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ポンペ病 特に遅発型/成人型

病態

Pompe病(糖原病Ⅱ型)は酸性α-グルコシダーゼ(GAA: glucosidase acid alpha: ライソゾーム酵素)の欠損により細胞内にグリコーゲンが蓄積するARの遺伝性疾患で、特に骨格筋障害をきたします。

乳児型ポンペ病は肥大型心筋症、floppy infantを呈する疾患で、乳児型の病理はすべての筋繊維に空胞とamorphousの酸フォスファターゼ活性を持つ特徴的な空胞を認めるため、診断は難しくないですが、成人型(遅発型:LOPD(late-onset pompe disease)では臨床像の幅が広く、また病理所見も非典型的なので診断が難しい特徴があります。しかし、酵素補充療法が可能となったことから早期診断がとても重要です。

*筋疾患一般に関するアプローチに関してはこちらにまとめがあるためご参照ください。

下図はNeuropsychiatric Disease and Treatment 2016:12 713–717より引用。

臨床像

乳児型と異なり、慢性進行性経過をたどり非特異的な場合があり、さまざまな臨床像があるため積極的に疑うことが重要です。同じ遺伝子家系であっても症状が異なる場合があります。

特に重要なのは体幹筋が障害される点です(it is predominantly an axial myopathy!!)。体幹筋や横隔膜障害を反映して、呼吸障害が前景に立つことがある筋疾患として重要です。呼吸筋障害を反映して夜間換気量が減ることで呼吸性アシドーシスになり、早朝頭痛を呈する場合もあります。四肢の筋障害と体幹部の筋障害が解離している場合は一つ本疾患を疑うヒントとなります。普段腹筋の評価などはあまり日常診療でしないかもしれないので、ついつい見逃しやすいため注意です。

体幹筋で評価する部位
・舌:tongue
・頸部:neck
・腹筋:abdominal wall
・傍脊柱起立筋:paraspinal
・横隔膜:diaphragm

下図CTのように傍脊柱起立筋や横隔膜の萎縮が目立ちます(”Teaching NeuroImage:Axial muscle atrophy in adult-onset Pompe disease”より参照)。

*参考:呼吸筋障害を初発症状としうる筋疾患
・ポンペ病
・SLONM:こちらのまとめを参照

先天性:遅発型ポンペ、ネマリン
後天性:SLONM、抗ミトコンドリアM2ミオパチー

呼吸機能検査では座位で行うと呼吸補助筋を使用することが出来ますが、臥位では横隔膜しか使用することを出来ないためVCが座位と臥位で大きく異る点も特徴として挙げられます。

乳児型は心筋障害がありますが、成人型では心筋障害合併はまれとされています。

*ポンぺ病を疑うヒント
・原因不明の高CK血症
・原因不明の近位筋力低下
・四肢と比較して呼吸筋筋力低下が強い→糖原病を疑う契機となる
*心筋障害は比較的少ないことが多い(late-onsetの症例においては) no cardiac involvement
*診断が難しいことがある 症状出現から遅れることが多い
*早朝の頭痛→呼吸筋筋力低下の可能性

検査

・診断スクリーニング:乾燥ろ紙血検査→GAA活性測定

・呼吸機能検査

・心電図、心エコー検査

治療

酵素補充療法(ERT: enzyme replacement therapy):アルグルコシダーゼα
*治療介入可能な筋疾患(myopathy)として常に認識しておくべき疾患(特に早期診断が重要)と思います