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呼吸不全と姿勢

呼吸不全の患者さんでは「どのような姿勢をしているか?(=楽になるか?)」が原因疾患を探る上で身体所見上とても重要です。いくつかまとめようと思います。病態としては静脈還流量,呼吸筋,V/Q mismatchと姿勢の対応関係により生じるものです。

orthopnea(起坐呼吸)

呈する原因:心不全,COPD,神経筋疾患による呼吸不全

前かがみの場合:COPD
・病態:呼吸補助筋が垂直になることで動員しやすくなるため
・前かがみで肘を大腿につけた状態が持続すると同部位に圧痕を認めるDahl signも知られている(個人的には見たことは無い)

後ろ向きにもたれかかる場合:心不全
・病態:臥位では静脈還流量が増大するため

神経筋疾患による呼吸不全こちらを参照
・病態:臥位では腹腔内圧が横隔膜にかかることで横隔膜を押し下げる労力が増大するが、座位であれば重力によって腹腔内圧が横隔膜にかかりづらくなることで呼吸をしやすくなる

bendopnea

前屈時(靴ひもを結ぶように前かがみになる)30秒以内に呼吸困難が出現する状態
・病態:前かがみになり腹部が圧迫されると静脈還流が増加し(容量血管の静脈が心房へ流れる)、その結果前負荷が増大して呼吸困難が出現するという機序です

*元となった論文:JACC Heart Fail. 2014 Feb;2(1):24-31. PMID: 24622115.
・心不全患者の28%(29/102)に認め,前かがみになってから呼吸困難までの時間は中央値8秒
・bendopneaがある患者はない患者と比べて右房圧とPCWPが有意に高く,CI(cardiac index)は変化なし

platypnea(扁平呼吸)

・病態:座位では肺底部の血流が増加します.同部位にV/Q mismatch(例えばシャント)が多い場合は座位になると酸素化が悪化し,臥位で改善するという現象が生じます.肝肺症候群のところでplatypneaに関して解説している記事(こちら)がありますのでご参照ください。
*全く同じ病態で左右の肺で良い肺を下側に,悪い肺を上側に側臥位になる”trepopnea”もあります.