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女性と片頭痛

片頭痛は疫学的に女性が男性よりも約3倍程度罹患頻度が高いです。エストロゲン濃度の変動と頭痛が関連するといわれています(逆にホルモンが安定すると頭痛増悪は少なく、閉経後は軽減する)。月経関連、妊娠、授乳など女性の方ならではの片頭痛管理上の問題点もあり簡単にまとめます。片頭痛一般に関してはこちらをご参照ください。

月経関連(menstrually related migraine)

・月経期に50-60%以上で片頭痛増悪(月経のみで片頭痛を生じるのは<10%)
・月経前2日と後3日の計5日間
・原理としてはestrogen濃度の変化(特にestrogen濃度が低下するestrogen withdrawal hypothesis)が問題となる
・臨床上の特徴は①症状が強く、②治療抵抗性が多く、③前兆を伴わないことが多い(*例え元々の片頭痛が前兆を伴うタイプであったとしても)ことがポイントです。
・月経の前後5日間で”mini-prevention”として5日間NSAIDs+トリプタン製剤を併用する方法あり
→トリプタン製剤は特にナラトリプタン(アマージ®) 2.5mg 2錠分2 5日間投与

以下図Neurology ® 2016;87:49–56より引用(free articleのままそのまま引用)

妊娠関連

・妊娠中に新規に片頭痛を発症する場合は前兆を伴う場合が多い
妊娠第2,3期は頭痛が軽減する(60-80%の症例で発作が軽減または寛解する)→この時期は予防薬が不要になることが多い *特に前兆を伴わない片頭痛が、前兆を伴う片頭痛よりも改善しやすい(前兆あり vs 前兆なし:改善または寛解 43.6% vs 76.8%, 変化なし 48.7% vs 22.2%, 悪化 7.7% vs 1%) Cephalalgia 2000;20:701-707.
出産前後で増悪する:出産直後1週間以内1/3、1か月以内は2/3が発作を経験する
・母乳による授乳は片頭痛再燃を抑制する効果がある(プロラクチンにより排卵抑制、エストロゲン濃度安定化作用があるためとされている)

*片頭痛の妊娠による自然経過の報告(prospective) Cephalalgia2003; 23:197–205.
・49例の片頭痛患者(前兆あり2例、前兆なし47例)
・改善/寛解:第1期 46.8%/10.6%, 第2期 83.0%/53.2%, 第3期 87.2%/78.7%
・産後:1週間以内再発 34.0%, 1か月以内再燃 55.3%

・妊娠中+片頭痛(特に前兆を伴うもの)は過凝固状態になるため血管障害のリスクが増大する点も注意

急性期治療

アセトアミノフェン+メトクロプラミドが基本(特異的治療法がある訳ではない)
・トリプタン製剤に関しては近年安全に使用できるのではないか?というデータがでてきているため今後変わる可能性もある Headache 2021;61(1):11-43.

予防薬

・プロプラノロール以外(カルシウム受容体拮抗薬やバルプロ酸)は妊娠中は使用できません。このため薬剤が相当限られる点がネックです。ただ前述の通り妊娠第2,3期は通常ホルモン濃度安定化に伴い頭痛も安定化するためこの時期は予防薬が必要にならない場合があります。
・CGRP抗体(こちら)は現行は使用できないが、安全であるデータあり Cephalalgia 2021;333102420983292 doi:10.1177/0333102420983292

参考文献
・CONTINUUM (MINNEAP MINN)2021;27(3, HEADACHE):686 – 702.