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GPC グラム陽性球菌

1:分類

GPC(グラム陽性球菌)は大きく以下の3つにグラム染色の形態から分類されます。
1:GPC cluster: Staphylococcus コアグラーゼ産生 or コアグラーゼ非産生
2:GPC chain: 連鎖球菌(Streptococcus) or 腸球菌(Enterococcus)
3:GPC diplococcus: 肺炎球菌(Streptococcus pnemoniae)

特別な検査をしなくてもグラム染色でまずこの3つに分類できるので、まずどれに分類され、それぞれどの菌がありうるのかを把握しよう。以下にまとめ図を添付します。

2:血液培養からGPCが検出された場合

通常血液培養検査が陽性になると「血液培養検査からGPCが検出されました」と連絡が来ます。この場合にどのようにアプローチすれば良いかを解説します。まずは“GPC cluster”なのか?”GPC chain”なのか?を確認します。これは最初の段階で必ず形態的に判別可能なので、自分で顕鏡確認するか、もしくは細菌検査室に問い合わせて確認します。

■GPC clusterの場合

GPC clusterの場合は、コアグラーゼ試験の結果はすぐには出ないので、「最初の時点でS.aureusなのか?、CNSなのか?」の鑑別は出来ません。しかし、S.aureus菌血症の場合は重篤になりうるためS.aureus菌血症に準じて治療介入(抗菌薬バンコマイシン投与)を開始します(S.aureus菌血症に関してはこちらをご参照ください)。

その後S.aureusと分かり感受性が同定されれば、MSSA:セファゾリン、MRSA:バンコマイシン継続と抗菌薬選択をします。CNS(Coaglase negative staphylococcus)の場合はcontaminationの場合も多いので(単一セットからの検出は基本contaminatinoとして扱う)、個々の症例での臨床判断が必要になります(真の菌血症である可能性は10~35%であり,例えばカテーテル関連血流を疑う場合はCNSも十分起炎菌としてありうる)。CNSの中でもStaphylococcus lugdunensisは重篤な感染をきたす可能性があるため、注意が必要です(SABと同様に扱う)。CNSはバンコマイシンで治療します。

■GPC chainの場合

肺炎球菌はdiplococcusなので形態的にすぐ鑑別がつきますので問題ありません。その他の連鎖球菌(Streptococcus)と腸球菌(Enterococcus)は連鎖の数の長さの傾向がありますが、完全には鑑別することは難しい場合もあります。このため「どの臓器の感染症を疑っているのか?」によって菌を推定します。

例えば皮膚軟部組織感染症で血液培養からGPC chainが検出された場合の原因菌はまず連鎖球菌(Streptococcus)であり、腸球菌(Enterococcus)の可能性は極めて低いです。逆に尿路感染症で血液培養からGPC chainが検出された場合は、腸球菌(Enterococcus)の可能性が高く、逆に連鎖球菌(Streptococcus)の可能性は極めて低いと判断します。このように臓器ごとに起こしやすい菌から推定することも重要です。しかし例えば感染性心内膜炎のように、連鎖球菌、腸球菌どちらもありえて菌を絞るのが難しい場合もあります。

連鎖球菌を疑う場合は、ほぼ全てペニシリンGに感受性があり第1選択なのでいきなりペニシリンGから治療を開始しても問題ありません(アンピシリンでもOK)。私は今まで連鎖球菌でペニシリンG耐性の経験はありません・・・。

腸球菌を疑う場合は、ペニシリンGは全て自然耐性を基本的には取られています。E.faecalisであればアンピシリンで感受性は問題なく第1選択ですが、E.faeciumはアンピシリン耐性なのでバンコマイシンが第1選択になります。実際にはE.faecalisが原因のことが圧倒的に多いので、状態が安定しておりフォローが十分に出来る状態であればアンピシリンから開始する場合もあります。しかし、E.faeciumカバーを外せない状況の場合はバンコマイシンから治療を開始するべきです。ここは各臨床状況によっての判断となります。

GPC chainは溶血性など分類も少しややこしいのでまとめを載せます。