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FXTAS: fragile X-associated tremor/ataxia syndrome 脆弱X関連振戦/失調症候群

FXTASに関して(私はまだ診断できたことがないのですが)、しばしば鑑別に挙げるためまとめます(ほとんどの内容をNeurology ® 2012;79:1898–1907より引用させていただきました)。2001年にHagermanにより報告されたまだ比較的新しい疾患概念です。

疫学/病態

原因遺伝子:FMR1 CGG repeat異常伸長(55-200回)
総称 FXDs: fragile X-associated disorders 脆弱X症候群関連疾患 以下分類
・FXTAS:脆弱X関連振戦/失調症候群(ここで取り上げる内容) *基本的には男性発症(保因者の女性で発症する場合もある)
・FXPOI:脆弱X関連早期卵巣不全

家族歴:43%に認めない
発症年齢:58.4±7.6歳

*日本で現在どの程度患者さんがいらっしゃるかはまだ不明です。

*参考:繰り返し配列の異常伸長に伴う主な神経筋疾患まとめ(https://www.amed.go.jp/news/release_20190723-01.htmlより引用)

臨床像 

一言でまとめると「中年以降の男性に発症する振戦→小脳失調」

企図時振戦:通常企図振戦から発症し、この段階では本態性振戦と診断される場合もある。
小脳失調:徐々に進行し歩行困難になる。

発症時の症状:企図振戦55%、小脳失調41%、認知機能障害27%、パーキンソニズム13%
現在の臨床兆候:失調91%(SARA 9.6点)、振戦86%、安静時振戦13%、パーキンソニズム64%(UPDRS part3: 16.5点)、遂行機能障害55%、MMSE26.6点、振動覚低下50%、アキレス腱反射消失50%、排尿障害35%、病的反射Babinski反射27%、
振戦のパターン:本態性振戦らしい35%、小脳性振戦29%、パーキンソニズムによる振戦12%
EMG:末梢神経障害81%(長さ非依存性 56%、長さ依存性 25%)

画像

・大脳萎縮 100%、小脳萎縮 95%、脳室周囲白質病変 95%、脳梁萎縮 80%
脳梁病変 68%
中小脳脚病変 64% *鑑別点として重要(中小脳脚病変 MCP に関してのまとめはこちらをご参照ください)。
・橋病変 68%
・小脳歯状核病変 35%

治療

現状は根本的な治療方法は存在しません。

私はまだ診断できたことがなく、ご経験のある先生ぜひお教えいただきたいです。現実的には本態性振戦の診断となった方が(おそらくこの時点だけで診断は難しい)、その後失調症状が出てきた場合に頭部MRI検査と合わせて(中小脳脚病変)臨床的にFXTASを疑い、家族歴がなくても遺伝子診断を積極的に行うという流れになるでしょうか・・・?

参考文献
・https://fragilex.org/understanding-fragile-x/fragile-x-101/