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下垂体の解剖と画像

下垂体の解剖と画像はややこしいため勉強した内容をまとめました。今後徐々に内容を追加していきます。

解剖

・下垂体はトルコ鞍(sella turcica)内(蝶形骨により形成)に位置する
・上方:鞍隔膜 ・両側:海綿静脈洞 *海綿静脈洞と下垂体の間には硬膜が存在しないため、下垂体病変は海面静脈洞へ物理的に波及しやすい(下図)

・解剖:視床下部-正中隆起-下垂体茎(柄)(pituirary stalk)-下垂体 *視床下部と連絡している
・前葉(腺性下垂体: adenohypophysis):GH・MSH・FSH・LH・PRL・ACTH・TSH
・後葉(神経性下垂体: neurohypophysis):バソプレシン・オキシトシン

血流支配
前葉:上下垂体動脈→下垂体門脈 *前葉には動脈血が直接流入しない
・後葉:下下垂体動脈
下垂体~下垂体茎~正中隆起はBBB(blood-brain barrier)を有さない

画像所見

・MRIが1st choiceであり、下垂体のdynamic 造影MRIがgold standardである(通常の撮像法では下垂体は小さい構造であり限界があるため3mm以下の薄いスライス圧で撮像が必要)。
矢状断・冠状断が評価に有用である。

正常下垂体

信号変化
・前葉:T1WI等信号, T2WI等信号(脳実質と比較) *産褥期・妊娠後期では前葉がT1WI高信号を呈する場合がある
・後葉:T1WI高信号 “bright spot”(神経分泌顆粒: オレキシン/バソプレシンを反映)・脂肪抑制で抑制されない・正常でも~20%はT1高信号を認めない場合がある

造影効果
下垂体~下垂体茎~正中隆起はBBB(blood-brain barrier)を有さないため・均一に造影される
・下垂体茎から近位→遠位へ造影される

大きさ
・上面:上に凸、平坦、下に凸など様々 empty sellaeの影響もある
男性・閉経後女性:最大8mm
・思春期:再腫大(女児〜10mm、男児〜8mm)し、女性では凸型になる。妊婦や産褥期にも腫大する。
・高齢期:性差なし
*若年女性は生理生理的な過形成があるため注意

empty sella

病態:鞍隔膜形成不全
・元々鞍隔膜(海綿静脈洞の上面を覆う硬膜)は形成に個人差がある
・鞍隔膜が無いことでトルコ鞍にて下垂体が髄液の拍動を上方から強く受ける→くも膜下腔が下垂→下垂体が上から押される形になり菲薄化→下垂体茎の周囲が抜ける(CSFと同じ信号へ)(鞍上槽がトルコ鞍内まで入り込んでいる)

鑑別

頻度別

“Big 5” 全体の75-80%を占める
1: macroadenoma
2: meningioma
3: aneurysm
4: craniopharyngioma
5: astrocytoma
*その他 rathke cleft, arachnoid cyst, germinoma, lymphoma, metastasis etc <1-2%

部位から鑑別

1: トルコ鞍内病変

・empty sella:上述の通り 5-10%
pituitary hyperplasia: 若年女性、主産授乳期はcommon  *まれな原因:低髄圧症(こちら参照), dAVF
下垂体腺腫 (macro/micro adenomas):原因最多
 1. 大きさによる分類
  ・microadenoma<10mm:機能性が多い
  ・macroadenoma>10mm:非機能性が多い(物理的圧迫症状が主体)
 2. 機能性 or 非機能性による分類
  ・機能性 prolactinoma > GH > Cushing
  ・非機能性

2: トルコ鞍上病変

point 1:年齢が鑑別上重要
・小児:craniopharyngioma, pilocytic astrocytoma
・成人:下垂体腺腫(macroadenoma)の上方伸展(不均一な造影効果) 50%・最多>meningioma 10%, aneurysm 10% *小児ではrareである

point 2:画像所見
・嚢胞:非腫瘍性が多い 第三脳室拡大・ラトケ嚢胞・arachnoid cyst, 炎症性嚢胞
・石灰化病変
 高齢者:動脈硬化・動脈瘤・meningioma
 小児:craniopharyngioma
・出血:macroadenomaの出血・下垂体卒中(こちら)・血栓化した動脈瘤 “blooming”

3: 下垂体茎の問題

・正常構造:太さ <2mm(横断像)・上から下へ移行するにつれて細くなる
下垂体茎腫大の鑑別
 小児:組織球症, germinoma
 成人:リンパ球性下垂体炎こちら)、サルコイドーシス、リンパ腫、転移
・尿崩症を呈することが多い
・画像上造影効果は役立たないことが多い(生理的にBBBを欠くため造影される)

参考文献
・Diagnostic imaging “Brain”