原因鑑別
1:心臓
・不整脈:発作性心房細動、発作性上室性頻拍、期外収縮、心室性不整脈
・虚血性心疾患、心筋症、心不全
・肺塞栓症
2:全身疾患
・貧血 *貧血全般に関してはこちらをご覧ください
・自律神経障害
・内分泌:低血糖、甲状腺機能亢進症、褐色細胞腫、妊娠
・中毒/薬剤:交感神経賦活、コカイン、カフェイン、アルコール離脱、β遮断薬中断
3:精神
・精神:パニック障害、不安障害、うつ病
ポイント
・患者さんの訴える自覚症状の「動悸」≠「不整脈」であり、脈が強く打つ感じも動悸になる。実際に動悸の様子を患者さんに手で叩いてリズムを再現してもらうのが良い。
・脈が飛ぶ感じ:期外収縮(心房性、心室性)
・脈のリズムがばらばら:心房細動
・突然始まり突然終わる:リエントリー機序の不整脈(AVRT, AVNRT) *narrow QRS tachycardiaに関してはこちらにまとめがあるのでご参照ください。
・脈が強く打つ感じがある:不整脈では無い可能性もある
・確認する事項:労作・安静時の関係、体位による変化
・red flag:めまい、失神を認める場合(心室性不整脈の可能性)。
検査
・ABC確認
・12誘導心電図
・採血検査:血算(貧血)、生化学(電解質)、血糖値、甲状腺機能(TSH, FT4)、BNP、心筋逸脱酵素
・心エコー検査
*ホルター心電図(外来):不整脈と症状が起こった時間帯の対応関係が重要。ホルター心電図のみでは不整脈は除外しきれない。
*参考:パニック障害
・「予期せずに」突然誘因なく不安障害が起こり、多くの場合身体症状(呼吸困難、動悸、冷や汗、震え、嘔気、胸部不快感、手が熱くなる冷たくなるなど)を伴う。数十分で身体症状は改善するが、死への恐怖や不安が強く残る。この身体症状のため精神的な原因と患者は思わず精神科ではなく内科を受診することが多い。
・予期不安:発作の間欠期もいつまた発作生じるかという不安「予期不安」があり、日常生活に支障が生じる場合がある。予期不安はパニック障害の診断に極めて重要。予期不安を伴わない不安障害はその他の精神疾患に随伴することも多い。
・誘因:カフェインやニコチン摂取、また睡眠不足などが誘因となる場合があるため、これらの生活指導を行う。
・治療:患者さんは精神科ではなく身体疾患を気にして内科を受診する場合が多く、本疾患はうつ病合併も多くかつ治療介入が可能なためきちんと専門的治療につなげることが重要(精神科受診)。
参考文献:Am Fam Physician. 2017;96(12):784-789.、「内科診断レファレンス」著:上田剛先生