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Duchenne型/Becker型筋ジストロフィー muscular dystrophy

Duchenne muscular dystrophy: DMD Duchenne型筋ジストロフィー

筋疾患一般へのアプローチに関してはこちらをご参照ください。

遺伝形式

遺伝形式:XR Xp21ジストロフィン遺伝子 細胞膜直下のジストロフィン蛋白欠損→膜不安定性により進行性の筋繊維変性
筋ジストロフィーの中で最も頻度高い人口2~3人/10万人
女性も症候性保因者の場合がある
*Becker muscular dystrophy: BMD Becker型筋ジストロフィー 完全に欠損しない・軽症例

臨床像

・胎生期・周産期に臨床症状を示す例はほとんどない
・3~5歳ごろに易転倒性運動能力の遅れ(他の子供と比べて)から指摘
腓腹筋偽性肥大を認める(舌の偽性肥大も認める・咬合不全の原因となる)
・Gowers徴候(Gowers’ sign)を認める(大臀筋と大腿四頭筋の筋力低下)

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・5~6歳で運動機能はピークに達する、その後徐々に筋力低下が進行
・CK値は著明に上昇する(10,000/IU以上)
・selectivity pattern: 縫工筋・薄筋・半腱様筋・半膜様筋が保たれる(それ以外の筋肉がびまん性に障害される)
*筋障害の分布に関してはこちらのサイトをご参照ください。

予後・合併症

・多くは10歳前後で歩行機能を失う、それ以降に側弯、呼吸筋力低下、心筋症を呈する
・現在は呼吸ケアの進歩により死因の1位は心不全
心筋障害はBecker型の方が重度の心筋障害を呈しやすい(Becker型は16歳までに15%, 40歳までに75%が心筋障害を呈する)*女性のキャリアでも呈する場合があり注意が必要
・定期的な心機能スクリーニングが必要・ACE阻害薬/ARBが10歳以上で推奨
呼吸筋障害の最初は夜間低換気を呈し、朝の頭痛や睡眠障害を呈することがある(肺活量の低下はΔ8%/年)。また咳嗽力が低下すると肺炎などの合併頻度が増加するため注意が必要。
→自分でバッグを膨らませる訓練を行う
認知機能障害は特に見過ごされていることが多く注意が必要 自閉症スペクトラム、学習障害(約1/3がIQ<70)、ADHDや強迫性障害(通常人口の4倍)なども合併する

検査

■遺伝子検査:MLPA法でジストロフィン遺伝子解析 MLPA(multiple ligation-dependent probe amplification)
→複数エクソン欠損/重複が確認されれば確定診断(事前の遺伝カウンセリング必要)
→変異が検出されない場合は筋生検でジストロフィン蛋白の発現を免疫学的に解析する
■筋病理:ジストロフィン蛋白発現の異常を証明・典型的な壊死再生像を呈する *IMNMが緩徐な経過をとる場合もあり、すると筋ジストロフィーとの鑑別も重要となる

治療

■薬物:ステロイド治療
・効果:歩行可能な期間を1.5-2年延長、上肢筋力維持、側弯のリスク軽減、心肺機能の改善
・4~7歳の期間に経口ステロイドを開始する 海外では0.75mg/kg/日とされているが、実際の処方量は副作用などもありさまざま
*今後exon skippingなどの遺伝子治療の技術進化に期待

■理学療法:拘縮予防(毎日のストレッチ)

■整形外科アプローチ:側彎症に対する手術(コルセットのみでの予防は困難)

参考文献
・CONTINUUM (MINNEAP MINN) 2019;25(6, MUSCLE AND NEUROMUSCULAR JUNCTION DISORDERS):1619 – 1639.