注目キーワード

細菌性髄膜炎の合併症

細菌性髄膜炎はとにかくERでいかに疑い早期治療介入するかが最も重要です。しかし、その後入院管理がただ漫然と抗菌薬投与をしていれば良い訳ではありません。意識状態や発熱の改善に乏しい/悪い場合や、再増悪する場合は細菌性髄膜炎の合併症を考慮する必要があります(もちろん診断が正しいか?起炎菌に対しての抗菌薬選択は適切か?という点もあります)。合併症は頭文字をとって“HACTIVE”と呼ばれます。最も重要な画像評価では単純CTでは分からず、単純MRI検査を行います(髄膜炎の診断自体に画像が寄与することは少ないが、合併症評価の上では重要)。その他脳波が必要となる場合があります。

Hydrocephalus 水頭症

・細菌性髄膜炎では蛋白値が高値になることでくも膜顆粒での髄液吸収障害が生じ、交通性水頭症を呈することがあり最も多い合併症です。実際にシャント術が必要になるまで重度になる頻度は高くないですが(多くは軽度の水頭症で一過性)、外科的介入(シャント術)が必要になりうる病態として注意が必要です。

Abscess 脳膿瘍

・脳膿瘍も注意が必要な病態で、この場合は①嫌気性菌カバー目的のメトロニダゾール追加+②抗菌薬治療期間の延長(通常は最低でも6-8週間)が必要です。
①抗菌薬治療への反応性が悪い場合、②神経学的巣症状が目立つ場合、③Seizureを認める場合などは一度脳膿瘍の可能性も考慮し画像検査をすべきと思います。

Convulsion けいれん

・ここではconvulsionとしていますが、Seizureのことです(急性症候性発作 acute symptomatic seizure)。これに関してはこちらに記載したのでご参照ください。特に意識障害が再度悪化する場合はNCSEの可能性も考慮が必要です。
・脳波検査、また抗発作薬の導入が必要になる場合があります。

Cranial nerve 脳神経障害

・これは純粋に後遺症という意味です(全体の10-20%に認める)。Ⅷ(内耳神経)の障害が最も多く(30%)、感音性難聴を生じ後遺症として重要です(個人的には必ずオージオメトリーで評価するようにしています)。その他Ⅵ(外転神経)障害、Ⅲ(動眼神経障害)もあり(それ以外の脳神経障害は頻度低い)、いずれも両側性の脳神経障害である点が重要です。

Thrombosis 脳静脈血栓症

・①髄膜炎による影響、または②中耳炎や副鼻腔炎の重度の病態があるとその周囲に炎症による血栓症を呈する場合があります。脳静脈血栓症に関してはこちらをご参照ください。

Infarction 脳梗塞

・脳血管周囲の髄腔に炎症があることで血管攣縮を生じて脳梗塞をきたす場合があります。

Ventriculitis 脳室炎

・脳室周囲の上衣細胞での炎症は細菌性髄膜炎では病理的にありますが(脈絡叢を経由して細菌が血液から侵入する経路からも)、その程度が強いと画像上脳室に沿った造影増強効果や脳室内にdebris(側脳室後角にfluid-levelを認める場合がありDWI, FLAIR像が重要)を認めることがあります。
・(文献上はStaphylococcus, Enterobacterが2大菌種とされています。)
・脳室炎を伴う場合に抗菌薬治療期間を通常期間のままでよいか?それとも延長するべきかに関しては結論がありません。画像をフォローアップしてdebirsの消失を確認した方が良いかもわかりません。

Extra-axial collection 硬膜下/外膿瘍

・硬膜下の無菌性の液体貯留(effusion)を炎症または静脈からのleak?により生じる場合があります。effusionのうち15%が膿瘍へ移行するとされています。この場合画像評価として最も有用なのはMRIのDWIです。硬膜下/外膿瘍の場合は治療期間延長±外科的ドレナージが必要になります。

参考文献
Castillo M. Imaging of meningitis. Semin Roentgenol. 2004 Oct;39(4):458-64. doi: 10.1016/j.ro.2004.06.009. PMID: 15526529.