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脊髄小脳変性症 SCD:spinocerebellar degeneration

分類・疫学

日本の疫学に関してCerebellum. 2008;7(2):189-97.より引用。

■脊髄小脳変性症の分類

1:孤発性
・多系統萎縮症 MSA-C
・皮質性小脳萎縮症 CCA(cortical cerebellar atrophy)

2:遺伝性
(1): AD-SCD
純粋小脳型(pure cerebellar)SCA6 > 31 *通常pure cerebellarの方が緩徐に進行する
多系統障害型MJD/SCA3>DRPLA>SCA1,2 *代表的なもののみ記載
(2): AR-SCD
・眼球運動失行を伴う運動失調症
AOA1:低アルブミン血症を伴う
AOA2:末梢神経障害とα-AFP上昇
・ビタミンE単独欠乏性運動失調症 など
(3): X染色体連鎖性
・FXTAS

3:遺伝性痙性対麻痺

*参考:繰り返し配列の異常伸長に伴う主な神経筋疾患まとめ(https://www.amed.go.jp/news/release_20190723-01.htmlより引用)

■その他臨床上の特徴 番号のみで表記

Slow saccadeDown beat nystagmus眼球運動制限黄斑変性
1 2 3 7 2861 2 3 287
Parkinsonismdystoniatremordyskinesiamyoclonus舞踏病ミオキミア
1 2 3 12 17 19/213 14 172 8 12 14 15 19/21 20 27 42272 14 19/21 42 DRPLA1 17 DRPLA3 5
認知機能てんかん聴力低下錐体路末梢神経障害
1 2 3 10 12 13 14 17 19/21 27 36 DRPLA10 17 DRPLA31 361 2 3 5 7 8 10 11 12 13 14 15 28 301 2 3 4 6 8 12 18 22 25 27

■鑑別上重要なポイントまとめ

・表現促進現象(anticipation):DRPLA, SCA7, SCA1,2,MJD
・表現促進現象なし:SCA6, 31
・錐体路徴候:SCA1, MJD, SCA2, SCA7
・筋萎縮:MJD, SCA1, SCA2
・パーキンソニズム/chorea/dystonia:SCA2, MJD, SCA17, DRPLA
・ミオクローヌス:DRPLA, SCA14
・slow eye movement:SCA2
・輻輳障害とfacial myokimia:MJD
・down-beat nystagmus:SCA6 その他:リチウム/フェニトイン中毒やChiari奇形もdown beat nystagmusの原因として有名
・認知症:若年DRPLA, SCA2, SCA17、高齢MJD, SCA6,
・発作性小脳症状:SCA6, EA2, EA1

各論

多系統萎縮症こちらにまとめがありますのでご参照ください。

遺伝性痙性対麻痺こちらにまとめがありますのでご参照ください。

FXTASこちらにまとめがありますのでご参照ください。

MJD/SCA3:Machado-Joseph病

・遺伝子:MJD1遺伝子におけるCAGリピート異常伸長
・疫学:AD-SCDの原因として最多
・臨床特徴:錐体路徴候、錐体外路徴候、びっくり眼、眼球運動障害(早期から輻輳障害、上転障害を認める点が特徴的)、facial myokimia、末梢神経障害 発症は30-40歳前後が多い
・自律神経障害:排尿障害などの自律神経障害が目立つ症例が存在する→SCDの中では最も自律神経障害に注意が必要である自律神経障害を認める場合はあるが、主症状となることは少ない(主となる場合はMSA考慮必要)
・分類
1型:若年発症 錐体路症状+ジストニアなどの錐体外路症状を中心とする。
2型:成人発症 眼振、失調+錐体路徴候を中心とする。
3型:高齢発症 末梢神経障害筋萎縮を中心とする。
4型:いろいろ

*参考:びっくり眼は眼球突出ではなく、眼瞼後退(eyelid retraction)によるものとされています(驚いた時に上眼瞼が引かれることで白目が見えることに由来)。下図の通りMJD/SCA3だけに特異的な所見ではなくその他のSCDでも認めることが指摘されています。

DRPLA:歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(dentatorubral-pallidoluysian atrophy)

・遺伝子:ATN1(DRPLA)遺伝子のCAGリピート伸長・表現促進現象(特に父親から)を認める特徴がある *このため一見明らかな家族歴がなくてもDRPLAを積極的に疑う必要がある
・疫学:MJD/SCA3 > SCA6 > DRPLAと頻度が高い
・臨床特徴:発症年齢により臨床像が異なる
 遅発成人型(40歳以降発症):小脳失調・認知症 *高齢発症の場合画像からは診断が難しい場合もある
 早期成人型(20-40歳発症):てんかん 白質病変は遅発成人型より少なく、画像で全く異常所見を示さない場合もあり注意
 若年(20歳未満):ミオクローヌス、てんかん、精神発達遅滞

■60歳以降発症のDRPLA10例の臨床像・画像所見のまとめ Journal of Neurology (2018) 265:322–329
・臨床像:全例初発症状は小脳失調(MRI時点では5/10人はその他の症候なし)
・画像:萎縮は脳幹、上小脳脚、小脳で全例認め、異常信号は脳幹(下オリーブ核、橋、中脳)、視床、小脳白質により多く認める。

SCA6

・遺伝子:VGCCα1AサブユニットCACNA1A遺伝子内のCAG repeat配列異常伸長・表現促進現象は認めない
・疫学:pure cerebellarの臨床病型の中で最多(AD-SCDの中ではMJD/SCA3の次に多い)・発症年齢:50才前後が多い(比較的高齢発症)
・特徴:down beat nystagmus・頭位変換時の動揺視・発作性の小脳失調の増悪
*自験例でも「頭位変換時のめまい」のみから発症した症例があり(間欠期には無症状)、病歴だけだとBPPVを繰り返しているとしか思えないような発症様式でした。頭位変換時のめまいだけから診断することは困難かもしれませんが特徴的な病歴として重要と思います。
・画像:小脳虫部上面に強い萎縮(半球は軽度) *脳幹、大脳には萎縮を認めない

*SCA6 46例retrospective 多施設共同 3年間 Orphanet Journal of Rare Diseases2014,9:118
SARA 1.33±1.4点/年
発症:48.0才(31-66才)
発症から車いす:中央値24年
車いす年齢:77才

SCA31

・日本で特に頻度が多いpure cerebellarの脊髄小脳変性症として重要・SCA6よりも発症がより高齢である点がポイント
*SCA31 44例の前向き追跡 Cerebellum (2017) 16:518 – 524
・発症:58.5才
・79.4才:車いす
・SARA増悪 0.8±0.1点/年

SCA36(Asidan)

・発症年齢(53.1±3.4歳):失調症状から発症し、運動ニューロン徴候・舌萎縮を併発する特徴がある。
・日本の広島県福山市芦田川周辺に集積地を認めている。NOP56遺伝子のGGCCTG遺伝子のリピート増加。
*参考文献:Neurology ® 2012;79:333–341 18人(9家系)の報告まとめ
*岡山大学病院神経内科さんのホームページ(こちら)に詳しいまとめがあります。

参考文献
・「脊髄小脳変性症・多系統萎縮症診療ガイドライン2018」 日本神経学会