単癌患者の約13%がseizureを経験するとされています。腫瘍関連ではそもそも原発性脳腫瘍、脳転移、その他治療の副作用(放射線治療や手術)、傍腫瘍神経症候群、合併する感染症や血管障害などによりseizureが生じる場合があります。特にseizureが脳腫瘍を発見する契機になる場合もしばしばあるため注意が必要です。高齢者てんかんの3大原因のうちの1つでもあるので(①脳血管障害、②アルツハイマー型認知症、③脳腫瘍)重要なテーマです(高齢者てんかんはこちら)。忘備録的な非常に簡単なまとめでこれから少しずつ充実させていきます。
頻度・疫学
・原発性脳腫瘍の場合:DNETs(dysembryoplastic neuroepithelial tumors)が最も併発率高い 70-80%, low-grade glioma 60-75%, high-grade glioma 25-60%, meningioma 20-50%
・脳転移の場合:20-35%
・腫瘍の部位:前頭葉, 側頭葉, 頭頂葉の皮質がリスク高い
・腫瘍の大きさ・個数:大きく数が多い方がリスク高い
*参考:meningiomaとseizureに関して
文献:J Neurosurg. 2016 Jun;124(6):1552-61. doi: 10.3171/2015.4.JNS142742. Epub 2015 Dec 4. PMID: 26636386
・meningiomaとseizureに関するsystematic review article(前向き研究なし、後ろ向き研究観察研究のまとめ)
・術前発作 29.2%(テント上meningioma)
・リスク因子:男性 OR 1.74, (95% CI 1.30–2.34), 頭痛なしOR 1.77, (95% CI 1.04–3.25), 腫瘍周囲の浮腫 OR 7.48, (95% CI 6.13–9.47), 頭蓋底以外の部位(つまり円蓋部や傍矢状部)OR 1.77, (95% CI 1.04–3.25).
*腫瘍の大きさ、病理Grade、神経学的巣症状の有無は有意差なし
・手術によりseizure free達成 69.3%
治療
手術に関して
・原発性脳腫瘍は手術→65-85%でseizure freeになる
→しかし約1/3の症例でてんかん焦点が腫瘍内に位置していない場合があり、このような場合は手術だけでは効果がないこともある
抗てんかん薬に関して
・脳腫瘍でseizureの既往がない患者へのルーチンの予防的抗てんかん薬投与は推奨しない(AAN 2000年ガイドライン)
*予防的抗てんかん薬によるseizure freeのrelative risk reduction=26%
*ただここでの注意点はここで使用されている抗てんかん薬には新規抗てんかん薬(レベチラセタムやラモトリギンなど)は含まれていない点(フェニトイン、フェノバルビタール、バルプロ酸など)です。
“In patients with newly diagnosed brain tumors, anticonvulsant medications are not effective in preventing first seizures. Because of their lack of efficacy and their potential side effects, prophylactic anticonvulsants should not be used routinely in patients with newly diagnosed brain tumors (standard).” という記載の通り副作用との天秤で検討していますが、新規抗てんかん薬はこの点が軽いためそのまま適応は出来ないかもしれません。新規抗てんかん薬でどうか?というClinical Questionは残ります。
・初回非誘発性発作後は再発リスクが高くてんかんの診断基準に該当するため、抗てんかん薬を導入する
・特にどの抗てんかん薬を使用するべきかに関しては定まっていない
・酵素誘導系の抗てんかん薬は抗腫瘍薬と相互作用を持つため注意が必要
緩和的な対応をどうするべきか?
ここは決まりがないところです。特に終末期医療においてseizureは本人、家族にとってもとてもつらいものがあるためしっかりとコントロールしたいところです。ただ実際には抗てんかん薬の内服が難しく、抗てんかん薬は貼付剤も存在しないため悩むケースが多いと思います。
皮下注射可能な場合:ミダゾラム皮下注射で鎮静と合わせてコントロール
皮下注射をしない場合:バルプロ酸座薬またはフェノバルビタール座薬
私はこのように対応していますが、これが果たして正しいのか全く自信がありません。是非皆様方の意見を教えてください。
参考文献
Chen DY, Chen CC, Crawford JR, Wang SG. Tumor-related epilepsy: epidemiology, pathogenesis and management. J Neurooncol. 2018 Aug;139(1):13-21. doi: 10.1007/s11060-018-2862-0. Epub 2018 May 24. PMID: 29797181.
Glantz MJ, Cole BF, Forsyth PA, Recht LD, Wen PY, Chamberlain MC, Grossman SA, Cairncross JG. Practice parameter: anticonvulsant prophylaxis in patients with newly diagnosed brain tumors. Report of the Quality Standards Subcommittee of the American Academy of Neurology. Neurology. 2000 May 23;54(10):1886-93. doi: 10.1212/wnl.54.10.1886. PMID: 10822423.