髄液のmultiplex-PCR(Filmarray®)が保険収載で実施可能となり、中枢神経感染症診療は非常にやりやすくなりました。ウイルス性髄膜炎は今まで「おそらくウイルス性」にとどまっていたものも起因ウイルスが同定されることでウイルス性髄膜炎の臨床像をより把握しやすくなり個人的にはとても勉強になっています。以下に簡単にまとめます。
検出可能な病原体
・全14病原体の同定が可能です。ほとんどの主要微生物をカバーしています。
・結核菌やGNRではKlebsiella pneumoniaeなど含まれていない重要な微生物もある点に注意が必要です。
細菌 | 真菌 | ウイルス |
Escherichia coli K1 | Cryptococcus neoformans/gattii | HSV-1,2 *ウイルス量が>103を検出するため,real-time PCRより感度低い点に注意 |
Haemophilus influenzae | Enterovirus | |
Listeria monocytogenes | VZV | |
Neisseria meningitidis | HHV-6 | |
Streptococcus agalactiae | HPeV | |
Streptococcus pneumoniae | CMV |
利点
①迅速に起炎菌推定→治療薬の早期de-escalationが可能
②感度 90%, 特異度 97% Clin Microbiol Infect 2020;26:281
③抗菌薬暴露後も検出可能
注意点
①結核菌,Klebsiella pneumoniaeなど一部の病原体は含まれない(前述の通り)
②抗菌薬感受性は分からない(いずれにせよ培養検査は必須)
③HSVは外注real-time PCRよりも感度が低い(Filmarray®は103から検出⇔real-time PCTは102から検出)
④偽陽性(11.4%) S.pneumoniae>S.agalactiae, 偽陰性(4%) HSV-1,2, Entero virus, Cryptococcus neoformans/gattii Clin Microbiol Infect 2020;26:281