1:高P血症の病態生理
PはATP産生・解糖系など人体の機能維持に非常に重要な役割を担っています。このため人体はP欠乏に対してPを保持する機序を発展させてきましたが、逆にP過剰に対する有効な防御方法を身に付けていません。
高P血症による直接的な症状はありませんが、血管平滑筋細胞の骨、軟骨細胞への形質転換が起こる骨ミネラル代謝異常(血管石灰化・動脈硬化促進など)が問題となります。高P血症はCKD患者(非透析・透析患者いずれも)において予後が悪いこととと相関関係にあります。
P代謝に関しては低P血症でまとめましたものを再掲します。
2:原因
特に腎機能低下が重要でCKDにおいてeGFR<25~40ml/min/1.73mm2以下になると高P血症になり始めることが分かっています。高P血症はCKD患者(非透析・透析患者いずれも)において予後が悪いこととと相関関係にあります。
3:治療
腎機能正常の患者では無理に治療介入する必要はありません。腎機能障害患者(特にCKD)で以下の介入を検討します。
■治療目標
非透析患者:P<4.5 mg/dL以下
透析患者:P=3.5~5.5 mg/dL
1:食事療法 P制限食 ~900mg/日
一般的にタンパク質含有が多いもの(肉・卵・乳製品)にPは多く含有されます。量だけでなく、食品添加物は無機Pが多く、無機Pは吸収率が高いため、加工食品や清涼飲料水(特にコーラ)などはP摂取量が結果多くなるため注意が必要です。食事は総合的な栄養が重要なため、P制限のために必要以上に肉・卵摂取を制限することは逆に蛋白質不足で害になる可能性があるため注意が必要です。
ただ食事療法により患者の予後改善を示した前向き研究はありません。
2:薬剤治療 P吸着薬
薬剤治療の難しい点は高P血症と予後が悪いこととの相関関係はありますが(非透析患者・透析患者いずれも)、非透析患者では血中P濃度を下げることで予後が良くなるという因果関係は示せていない点にあります(透析患者ではRCTがないため分からない)。このため出来るだけ上記のP制限食で対応するのが望ましいです。
P吸着薬の懸念点としては
・polypharmacy:特にCKDの患者は薬剤の種類がかなり多くなるのでP吸着薬もpolypharmacyに加担してしまうリスクがあります。
・Ca含有薬でのCa負荷(高Ca血症):Ca非含有が望ましいですが、Ca非含有薬は高価である点が難点です。
が挙げられます。
■カルシウム含有P吸着薬
一般名:沈降炭酸カルシウム
商品名:カルタン®
製剤:250mg or 500mg/1T or 細粒
処方例:カルタン® 500mg 6T3x
■カルシウム非含有P吸着薬
一般名:炭酸ランタン
商品名:ホスレノール®
製剤:250mg or 500mg/ 1T or 包(顆粒分包)
処方例:
開始:ホスレノール® 250mg 3T3x(=750mg/日)
最大投与量:2250mg/日
以下は私使用経験がなく参考までにカルシウム非含有P吸着薬として体裁します。
一般名:クエン酸2鉄水和物
商品名:リオナ®
一般名:セベラマー
商品名:レナジェル®・フォスブロック®
参考文献
・Up to date (2020/4/12閲覧)