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アルツハイマー型認知症と「てんかん」

両者の関係性に関して論文が発表された順番に紹介していきたいと思います。

■マウスでのAPP導入による脳波の検討 Neuron. 2007 Sep 6;55(5):697-711.

・どのようにてんかん原性を獲得するか?:Aβ→神経細胞の異常興奮→てんかん発作
・なぜ認知機能が悪化するか?:神経細胞の過剰興奮により代償性抑制メカニズムの発動→神経回路network機能不全→認知症の悪化

■アルツハイマー型認知症とてんかん JAMA Neurol. 2013;70(9):1158-1166.

・アルツハイマー型認知症にてんかんを合併しやすいことは神経内科医には常識ですが、非神経専門医の先生方にはあまり馴染みがない事実かもしれません。アルツハイマー型認知症の1.3~6.1%にてんかんを合併すると報告されています。また10-22%はunprovoked seizureを発症するとされています。
・てんかん合併例は非合併例と比較して認知症進行が早く、剖検例でも神経脱落が多いとされています。
・認知症が軽度の発病早期段階にてんかんを合併しやすい(下図)。

・57%はMMSE 24/30点(下図)。

・てんかん合併例に対して抗てんかん薬を早期から導入することによって病気の経過を修飾することができるかどうか?に関してはこれからの検討が必要。

■無症候性のてんかん性活動を認めると、ADの進行を早める ”Incidence and Impact of Subclinical Epileptiform Activity in Alzheimer’s Disease” ANN NEUROL 2016;80:858–870

・42.4%にsubclinicalな無症候性のてんかん性放電を認めた。
・てんかん性放電を伴うADは進行がはやい

■アルツハイマー型認知症患者さんでは海馬に無症候性のてんかん性活動が生じていることを卵円孔電極により証明した症例報告 “Silent hippocampal seizures and spikes identified by foramen ovale electrodes in Alzheimer’s disease” Nat Med . 2017 Jun;23(6):678-680.

・2例報告頭皮脳波上では異常所見を検出できなかったが、卵円孔電極により海馬に無症候性てんかん性活動が生じていることを確認(睡眠中)。
→頭蓋上脳波電極かつ睡眠脳波ではない場合はてんかん性放電を充分検出できていないかもしれない

■アルツハイマー型認知症患者さんに抗てんかん薬を投与することは有用なのか?というテーマに答えるRCT ”Effect of Levetiracetam on Cognition in Patients With Alzheimer Disease With and Without Epileptiform Activity” JAMA Neurol. 2021;78(11):1345-1354.

対象患者:AD34名(MRI+CSFで確定診断)
デザイン:ランダム化プラセボ比較クロスオーバー試験
介入:LEV250mg vs placebo
評価項目:Stroop課題(色と文字)、仮想ルート学習課題(ゲームのような道順を覚える)てんかん性放電を有するADの認知機能を改善する