検出できないため注意が必要です。
偽陰性:免疫グロブリン、Bence Jonesタンパク

3.2:尿蛋白/クレアチニン比

1日のクレアチニン排泄量が概ね1g/日と仮定し(クレアチニン産生量=排泄量として、1日産生量は約20mg/kg/日のため、体重50kgの人は産生量=排泄量=1g/日となります。)、/gCreで評価することで、蓄尿をしなくても部分尿でおおよその1日蛋白排泄量を推定することが出来ます。
このように1日のクレアチニン量を1g/日と仮定しているため、この前提条件が適応できない場合(以下)は評価が不十分になります。

前提条件(以下がないこと)
1:筋肉量が多い、少ない場合では過小、過大評価
2:AKI→尿中Cre減少するため尿中たんぱく/尿中Creを過大評価

1日尿中たんぱく排泄量(部分尿での推定:g/gCre or 蓄尿:g/日)
・0.15g/日以下:正常範囲内
・0.15~0.49g/日:軽度たんぱく尿
・0.50g/日以上:高度たんぱく尿
・3.5g/日以上:ネフローゼ症候群 の基準

糖尿病の患者においては、尿たんぱくのうち微量アルブミンを測定することが糖尿病性腎症の早期評価に有用のため、微量アルブミンを測定する。

*参考:起立性蛋白尿
・臥位では蛋白尿を認めないが、立位では蛋白尿を認める(病的ではない)
・機序は解明されていないが、糸球体の血行動態の変化や左腎静脈の大動脈と上腸間膜動脈との間での狭窄が原因の可能性がある
・早朝尿で尿蛋白が陰性であることを確認すると診断できる

4:尿潜血

尿潜血反応はヘモグロビン、遊離ヘム蛋白を検出するため、血尿・ミオグロビン尿・ヘモグロビン尿で陽性になります。基本ではありますが、尿潜血反応(+)≠血尿に注意しましょう。血尿がどうかの評価には尿沈渣でRBCが検出されるかどうかが必要です。
尿潜血
偽陽性:ミオグロビン尿(横紋筋融解)・ヘモグロビン尿(血管内溶血) 、薬剤(サリチル酸、サルファ剤、メトロニダゾール)など
偽陰性:アスコルビン酸

血尿の原因は大きく糸球体性と非糸球体性に分類されます。
1:糸球体
2:非糸球体:腫瘍・結石・感染症

糸球体性か非糸球体性かの評価にはRBC円柱・RBC形態・凝血があるかどうかの3点から判断します。 以下に尿潜血(+)からの鑑別フローチャートを載せましたのでご参照ください。

5:円柱の評価

円柱はどのようにして形成されるのでしょうか?尿細管から分泌されるたんぱく質が尿細管を鋳型として固まることで円柱が形成されます。
基質:Tamm-Horsfallムコ蛋白(Henle上行脚から分泌される)
部位:遠位尿細管(流速↓、pH↓)、集合管も同様

何も含まれていない円柱を「硝子円柱」と表現し、病的意義はありません。
これを鋳型に細胞成分が含まれたり、尿細管上皮が含まれることで円柱の名称が決まります。
・RBCが含まれると「赤血球円柱」となり、糸球体での炎症を示唆します。
・WBCが含まれると「白血球円柱」となり、糸球体や尿細管での炎症を示唆します。
・卵円形脂肪体が含まれると「脂肪円柱」となり、卵円形脂肪体と同様高度のタンパク尿を示唆します。
・尿細管上皮が障害されて含まれると「上皮円柱」となり、尿細管障害を示唆します。これが尿細管上皮細胞が変性すると顆粒状になり「顆粒円柱」となり、さらに障害が進行すると「ろう様円柱」「幅広円柱」となります。

このように円柱は糸球体の状態評価に非常に重要です。下記にまとめたので参照してください。

6:尿ウロビリノーゲン・ビリルビン

胆道系の状態を間接的に知る情報として尿ウロビリノーゲン・ビリルビンを利用します。

尿中ウロビリノーゲン
・(-):胆道系の閉塞(ウロビリノーゲンが供給されない)
(±):正常値(生理的な尿中排泄分)
・(2+):便秘、SBO(便中排泄が減少する) or 溶血 (ウロビリノーゲンの共有量が増加)

尿中ビリルビン
・(-):正常
(+):直接ビリルビンの上昇(間接ビリルビンは血中Albと結合しており、糸球体濾過されないため尿中では測定できません。)

ビリルビン代謝の経路を下図に示します。(下図で”U”がウロビリノーゲンを意味しています。)ウロビリノーゲンは腸肝循環から一部体循環に入り、正常でも尿中に検出されます。

7:尿ケトン

ケトン体にはアセト酢酸、βヒドロキシ酪酸、アセトンの3種類があり、尿定性ケトン検査ではニトルプルシド反応で「アセト酢酸」を主に検出します(βヒドロキシ酪酸は検出しない)。DKA、AKAでは主に「βヒドロキシ酪酸」が上昇するため、アセト酢酸を検出尿ケトン検査では陰性となってしまう場合がありうることに注意が必要です(下図のケトン体代謝参照)。このため、正確にケトン体の評価をしたい場合は血中ケトン体の測定が必要です。

DKAでinsulin治療中はβヒドロキシ酪酸がアセト酢酸に変換されていくため、治療と共に尿中ケトン体反応が強くなる場合があり、尿ケトン検査は治療効果判定には有用ではない。

8:尿糖

糸球体で濾過されたぶどう糖はほぼ全て尿細管で再吸収され(SGLT1:10%, SGLT2:90%)、尿中にはほとんど排泄されません(下図 赤い球:ぶどう糖を表現)。 SGLT2阻害薬は糖再吸収を阻害することで血糖値を下げる働きをしています。

通常は尿細管の再吸収の閾値を超えることはありませんが、
1:血糖値が180mg/dL以上の場合
2:尿細管機能障害(特に近位尿細管)で再吸収の閾値が低下
上記の場合は尿中に糖が排泄されます。尿試験紙法ではこの尿糖を検出しています。