著者:ハンス・ロスリング (Hans Rosling)さん 医師・公衆衛生学者
一言紹介: 統計データを分かりやすく示して、 僕たちが当たり前だと思っている世界の状況(貧困や人口の問題など)がいかに事実と異なっているかを説明し、世界を正しく知るための道しるべを示している。
対象:全ての人
おすすめ度:★★★★★ 最も衝撃を受けた本のうちの一つです
難易度:★☆☆☆☆ 統計の予備知識は全く必要ありません
内容紹介
世界は「貧しい国」と「豊かな国」の2つに分けられると僕たちは考えている。これは昔学校の社会の授業でそのようなイメージを刷り込まれた影響かもしれないし、物事を二項対立で考えると分かりやすいため自然とそのように考えているのかもしれない。このような我々が普段あたりまえと考えていることに筆者は統計結果を用いてメスを入れる。
世界は「貧しい国」と「豊かな国」の2つに分断されている訳ではなく、実際には所得レベルで分けると4つのレベルに分類され、これらは分断されておらず連続していることが分かる。そして世界の多くの国が中間層に位置しているのだ。
筆者は世界中の政治家や会社のトップ、大学教授、優秀な学生などを相手に世界のことを質問したが、みな世界を同じように勘違いしていることが分かった。 なぜぼくたちは事実をきちんと認識することができていないのだろう。筆者はその原因は人間の本能にあるとし、物事を分かりやすくするため2項対立を求める「分断本能」、「単純化本能」などを解説する。筆者は先の「貧しい国」と「豊かな国」の話だけでなく、高齢化問題や環境問題、教育問題、人工問題などに統計データのメスを入れ、 「犯罪は増え続けているのか?」、「人口はどんどん増え続けてしまうのか?」といった僕らの誤解を痛快に解いていく。
世界は日々変化している。世界を正しく認識することは、国際的な活動をする官僚だけでなく、海外で事業をどのように展開するか考えるビジネスパーソン、ボランティア活動など様々な場面で極めて重要だ。
特にインターネット、SNSなどで情報過多の現代で役に立つ内容だと思う。メディアの情報は我々の不安や恐怖、焦りをあおることで正しい判断のさまたげになることが多い。 本書は不必要に焦ったり、恐れることなく現実を正しいデータに基づいて考える姿勢の重要性を教えてくれる。減り続けている16の悪いこと、増え続けている16の良いことという表を載せ、これを一目見るだけでも世界を正しく見て、不必要に恐怖を感じず、良い意味で希望をもって世界を見ることが出来ると思う。
筆者の鋭くも明解でユーモアにあふれた文章により、これらの一見難しい話がすっと頭に入ってくる。 本書を読み終えた後は急に見通しが良くなった感じがあり清々しい気分になった。私は筆者がTEDカンファレンスに出演している動画を何度も観たことがあり、その生き生きとした声や身振り手振りを知っているので、本書もあたかも筆者本人が目の前で語りかけてくるような臨場感を持って読むことができた。