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CGRPモノクローナル抗体:片頭痛予防薬

片頭痛予防薬として新たに出現してきた薬剤です。片頭痛一般に関してはこちらをご参照ください。調べていきながら少しずつ内容をupdateしていきます。

作用機序

カルシトニン遺伝子関連ペプチド (calcitonin gene-related peptide: CGRP)シグナルに関する機序です。
・CGRPは三叉神経から放出され、血管平滑筋に作用し血管拡張をする作用があります(三叉神経血管反射)。片頭痛患者さんの発作中は血中のCGRP濃度が放出/上昇していることが知られており、この経路をブロックすることで片頭痛の治療につなげられるのではないか(また三叉神経節と硬膜はBBBを欠いており薬剤が到達することが出来るのではないか?)、というコンセプトのもとに薬剤が開発されました。
・CGRPに対して直接抗体で作用する薬剤(ガルカネズマブ・フレマネズマブ)と、CGRPの受容体に対して抗体で作用する薬剤(エレヌマブ)が存在します。

薬剤分類・まとめ

ガルカネズマブ(商品名:エムガルティ)

適応:最適使用推進ガイドライン(厚生労働省) こちら

【患者選択について】
投与の要否の判断にあたっては、以下の 1.~4.のすべてを満たす患者であることを確認する。

  1. 国際頭痛分類(ICHD 第 3 版)を参考に十分な診療を実施し、前兆のある又は前兆のない片頭痛の発作が月に複数回以上発現している、又は慢性片頭痛であることが確認されている。
  2. 本剤の投与開始前 3 カ月以上において、1 カ月あたりの MHD(Migraine Headache Days) が平均 4 日以上である。
  3. 睡眠、食生活の指導、適正体重の維持、ストレスマネジメント等の非薬物療法及び片頭痛発作の急性期治療等を既に実施している患者であり、それらの治療を適切に行っても日常生活に支障をきたしている。
  4. 本邦で既承認の片頭痛発作の発症抑制薬(プロプラノロール塩酸塩、バルプロ酸ナトリウム、ロメリジン塩酸塩等)のいずれかが、下記①~③のうちの 1 つ以上の理由によって使用又は継続できない。
    ① 効果が十分に得られない
    ② 忍容性が低い
    ③ 禁忌、又は副作用等の観点から安全性への強い懸念がある *太字は管理人による強調

【投与の継続・中止について】
本剤投与中は症状の経過を十分に観察し、本剤投与開始後 3 カ月(3 回投与後)を目安に治療上の有益性を評価して症状の改善が認められない場合には、本剤の投与中止を考慮すること。またその後も定期的に投与継続の要否について検討し、頭痛発作発現の消失・軽減等により日常生活に支障をきたさなくなった場合には、本剤の投与中止を考慮すること。なお、日本人を対象とした臨床試験において、本剤の 18 カ月を超える使用経験はない。

禁忌

本剤のアレルギーのみ  *併用禁忌もなし

副作用

注射部位疼痛、注射部位反応

在宅自己注射

保存:冷所保存が必要
準備:打つ前に30分前冷蔵庫から取り出して室温へ(目的:注射での疼痛緩和・薬効に影響はない)
注射部位:腹部や大腿など *自己注射の場合上腕や臀部は難しい
投与手順
1:キャップを取り外す
2:ロックを解除する
3:注射ボタンを押す 5-10秒後に外す
*針の捨て方:家では廃棄用ボックスに入れていただき、それを病院へ持ってきていただく
*2022年5月から在宅自己注射が可能に

*参考:年齢に関して最適使用推進ガイドラインと添付文章は記載なし。臨床試験は18歳以上がinclusionになっている。薬事は成人の定義は15歳以上となっている。

臨床試験

CGAP試験:国内第Ⅲ相 Cephalalgia 2018;38:1442

慢性片頭痛患者に限定した前向き研究 “REGAIN” Neurology ® 2018;91:e2211-e2221.