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軽症~中等症の急性期脳梗塞におけるDAPT ”ATAMIS” trial

脳梗塞のDAPT領域でまた重要な論文が出ました。脳梗塞とDAPTに関してはこちらにまとめがありますのでご参照ください。

“ATAMIS” trial JAMA Neurol. 2024 Mar 11. doi: 10.1001/jamaneurol.2024.0146. PMID: 38466274.

背景:非心原性脳梗塞において高リスクTIAまた軽症脳梗塞例においてDAPTの有用性は複数のRCTより確立している
軽症~中等症の脳梗塞症例においての検討

Design: open-label, blinded endpoint, RCT modified ITT

P:発症48時間以内のNIHSS=4~10点の急性期脳梗塞
exclusion(重要なもの):再灌流療法実施(rt-PA, 血管内治療)
*患者背景:3000人(中国)、男性64.6%、介入発症後19時間後、NIHSS median=5点、病型(不明61%、ラクナ30%、アテローム7%、心原性0.1%)

I:DAPT(クロピドグレル+アスピリン)14日併用→SAPT(アスピリン)
*クロピドグレル300mg loading後75mg維持料

C:SAPT(アスピリン)

Outcome
Primary outcome:7日目のEND
(early neurological deterioration *NIHSS≧2点以上のベースラインからの増悪と定義) 4.8% vs 6.7% Risk difference -1.9% 95% CI, −3.6 to −0.2; P = .03
Secondary outcome
①90日後神経学的機能予後良好(mRS=0-1) 76.9% vs 76.4% 有意差なし
②14日後NIHSS変化 -0.56 vs -0.51 有意差なし
③90日以内の新規脳卒中発症 0.8% vs 1.0% 有意差なし
Safety
①頭蓋内出血 0.1% vs 0.1% 有意差なし
②出血イベント 0.7% vs 0.7%

考察(ピックアップ)
①90日後神経学的機能予後が改善していないのは計症例が多いことを反映している可能性があり過去のTIAまたは非心原性脳梗塞NIHSS<4点のDAPTを検討したPOINT, CHANCE trialも同様である(機能予後改善は示せていない)
②出血合併症が増加していないのは過去の研究と同様である

Limitation(ピックアップ)①designがopen-label、②NIHSSでの軽症例が多い、③再灌流療法実施は除外されている、④DAPT投与期間は14日間

結論

発症48時間以内(再灌流療法非実施)のNIHSS=4-10点の急性期脳梗塞症例において短期間DAPT(クロピドグレル+アスピリン)はSAPT(アスピリン)に比してearly neurological deteriorationを有意に減少させ、出血合併症は増加しない

管理人の感想

・元々NIHSS4点未満しかDAPTにしないというDrもいるなか、私は4点以上もDAPTで管理していたため(Studyがないという意味でのEvidenceがない)この研究結果はとても気になっていた。
・これまでのDAPTのstudyは患者を非心原性に限定、またprimary outcomeは90日後の脳卒中再発としていることが多かったが今回のstudyはENDをprimary outcomeに置いている点が面白い点。
・実臨床でも重要なのは結局発症早期のENDを防げるのか?というところ。ただ今回は病型のundeterminedが最も多く60%と多すぎる印象であり、本当に知りたいアテローム血栓性やBADなどは少数であることが推察される(Subgroup解析ではNが少なすぎる)。
・確かに結局は軽症例が多くなってしまっていることは注意が必要であり、subgroup解析ではNIHSSを7点未満と7点以上に分類して、7点以上の方で有意にDAPT群が良好な結果であった点は着目。
・Subgroup解析では発症<24時間の方が有意にDAPT群が良好な結果であり、やはり早ければ早いほど良いのだろう。ここは過去のRCTも<24時間に限定しているものもあれば、48時間としているものもある。
・DAPT投与期間が14日と短く、CHANCEは21日、POINTは90日であるのと比べると短い。
・最近ほとんどの脳梗塞の大規模Studyが中国からのものである・・・。