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脳梗塞とDAPT

1:要約

脳梗塞領域で前向き臨床試験によりDAPTの有用性が確立しているのは、下記の状況です。これらの患者ではDAPTを積極的に考慮します。

注意点を挙げます。

発症から24時間以内の患者での臨床試験の結果であり、時間が経過してしまったTIA、非心原性脳梗塞患者でDAPTが脳卒中再発を抑制するかどうかは不明
クロピドグレルはloadingする(臨床試験では全てloadingあり、300mg or 600mg)
・クロピドグレル単剤との比較してDAPTの短期使用が脳卒中再発を抑制するかどうかは不明(あくまでもアスピリン単剤と比較しての話)
■軽症TIA(ABCD2≦3点以下)や中等症以上の脳卒中(NIHSS≧4点)の患者においてDAPTが脳卒中再発を抑制するかどうかは不明
DAPTの長期使用は出血合併症が増加するだけであり推奨されていない(これは過去の臨床試験から)*長期間のDAPT併用に関してはシロスタゾールとの併用で出血イベントを増加させず脳卒中発症を抑制した報告があります(日本からの報告!Lancet Neurol 2019; 18: 539)。

もちろんこれ以外の状況でも頸動脈狭窄が強い場合、BAD(branch atheromatous disease)、症状が不安定な場合などでDAPTを臨床的に使用する場合がありますが、ここではRCTできちんとエビデンスの確定している高リスクTIA、軽症非心原性脳梗塞に対してのDAPTの話にとどめます。

2:根拠

以下の”CAHNCE”、”POINT”が代表的な臨床試験なので解説します。

■”CHANCE”

対象患者は高リスクTIAと軽症非心原性脳卒中患者で、発症から24時間以内、中国で行われた大規模な無作為割り付け、二重盲検試験です。ここでは21日間限定でのDAPT(アスピリン+クロピドグレル)とSAPT(アスピリン単独)を比較しています。

Primary outcomeは90日での新規脳卒中としており、DAPT群がSAPT群と比較して約30%程度イベント発生を抑制しています。また出血合併症に関しても有意差はない結果でした。このstudyがDAPTを高リスクTIAと軽症非心原性脳梗塞へ投与する根拠の端緒となるstudyです。詳細は下記にまとめました。

■”POINT”

前述の”CHANCE”は中国人のみが対象でしたので、これが国際的に適応することが出来るかどうか?を検討したのが”POINT”になります。”CHANCE”と違う点としては多国籍、発症から12時間以内、そして一番重要な違いはDAPTの治療期間を90日としている点です(”CAHNCE”では21日間)。

Primary outcomeは90日での脳卒中を含む複合エンドポイントを採用しており、DAPT群がSAPT群と比較して有意にイベントを抑制する結果でした。しかし、“CHANCE”と異なり出血イベントはDAPT群がSAPT群と比較して多い結果となりました。詳細を下図にまとめます。

3:臨床試験のまとめ

“CHANCE”と”POINT”という2つの大規模臨床試験のにより、高リスクTIAもしくは軽症非心原性脳梗塞患者においてDAPT(アスピリン+クロピドグレル)はSAPT(アスピリン単剤)よりも90日脳卒中再発を有意に抑制することが示されましたが、出血イベントは21日間のDAPT治療では有意差はありませんでしたが、90日間のDAPT治療ではDAPT群が有意に出血イベントが多い結果でした。これらを踏まえてBMJがsystematic review and meta-analysisをまとめているので読んでみます。

■脳卒中再発に関して

DAPT開始直後が最もSAPTとの差がつき、22日移行はほとんどグラフのカーブに両者で差がないことがわかります。発症直後のDAPT介入が効果的ですが、長期の使用は効果がはっきりしません。グラフの曲線が10日前後のところでぐぐっと曲がっているところがポイントです。

■出血合併症に関して

下図の通りDAPT使用期間が長くなればなるほど出血イベントは増加する傾向にあります。この点は脳卒中再発は10日~21日のところでグラフのカーブが急になっていることと対照的です。

これらからやはり最も脳卒中再発抑制に効果がある発症早期にDAPTを使い、長期投与だと出血合併症が増加することを考慮して短期の使用にとどめるのが望ましいと考えます。

参考文献
・BMJ 2018;363:k5130 BMJはこのような目で楽しい記事を書いてくださるので好きです。