脳血管障害後に生じる発作(seizure)は発症7日を境に、7日以内を急性症候性発作(early seizureとも表現する)、7日以降を非誘発性発作(late seizureとも表現する)と分類します。脳血管障害とてんかんに関してはこちらのまとめをご参照ください。
今回紹介するこちらの論文では脳血管障害後の急性症候性発作(acute symptomatic seizure)を重積例と非重積例に分けて検討することで、予後やてんかん発症のリスクを検討しています。
“Association of Mortality and Risk of Epilepsy With Type of Acute Symptomatic Seizure After Ischemic Stroke and an Updated Prognostic Model.” JAMA Neurol. 2023 Jun 1;80(6):605-613. PMID: 37036702
・背景知識:元々脳梗塞でのacute symptomatic seizure全体は1-4%, 重積は全体の0.1-0.3%と報告
・4522例の脳梗塞患者での急性症候性発作を検討
・急性症候性発作:5%
内訳:重積 0.2%, 非重積(short seizureとここでは表現) 4.0%, 不明 0.8%
short acute symptomatic seizureの内訳:FAS 1.3%, FIAS 0.8%, FBTCS 1.9%
・結果①:死亡 adjusted HR
short seizure 3.0(1.8-4.8) P<0.001
status epilepticus 12.7(3.0-52.7) P<0.001
・結果②:非誘発性発作の発症
status epilepticus 4.3(1.3-13.9) P=0.02
*その他の項目はてんかん発症のリスク因子に該当しない結果であった
まとめ
①脳梗塞後の急性症候性発作を重積と非重積に分けて検討すると、重積例が死亡、てんかん発症のリスクが高い(非重積例または発作非発症例と比較して)
②上記を踏まえたSeLECT 2.0がリスク評価に有用である可能性がある
SeLECT 2.0の項目
項目 | SeLECT | SeLECT 2.0 | |
NIHSS 4-10 | 1 | 1 | |
NIHSS≧11 | 2 | 2 | |
病型アテローム血栓性 | 1 | 1 | |
皮質を含む | 2 | 2 | |
MCA灌流領域 | 1 | 1 | |
急性症候性発作 | Short | 3 | 3 |
SE | 7 | ||
計 | 9 | 13 |
*管理人注:急性症候性発作の重積と非重積で点数を分けていることがポイントで、重積例は7点と非常に高い傾斜が付いている。
SeLECT2.0の点数とてんかん発症リスク(1年後と5年後)
非誘発性発作発症(てんかん) | ||
SeLECT 2.0(点) | 1年後 (%) | 5年後 (%) |
0 | 0.6 | 2 |
1 | 1 | 3 |
2 | 2 | 5 |
3 | 2 | 8 |
4 | 4 | 12 |
5 | 6 | 18 |
6 | 9 | 27 |
7 | 14 | 39 |
8 | 22 | 55 |
9 | 32 | 72 |
10 | 46 | 86 |
11 | 62 | 96 |
12 | 79 | 99 |
13 | 91 | 100 |
Limitation:Seizureの診断が臨床診断で脳波ではない(NCSEはunderestimated)・重積例はASM治療があるためその治療が非誘発性発作へ影響を与えた可能性はある・SeLECT2.0はexternal validationを受けていない
注意:本研究の結果だけをもって急性症候性発作の重積例では予防的にASMを高リスク群で導入すればよいという結論にはならない(ここは別で検証が必要である)